全英連参加者のブログ

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幕が上がる

2015-03-14 04:00:00 | 全英連参加者 2015
映画サイトのスクリーンショットから作成。  製作発表時から、かなり注目していた作品である。先週金曜日、仕事帰りに見に出かけた。
 (左は映画サイトのスクリーンショットから)

 僕はいわゆるモノノフさんではない。地元テレ玉の放送で、コンサート映像を見たことはある。彼女たちが紅白歌合戦に出てくるような人気者であることは知っている。5人組のアイドル歌手・パフォーマンス集団。グループとしては、そのトップランナー(グループ)の一つという認識だと思う。

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 本作は平田オリザさん原作の小説を、ももクロ5人を主役にした学園青春群像劇である。高校演劇部を描く作品。見たいなあと思っていたものだ。

 映画が始まり、彼女たち(全員ではない)が登場する。「ああ、ももクロだ」と思ったのは最初だけで、あとは普通にものがたりが進んでいく。若干難点かなと思ったのは、ものがたりの進む速度。最近の映画にしては、ややのんびりペース。ていねいに描いているともいえるが、ちょっと間延びした印象がなくはない。
 部長の高橋さおり(百田夏菜子さん)と部員たちとの関わり、周りの大人(親、教師)とのつながり。さおり自身の成長への葛藤を、ていねいに、ものがたりとして紡ごうとしている。さおりが周囲のキャラクターたちとカチッとはまるまでに、時間がかかる、時間をかけているともいえる。

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 本作には「全国高等学校総合文化祭」(いばらき総文2014)の映像が、作品の一部分として使われている。
 学校のシーンを見て、あることに気がついた。この映画、高校の校舎をとてもうまく使っている。パンフレットを見ると、静岡県立富士宮北高校、同三島南高校がロケーション協力として出てくる。ビックリするくらいありふれた校舎内外の風景である。この二つのおかげで、「幕が上がる」前に「いい舞台ができた」感じがした。いい舞台ではキャラクターが生きる、動けると思う。
 そこにいる生徒役の役者さんたちも、いわゆるテレビの青春ドラマのように作り込んだ感じ(「そんな生徒はいないでしょ」な感じ)ではなく、高校の先生の目からみていそうだなあと思える雰囲気を出している。ももクロ以外の後輩役たちも同じ。何だかとても地味な感じ。誤解をされたくないのだが、「昭和」な感じがしなくもない。ももちろん演技で出しているのだろうから、たいしたものである。
 生徒たちの登下校の時の制服。生徒の持つカバン。部活中の学年カラーのジャージ、上履き。ややウェザリングが残念だが、県立高校の先生の目から見るとホントにどこにでもあるものなのだ。既視感とはやや違うが、見慣れたものばかり。偶然だが、女子の制服が以前の勤務校にそっくりだったせいでもあるが。
 ロケ先、セット、生徒役、小道具がそろった。その場所・環境で、ももクロの5人が特に浮かない。浮かないように非常に努力をしている。これはすごいことかもしれない。

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 後半、主役の5人の存在がカチッとはまる。そこからはストーリーが怒濤のごとく進んでいく。途中から、映画を見ているのではなく、何となく自分が仕事でかかわっているような錯覚を覚えた。奇妙な感覚である。
 何となく続編がありそうな終わり方だが、5人で作ることは無理だろう。制服を着ていい年齢は、そんなに長くは続かない。現実でも映画のような虚構の世界でも、限りがあるから尊い日々。そういうものがあると思う。

 脇を固めるのは、(おそらく)顧問ではないのに『学生演劇の女王』という経歴から、演劇部にかかわることになる美術教諭吉岡美佐子役・黒木華さんが相当いい感じである。ややネタバレになるが、彼女との出会いと別れが、演劇部をそのたびにパワーアップさせている。

 僕は本作は秀作だと思う。学園青春群像劇として、「ウオーターボーイズ」「スイングガールズ」の系譜に連なると、評価される可能性がある。映画好きがお金を払って見る価値がある作品である。

 しかし...ももクロが地味な公立高校の制服が似合うとは思わなかった。
 本作はエンタメ系雑誌、ウェブサイトの前評判が非常に高かった。どうなんだろうと思って出かけたけど、いい意味で裏切られた。春休みおすすめの1本といえる。

 かぎりなく☆4.0かな。

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 「幕が上がる」公式サイト

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