全英連参加者のブログ

全英連参加者の、言葉やその他諸々についての雑感... 不定期更新です。

通信指導問題(’05後期)

2005-11-29 05:05:09 | 教師の研修 2005

 文化人類学研究('05)のレポート、や~~っと書けました。(^_^)v
 今回のレポートは字数制限が800語~1000語と幅がありました。これが思った以上に僕を困らせました。
 テーマは「近代国民国家の統治・文化施策と先住民族との関係について」でした。

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前書き
 自分は高等学校の英語教師である。ことばの教育に携わるものとして、先住民族に対する政策の一環として、その言語政策に関心を持っている。
 このレポートではフィンランドのサーミの人々(「サーミ」とする)と本邦アイヌの人々(「アイヌ」とする)に対する言語政策を、フィンランドと日本の憲法、アイヌにかかわる新旧2法、関連資料を読み、言語使用等についての記述の有無を調べることとする。これにより、フィンランド、日本それぞれの先住民族の言語政策について概観できると考えたからである。

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1.サーミの言語
 フィンランドはスウェーデン統治時代後、ロシアの大公国となった。1863年の言語布告で公用語となったスウェーデン語に加え、フィンランド語が公用語の地位を獲得、2公用語体制となった。これは独立後も引き継がれ、'22年の言語法で2公用語に関する規定が定められた。
 サーミは1995年の憲法改正によりフィンランドにおいて先住民族として認知された。彼らは'91年、'95年の立法措置*1により、一定区域内で、自らの言語と文化について自治が認められている。現行憲法第17条には自らの言語と文化を持つ権利が述べられている。サーミは先住民族として、それらを維持発展させる権利を有すると規定されている。

2.アイヌの言語
 アイヌに関する新旧2法*2のうち、旧法は1899年に制定された。この法律は北海道開拓により、生業地を奪われ生活が窮乏化したアイヌの救済を図ることが主眼である。また、同法第9条により、アイヌ学校が全道に設立された。これはアイヌ児童を親から分離、忠君愛国を柱とした教育を行うためである。アイヌ民族の文化、言語を尊重する教育は行われなかった。
 新法は第1条でアイヌ伝統等の尊重、第2条でアイヌ文化はアイヌ語を含むことを明記している。しかし、アイヌのアイヌ語に対する権利は読み取ることはできない。日本は憲法第14条で法の下の平等を定めている。これは人種による差別を許さないという考えであり、特定人種を優遇することも前提とはしていない。アイヌの言語に対する権利に、日本社会が、あえて言うならば鈍感なのは、いわゆる、日本人単一民族説によるところも大きい。彼らの存在への配慮が欠けていた。

3.まとめ
 フィンランド国内のサーミは約7000人、サーミ語を母語とするものはその半数である。*3
 北海道におけるアイヌは、平成11年度の調査*4で23,676人である。このうちアイヌ語については、世帯調査*5の対象世帯の中から、アンケート調査を実施したところ、対象者715人中、アイヌ語を知っている、多少なりとも会話ができるとの回答は312人である。
 この割合をそのまま全体に当てはめるわけにはもちろんいかないが、仮に当てはめてみると10,000人をこえる程度である。旧法における同化政策、新法制定までの時間等両者が相まって、アイヌ語についてはその存続が危機的状況である。その保護を考えなければならないと思う。
(本文993文字)

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脚注

*1 公の機関におけるサーミ語の使用に関する法律(1991)、サーミ議会法(1995)
*2 新旧2法は以下の2法を表す。
 新法 アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(1997)
 旧法 北海道旧土人保護法(1899)
*3 ハッリ・マンティラ「フィンランドにおける言語環境」
*4 北海道ウタリ生活実態調査(平成11年度、北海道庁)
*5 世帯調査-アイヌの人たちが居住している地区の中から20地区300世帯を抽出
  アンケート調査-世帯調査対象世帯の中から、15歳以上の世帯員を対象

参考とした文献、ウェブサイト

東海大学紀要文学部 文学部第75輯(2001年)
 フィンランドにおける言語的少数派と言語権保障(吉田欣吾)

駐日フィンランド大使館広報部訳
ハッリ・マンティラ 「フィンランドにおける言語環境」
 1.フィンランドで使用される諸言語の状況
 2.国語としてのフィンランド語とグローバリゼーション

アイヌ民族資料室・ホームページ

フィンランド共和国憲法(Wikipedia)

北海道ウタリ生活実態調査報告書

本講義教科書
 第3章、第5章、第11章

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 今回は最初は2000字をこえてしまい、推敲以前の問題になってしまいました。
 書きたいことを削りまくって、その後で推敲してようやく1000字を切りました。

 今回もまたギリギリ提出です。
 前回の反省が生かせていません。
 でも、また、がんばりたいと思います。


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