鳩山首相は日本だけを滅ぼす亡国の温暖化法成立をなぜ急ぐのか

2010年04月24日 | news
鳩山首相は日本だけを滅ぼす亡国の温暖化法成立をなぜ急ぐのか
2010年4月23日 経済ジャーナリスト・町田徹

 米ウォールストリートジャーナルに「ハラキリ」と酷評された「地球温暖化防止法案」の今国会での成立を目指して、政府・与党はアクセルを踏み込み始めた。

 20日午後の衆議院本会議で、法案の趣旨説明と質疑を行い、審議の火ぶたを切ったのだ。

 だが、鳩山由紀夫首相の答弁で目立ったのは、少数派の学説に依存した不確かな根拠といい加減な分析、見通しを包み隠そうとする美辞麗句ばかりだった。

 世界は、八百長疑惑の高まりで、すっかりポスト京都議定書の枠組み作りの意欲を失っている。

 にもかかわらず、日本だけが軌道修正をできないと、経済は深刻な打撃を蒙りそうだ。

「自分の国の首を絞めている」と
鳩山首相を自民党が糾弾


 まず、政府・与党案への対案として提出した自民党案(「低炭素社会づくり基本法案」)について、昨年の総選挙で当選を果たした、たった4人しかいない自民党の新人議員の一人である斎藤健議員(千葉7区選出)が、20日の衆議院本会議で行った趣旨説明の一部をご紹介しよう。斎藤氏は電力基盤整備課長などの要職を務めたこともある元経済産業省のキャリア官僚だ。

「鳩山総理、あなたは一体、何をやろうとしているのですか。この国をどうしようというのですか。これでは普天間と同じではないですか」

「25%削減目標は第二の普天間です」

「格好いいことをぶち上げて、関係者が苦労して積み上げてきたものをぶち壊し、しかし、一枚めくってみると、根拠不確か、分析もいい加減、そして腹案もない、言うだけ」「格好いいことを言うが、裏づけがない。ないないづくしのものをぶち上げ、最後は開き直る」

「今、日本の政治は危機に瀕していると思います」

といった具合である。

 続いて、この日、外務政務官、外務副大臣を歴任した小野寺五典議員(宮城6区)が鳩山総理に仕掛けた質疑に触れておこう。ポイントを突いた質問に、ほとんど答えられない首相の姿が浮かび上がってくる。

 質疑に先立ち、小野寺議員は、鳩山首相が昨年9月の国連気候変動首脳会合で、「すべての主要な国による公平かつ実効性ある国際的な枠組みの構築と意欲的な目標の合意」を前提として、「温室効果ガスを1990年比25%削減する」との方針を公表した時に起きた拍手が、賞賛ではなく、あざけり笑いの拍手だったのではないかと皮肉った。自分で、自分の国の首を絞めているというのが、その理由だ。

 そのうえで、日本が25%削減を行う前提条件として掲げている「主要国の意欲的な目標の合意」について、その範囲と目標の具体的な数値を問いただしたところ、首相は「引続き交渉中であり、申し上げることは控えなければならない」と逃げた。

 次に、小野寺議員は、政府が25%削減が国民生活に与える影響に関連して、小沢鋭仁環境大臣の試案という形で、国内経済や雇用にプラスになるモデルだけ2つ紹介し、悪影響がでるという分析を示していない問題を指摘した。そして、なぜ、この影響分析が環境大臣試案であり、経済産業大臣や厚生労働大臣が連携して責任を持つ体裁が整っていないかを追及した。要するに、国民生活や雇用、産業競争力に及ぼす影響の政府の統一見解がないことが、法案の審議には不十分なことだと責めたのである。

 ところが、首相は、「経済モデルには、構造や前提が異なる様々なものがあって、国民生活、雇用、産業競争力への影響、などの試算結果も異なってくるため、政府としてただひとつのモデルを政府見解として示すことは困難だ」と惚けただけ。肝心の政府が都合の悪いモデルを示さなかったことの責任には言及しなかった。

 半面、首相は、気候変動問題を第2の普天間になぞらえる見方が増えていることに対して、「難しいテーマにチャレンジするのが新しい政権でございます」と、大見得を切ってみせた。

 政権発足以来、そうした大見得を裏付ける根拠・成果を政権があげていないことを省みない自画自賛の言葉が空虚に国会に響いたのだった。そして、再質疑に立った小野寺議員に、「困難な問題に取り組むのが鳩山政権なのではなく、問題を混乱させるのが鳩山総理だと思っています」と冷笑される始末だった。

地球温暖化の根拠さえ揺らぐ中
削減実行を強引に促す民主党案


 筆者は、温暖化ガスの削減目標を国際公約と国内目標の2つに分けて設定し、国際公約については今後の国際交渉の行方を見極めたうえで決定することとする一方、国内目標を真水で2020年までに2005年比で15%の排出削減を目指すという自民党案にも賛成はしかねる。

 むしろ、世界では、研究者や団体の不適切な観測データの取り扱いが明らかになり、地球温暖化という自然現象が本当におきているのかどうかにすら疑問の声が上がっているからだ。

