”玲瓏”管理人のつぶやき

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"私には夢がある”講演会:質問編 後半

2007年03月01日 | 羽生善治
質問17 講演の中でバサロスタートの引用がありましたが・・・

水泳のバサロスタートは水中で潜っているため抵抗が少なく水面に上がったときはより前に進んでいます。たくさんの勉強や研究をしているときは成果がすぐに表れませんがその量が質に転換したときもう一段上の実力となった表面化すると思うんです。

質問18 谷川さんとの対局は毎回違うものになるとお聞きしましたが・・・

お互いに過去の戦型を覚えていてお互いに変化しようと思って対局します。対局が終わったあと将棋では観想戦をするのがならわしです。野球やサッカーでは勝者がインタビューに応えることはありますが敗者も一緒にというのは不思議かもしれません。この観想戦は一局30分から1時間行われ、主に個人のスキルアップのために行われます。

質問19 羽生さんの勉強の仕方について教えてください

ええと、決まっていません(^^;詰将棋を解いたり、他の人の棋譜を並べてみたり、思いついた手の研究をしたりしています。特に勉強の時間に制約をつけないのが特色でしょうか?例えば8時間と最初に決めていると自然とペース配分してしまうからです。気分が乗ったとき深く考えるようにしています。棋士仲間で研究会といういのも行ったりしますが気の合ったもの同士違う方向に行ってしまうこともしばしばです。真剣に考えたいときは一人で行うことが多いです。

質問20 将棋以外のものは将棋の”こやし”になりますか?

スポーツ観戦はよくします。中でもテニスは将棋によく似ていると思うんです。どこが似ているかと言えば、総合的に点を取っていても勝てない、例えば7-6、1-6、1-6だとすると負けてしまう点です。どう見てもそれはラインアウトだろうと思っても審判へクレームを続ける選手もいます。ああ、流れが悪いんだな、と解釈して見たりします。

質問21 中終盤の手渡しは?

実は自分の手番で戦局が決まるときほど苦しいと思うんです。相手が手番をもっているときの方が自分が何もできない分楽だと思うんです。プロ棋士はよくやるのですが、可能性を残しつつ相手に手を渡すことは高等戦術として重要なんです。ただこれは気持ちにゆとりがなければなかなかできません。しかし自分ひとりの力では何もかも全部できないのは将棋でも同じなのです。

質問22 意思決定で必要なことは何でしょうか?現佐藤棋聖との竜王戦で昔、最初の一手に数分使ったらしいのですが・・・

最初の一手は7六歩か2六歩くらいしかなく、あのときはただ気持ちの整理をしていただけだと思います。

質問23 プロ生活20年で成長したことは何ですか?

こうして人前で話しができるようになったことでしょうか?(笑)人前で話しをするのはできることなら避けたいと今でも思ったりします。どうして講演の話が来るようになったのか自分でもよくわかりません(笑)

質問24 落ちていたお金を拾わず後で後悔しますか?

後悔はします。ただ、そうなってしまったのは仕方がないと思うと思います。余談ですが、大阪で昔財布を落としたことがありました。交番に届出たのですが、30分後拾って届けてくれた方がいて、もう返ってこないだろうと思っていただけに、凄く嬉しかったです。

質問25 今日の講演で1番のトピックスは何ですか?

自分自身を信じられるか?でしょうか。自分は自分のネガティブなところを誰よりもよく知っているので、迷いを生じることになります。ただ、他の人と同じと思えば怖くありません。自信をもつこと、そして心の安定をもつことは重要だと思うんです。

質問26 オリジナルの戦法について教えてください。

歴史のある将棋界でも何年かに一回の割合で出てきています。限界までやって出てくるものだと思います。

質問27 二児の父親として子供の教育はどう考えられていますか?

おかしなことをやっても怒りすぎないのは重要だと思うんです。否定せず様子を見るようにしています。

質問28 今日の出会いで聴講者に期待するのは何ですか?

大それた期待というのはありません。ただ、これをきっかけに、何かを考えてもらえれば嬉しいです。”少し”を積み重ねると大きな”たくさん”になります。コツコツやること、継続することは、ものごとをうまくなろうとすると重要だと思うんです。

マスメディアについて述べたいと思います。対象が大きくなればなるほど、多数の人に理解してもらえるようにと、情報が薄くなっていると思うんです。このような講演の場では、情報の密度は大きいと思うんです。

質問29 羽生さんは何故勝てるのですか?何に起因していると思われますか?

自分は、戦型にあまりこだわらない、オールラウンドプレイヤーであるというのは大きいと思います。また、違う手が出てきて対応策を打ち出していくことは、自分のスタイルに合っていると思っています。少しだけでも半歩前にいればいいと思うんです。

質問30 20年前何を見ていましたか?

中学生のときは対局に無我夢中だったので何もなかったと思います。今となっても見つけられていません。目の前の対局の中でひとつひとつ新たな発見をすることが目標であったりします。

質問31 モチベーションを保つにはどうしたらよいでしょうか?

無理しないことだと思います。自分のペースを崩さないことが重要だと思うんです。

ご清聴ありがとうございました。

◆番外編:講演会終了後管理人自ら羽生先生にアタック(^^)

羽生先生、最近研究会はいかがですか?

メンバーは、ええ、森下さん、木村さん、松尾さんなんですが、森下さんが理事になってご多忙なので最近は休止状態ですね。落ち着いたら再開するとは思いますがいつになることやら…(^^;

 なるほど、研究会メンバーは2002年前後から変わっていないんだ、と確認させていただきました。

追伸)
当日の様子がUPされました。
”私には夢がある講演”
主催者の方にお聞きしたところ、本講演はDVD化されないこと、残念ですね。

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2 コメント

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すごいです (いっこう)
2007-03-01 13:30:00
当たり前のことを、当たり前にやっていくことが大事だと読んでつくづく思いました。自分の分かっている範囲を越えず、淡々と話されるだけで、これだけの迫力が出てくるのはすごいことです。
たいがーさんのまとめ方も見事だと思います。
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コメントありがとうございます (たいがー)
2007-03-01 19:03:28
羽生さんの講演でいつも感じるのは、”自然体”、ということでしょうか?無理な目標を立てず、ひとつひとつ自分のできる範囲のところでベストをつくす、イチロー選手や、元横綱千代の富士も、目の前の一打席、目の前の一番を大事にされ、それでいて大記録を打ちたてたことと合い通じるのを感じます。

いっこうさんの最後の言葉は素直に嬉しいです。眠い目をこすりながら書き込んだ甲斐がありました。ありがとうございます。
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