この夏、三井誠著『人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」』とJ. リレスフォード著、『遺伝子で探る人類史』を読んだ。両方とも直接仕事に関係ない本だ。
まず結論。両方ともおもしろかった。
僕は人類史の中で、特にネアンデルタール人について興味がある。なぜ、現在僕たちの周りいないのか、彼らに言語を操る能力があったのか、なかったのかが興味の焦点だ。ネアンデルタール人と現生人類(クロマニヨン人)はずいぶん前に種としては別のものになり、両者は遺伝子の交換はできない(子どもが作れないor孫の代はない)とされているようだが、どうなのか。最新の研究に基づいた一般書を読みたいと思っていたので、アマゾンで見つけて、近所の書店で購入した。
上の写真は、ネアンデルタール人(成人女性)だが、眉のところの突起が現生人類とはちがう。でも、こんな人、いてもおかしくない。
右下の写真は同じくネアンデルタール人(女児)だが、こちらは本当にどこにでもいる顔だと思う。第2次性徴前の姿は、見分けがつかないかもしれない。
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『人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」』によれば、、、
ネアンデルタール人は大きな脳にもかかわらず、知能の発達は見劣りする。現在のような複雑な言語もまだ、話せなかったと考えられている。(p.125)
知能に勝るクロマニョン人が作った石器と同じくらい工夫を凝らした石器(石刃:せきじん)が、ネアンデルタール人の3万数千年前の化石とともに見つかっている。ネアンデルタール人も巧妙な石器を作っていたらしい。「ネアンデルタール人が、クロマニョン人に教えてもらったのか、まねをしたのか。」…少なくともネアンデルタール人とクロマニョン人が混血して現代にネアンデルタール人の遺伝子が残っている可能性は低いようだ。(p.127)
「遺伝情報の違いから考えると、ネアンデルタール人と現生人類は60万~40万年前に枝分かれしてから独自の道をそれぞれ歩んでおり、その後の遺伝的交流はなかった。」(p.128)
少なくとも現生人類の遺伝子情報にはっきりと痕跡を残せるような、大規模な両者の混血はない。現在わかっている範囲ではないと言うことなのかな。
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Wikipediaの関連ページを見ても、ほぼ同様のことが書いてあった。(このエントリの写真は、このページから引用した。)
どうも、言語能力については現生人類には、「劣る」もしくは、「異質」と考えるべきなのかな。ヨーロッパ人が新大陸を「発見」し、(現在では先住民族とされる)ネイティブアメリカンとコミュニケーションができたのとは違うのだろうなあ。でも、ちょっとならばできたのかな。異質な知性が行う音声コミュニケーションなんて、SFで地球人と宇宙人のコミュニケーション並に不思議なものなんだろう。
興味は尽きない。