全英連参加者のブログ

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六千人の命のビザ

2015-12-12 04:00:00 | 全英連参加者 2015
映画『杉原千畝 スギハラチウネ』ポスター  ...を原作、原案としたTVドラマは僕の知る限り2本*制作されている。長編映画化は今回が初めてである。

 12月の映画鑑賞は『杉原千畝 スギハラチウネ』を1本目に選んだ。

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 本作は、杉原千畝を唐沢寿明、幸子夫人を小雪が演じている。杉原を一外交官としてだけではなく、語学力堪能な情報収集官(インテリジェンス・オフィサー)としてのありようも描く作品と事前に喧伝されていた。

 有名なリトアニアの在カウナス日本領事館領事代理としてのビザ発給が、映画のハイライトでもクライマックスでもない。もちろんその行為はていねいに描かれている。彼の人生の中で1、2ヵ月の間の出来事が、なぜ起きたのか。カウナス赴任までの杉原の人生や仕事。領事代理としての生活の様子や、ビザの発給に至るまでの苦悩がわかる。だが、それで終わりではない。ソ連のリトアニア併合、カウナス退去後の外交官としての働き、敗戦に至るまでの日本の姿を同じくらい時間をかけ、ていねいに描く作品である。
 本作は幸子夫人の著書、「六千人の命のビザ」を読んでもわからないことがたくさん出てくる作品であり、ともすれば杉原千畝を単純に正義のヒーロー視する見方を否定する作品である。もちろんそのことが杉原千畝と彼の行いを卑しめることはない。全くの逆である。ひとりの人間が必死に生きた記録。自らなすべきと信じたことを、苦悩しながら実行した記録のように思えた。

 映画を見てから気がついた。この映画「杉原千畝」がタイトルだ。「六千人の命のビザ」ではない。

 ☆4コかな。

 次の作品は...

 (文中敬称略。)

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 2006-04-06、「Sempo (Chiune) Sugihara

 *『命のビザ』
 1992年12月18日、フジテレビ、演:加藤剛
 『日本のシンドラー杉原千畝物語 六千人の命のビザ』
 2005年10月11日、読売テレビ、演:反町隆史

 なお、ショートフィルムとして「Visas and Virtue」(1997年)というアメリカ作品がある。

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