...とは、新しい学校の「かたち」(校種)である。
政府は3月17日閣議で、『子どもの発達に応じた教育の充実に向けて小学校から中学校までの9年間の義務教育を一貫して行う、「義務教育学校」を設置しやすくするための学校教育法などの改正案を決定』したと、各報道機関(テレビ、新聞)が翌日報じていた。「設置する」ではなく「しやすくする」ためである。
要約すると以下のようになる。
①小学校+中学校の9年間の義務教育を一貫して行う。
②平成28年度から設置できる。
③公立の場合、教職員給与、校舎新増設等の費用は国が一部負担。
(現在の公立小学校、中学校と同様である。)
義務教育学校の教員は原則として、小学校教員、中学校教員の両方を免許状を持たなければならないとされた。これには当然、「教育職員免許法(教免法)」の改正も必要となる。文部科学省ウェブサイトで、国会提出法案をさがした。
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「学校教育法等の一部を改正する法律案」
法律案(要綱)を読んでみた。
第一 学校教育法の一部改正
一 義務教育学校
1 義務教育学校の創設
新たな学校の種類として、義務教育学校を設けること。(第一条関係)
・・・第一条、書き換えである。
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第五 教育職員免許法の一部改正
一 義務教育学校の教員については、小学校の教員の免許状及び中学校の教員の免許状を有する者でなければならないものとすること。(第三条関係)
二 小学校の教諭の免許状又は中学校の教諭の免許状を有する者は、当分の間、それぞれ義務教育学校の前期課程又は後期課程の主幹教諭、指導教諭、教諭又は講師となることができるものとすること。(附則第二十項関係)
・・・「当分の間」は必要だ。法律で決めても、養成が間に合わない。
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学校教育法第一章・第一条は、政府案通りに改正された場合、以下のようになる。
第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
、義務教育学校が現行法に追加される。
「義務教育学校」については、『第五章 中学校(第四十五条~第四十九条)』と『第六章 高等学校(第五十条~第六十二条)』の間に、
第五章の二 義務教育学校(第四十九条の二~第四十九条の八)
として、追加になる。
既存の法律を改正する場合、関連法規との調整が必要になる。「法律A第〇条」が「法律B第〇条」を引用することがある。今回の改正で、義務教育学校を第六章とすると、以降の条文番号が全部ずれてしまう。別の法律に「学校教育法第〇条」と書いてある場合、それらも全部全部変えることになる。それでは間違いも起こりうるし、能率が悪い。だから、上記のような書き方になる。
なお、今回の改正で関係する法律は、改正案新旧対照表によれば、学校教育法を含めて47もある。法律のどこかに「中学校」とあれば、それらを「中学校、義務教育学校」になおすことも、この改正案には書かれている。だから、「学校教育法等の一部を改正する法律案」なのだ。
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<おまけ>
上記第一条にはいわゆる専門学校がない。よく、高等専門学校と間違えられるが、ちがう。学校教育法の条文を下記に示しておこう。
第十一章 専修学校(第百二十四条―第百三十三条)
第百二十四条 第一条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次の各号に該当する組織的な教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く。)は、専修学校とする。
一
二
三
(一から三は、専修学校の条件が書かれている。省略する。)
第百二十六条 高等課程を置く専修学校は、高等専修学校と称することができる。
○2 専門課程を置く専修学校は、専門学校と称することができる。
専門課程とは、学校教育法第百二十五条3にある、「高等学校若しくはこれに準ずる学校若しくは中等教育学校を卒業した者又は文部科学大臣の定めるところによりこれに準ずる学力があると認められた者」が進学する課程のこと。
学校教育法にはこれ以外の学校として、各種学校が規定されている。以下の通りである。
第十二章 雑則
第百三十四条 第一条に掲げるもの以外のもので、学校教育に類する教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び第百二十四条に規定する専修学校の教育を行うものを除く。)は、各種学校とする。