全英連参加者のブログ

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東京大学、秋入学に全面移行

2012-01-23 05:42:29 | 気になる 大学研究

 18日日経のトップだった。通勤途中、駅の売店で購入してしっかり読むことにした。
 それによれば、入学時期の見直しを検討していた東大(浜田純一学長)の懇談会が、『入学試験の時期は動かさず、学部入学を秋に移行』という中間報告をまとめたとのこと。17日判名。

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 日経のネットは、去年から、東大だけではなく大学の秋入学について何度か記事をあげている。去年10月に、秋入学の賛否を教育情報会社のライセンスアカデミーが調査したアンケート結果の分析を読んでみると、こんなデータになっている。263校が回答。(東大の秋入学移行の検討開始を受け、同社が8月上旬、東大以外の4年制大学576校に質問票を送付。45.7%にあたる263校が回答した。

 自校での秋入学への移行について
 「4月入学を廃止」が16.4%
 「4月入学と併存させる」が26.6%だった。
 ・2つを合計した肯定派は43%になる。

 「秋入学は不要」は39.5%。
 賛否を示さない「その他」は10.7%
 大学院や留学生だけに適用する限定導入を認める意見あり。
 ・併存がまず最初だろう。

 移行のメリットとデメリットについて(選択肢を示して調査・複数回答)
 メリット
 「留学生の増加」は49.8%
 「帰国子女が入学しやすい」は44.9%
 秋入学が主流の世界の大学と足並みをそろえることで留学生の派遣と受け入れがスムーズになり、国際化が進むと期待している。
 ・これはどうか。秋への移行のメリットではなくて、併存のメリットだろう。

 デメリット
 「ブランクが生じる」が46.0%で最多
 ラ社の担当者
 「高校卒業から大学入学までの約半年間に学生がトラブルや事故を起こした場合の責任を誰が取るのかなどを懸念している」と分析。
 ・これは、誰も責任を取らない。取れない。

 大学の卒業時期も秋になることが想定される。自由意見では「就職活動や国家試験の受験に影響する」との指摘があった。「教員の負担が増える」「小規模校は対応が難しい」との意見も。

 移行により生まれる約半年の猶予期間の活用法
 「入学に向けた学習」が62.7%
 「社会体験」が58.2%
 「ボランティア」が47.9%

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 東大は世界の大学ランキングで30位。アジアではトップのようだが、危機感がある。秋入学を実施し、(「世界の趨勢」にあわせることで)いっそうの国際化をめざす。そのこと自体は悪くない。しかし留学生の送り出し、受け入れにいいと言うことだが、少なくとも日本国内で東大に入るような生徒が、環境を整えたとして、そんなに留学していくかは疑問を感じる。仮に学生の出入りが盛んになったとして、全面的に秋にする意味がとの程度あるのかとも思うが、秋入学に一本化することで、大学自体を大きく変える意義はあるだろう。
 就職活動や国家試験の受験に影響が出ることを心配する向きもある。ただ、前者に関しては、理想として日本のエリートであるべき東大生が、就職活動でその他の私立有力大学と勝負にならないのでは、秋入学以前の問題であると思う。問題は資格の必要な職に現在の東大生がとの程度就いているのかということだろう。現在年1度の試験、例えば医師や司法試験のことを考えると、大学の学部卒業が前提だったり、法科大学院修了が条件だったりするものがある。これらの受験に影響がある。この部分は配慮というよりは、いくら東大でも単独で何とかできない。これをどうするか。

 ここまでは、20日(金)までに書いたこと。後追い記事を待つことにした。

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 21日朝、確認したところ、産経新聞にこんな記事が出ていた。(配信日は20日)
 秋入学へ、京大や早慶など公私11大学に呼びかけ 東大
 京都大など9国立大、早稲田、慶応の2私大の計11大学に、秋入学移行について話し合う協議体の設立を呼びかけている。20日判明。
 ・他大学と歩調を合わせ、5年後をめどに実施したい。
 協議体発足はこの4月の発足をめざす。

 東大が協議体への参加を呼びかけた大学だが、予想通りいわゆる旧帝大が多い。でも、それ以外もある。
 北海道大  東北大  筑波大  東工大  一橋大  名古屋大
 京都大  大阪大  九州大  早稲田大  慶応大

 東大は大学間の協議体のほかに、経済界と採用のあり方について議論する組織も4月に発足させる意向だ。
 浜田総長
 「社会の変化と大学の変化はセットだ。社会が整わなければ前に進まない」

 秋入学移行への最終報告は年度末にまとまるようだ。

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 秋入学に関することを、いくつかブログを読んでみた。中には『東大を出ておいて、日本の企業に勤めるなんてことを志向する人間なんているもんか。就職活動について心配なんかいらない。』というような、ややとんがった意見もあったが、なかなかことはそんなに単純ではない。
 20日までに書いたことともかぶるけど、就職に関しては法律・資格や免許が絡むものがある以上、東大総長の言い方とは反対で、『大学の変化は社会の変化とセット』なのだと思う。社会の中に大学はある。大学が変わりたくても社会から浮き上がるわけにはいかない。社会にもつきあってもらわないかぎり、変わることができないのも事実なのである。『社会が整わなければ前に進まない』も、『進むつもりがない』のか『進みたいのに進めなかったら、社会のせいだぞ』とうがった見方ができなくもない。いずれにしても、大学の存在する社会が変わろうとしないと、法律も変われないものだ。
 東大が声をかけている大学の中に、筑波大がある。現在の卒業生の中で学校の先生になる者がどれほどいるかわからないけど、もしも筑波大が秋入学と言うことになれば、学校にも影響がいずれでるのかもしれない。

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 日本の大学が秋入学だったことは、大学の教職課程・教育史で学んだ。だから、もしも東大が秋入学になっても、近代日本において史上初でないこともわかっていた。でも、この件に関しての知識はその程度である。
 東大の秋入学に関しては、19日付「よみうり寸評」にも取りあげられているが、こうまとめている。

 『明治前半の日本では大学はじめ小学校まで学年始期は9月が多かった。』
 『最初に学年始期を4月にしたのは1886年(明治19年)の高等師範学校(のちの東京教育大、筑波大)』
 ・・・これは知らなかった。
 『小学校は1892年(明治25年)』

 あらためて調べてみると、日本の中央政府の会計年度はずいぶんいろいろ変更があったようだ。

 4月入学としたのは、国や県の会計年度に合わせたため。そう記憶していた。でも、寸評氏によれば、全部が全部そうということではない。師範学校が9月入学から4月入学に変更したのは、陸軍の徴兵に先を越されるから。これは初めて聞いた。
 4月に学校年度が始まる。100年以上これがことがあたりまえになっている。サクラのシーズン=入学・卒業。それが日本の原風景にもなっている。理屈・理想に、メンタリティーが絡んでくると、話しが込み入ってくるのはどんな場合でも同じである。この後どのようにこの話しが進んでいくか、注視したいと思う。


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