 まして、民主党案は、3月5日付の本コラム記事「国民に重税を強いる悪夢 温暖化対策法案を急ぐ政府への不信」で述べたように、強制的に国民全体に重い負担を課す恐れのある施策を始め、一部の人だけが得をする施策、それだけではCO2の排出には役立たない施策などの愚策がズラリと並んでいる。

 さらに、前提条件としている主要国の意欲的な目標が揃わなくても、一部の施策を時限を切って強引に前倒しでスタートさせようと目論む内容だ。こうした法案は決して成立させてはならないと考えている。

 もちろん、省エネ、コストカットの観点から、国や企業、家計が誠実に努力して、温暖化ガス削減を進めるのは大切なことである。それ自体はそれぞれの経済主体にとっても、コスト圧縮というメリットを伴うものである。

 しかし、無謀な真水目標を設定したのでは、産業の海外移転や雇用の流出、そして経済成長の阻害要因になりかねない。

 そして、その兆候はすでにはっきりと表れているのである。

産業の海外移転加速を示唆する
新日鉄のブラジル高炉


 中でも、最も注意するべきプロジェクトは、新日本製鉄が半世紀以上も友好関係を保ち、2006年に持ち分法適用会社にまで強化したブラジルのウジミナス製鉄所との提携強化の動きだ。

 新日鉄は、これまでのような半製品の加工場だけでなく、鉄鋼業の心臓部とも言うべき高炉をブラジル国内に建設中なのだ。多量のCO2を排出する高炉は、鉄鋼の半製品にあたる鋼板を製造する施設だ。この施設で、鉄鋼の半製品と呼ばれる鋼材が製造されなければ、他のあらゆる鉄鋼関連の製造業は、スクラップを使う電炉も含めて、業として成り立たない。つまり、高炉は、鉄鋼業の中核中の中核である。

 労働組合の反発を懸念してのことだろう。決して、自ら積極的に語ろうとはしないが、新日鉄は早晩、日本で必要とする鋼板をすべてブラジルで製造し、日本に持ち帰ることができる体制が整うというのである。

 ブラジルは、中国、インド、ロシアと並び高い経済成長が期待される新興国の一角だ。鋼材需要も飛躍的に伸び続ける見通しで、世界経済が順調に成長を続ける限り、新日鉄はウジミナス製の鋼材をブラジル中心に現地で供給し続けるものとみられる。

 とはいえ、もし、温暖化対策基本法が成立し、25%削減を迫られれば、事情は一変する。国内で高炉を維持することは不可能になりかねないのだ。それゆえ、温暖化防止法は、この種の産業の海外移転を加速するとみられている。つまり、企業が製造拠点を排出規制の緩い海外に移すため、日本国内の雇用は減るが、世界的な温暖化ガスの排出はむしろ増えるのだ。

 本当に、そんな乱暴な法案が必要なのか、立ち止まって考えてみるべきである。

http://diamond.jp/articles/-/7978








国民に重税を強いる悪夢
「温暖化対策法案」を急ぐ政府への不信

2010年3月5日 経済ジャーナリスト・町田徹

 賛否の立場を超えて、政府の「地球温暖化対策基本法案」の策定姿勢に対する不安と不満が広がり始めた。

 問題は、鳩山由紀夫首相が施政方針演説で策定方針を示したほどの重要法案であるにもかかわらず、そのプロセスや内容がきちんと公表されていない点にある。

 加えて内容も、閣僚や関係議員で構成する「環境省政策会議」に提出された政府の資料を見る限り、わが国が主体的に目指す目標のない“欠陥法案”らしい。

 ところが、具体策では、強制的に国民全体に重い負担を課す恐れのある施策を始め、一部の人だけが得をする施策、それだけではCO2の排出には役立たない施策などの愚策をズラリと並べて、一部を時限を切って強引に前倒しでスタートさせようと目論んでいるという。

 そもそも世界では今、過去の地球温暖化研究が不都合なデータを無視するなど信頼性に欠けるものだった可能性があるという報道が相次ぎ、あえて今、地球温暖化問題に取り組むべきかどうか疑問視する向きもある。

 ここは、国民として、納税者として、どうみても戦略性が欠如している政府に対して、冷静に立ち止まってゼロから再考するように迫るべきではないだろうか。

25%削減に賛成したのは
国民全体のわずか9%


 本論に入る前にまず、政府が昨年12月に国民全体を対象に実施した「地球温暖化対策の基本法の制定に向けた意見募集」の概要を説明したい。ニュースソースは、政府が前述の環境政策会議を1月14日に開き、連立与党議員らに対して示した資料で、パーセンテージはそれをもとに計算した。

 それによると、今回の法案で、麻生太郎前政権が掲げた「温室効果ガスを2020年までに15%削減する」という中期目標を「25%」に引き上げて明記することについて、回答が1376件あり、このうちの86%の人が何らかの形で「反対」か「懸念」という回答をした。

 その内訳を記すと、「すべての主要国が意欲的に取り組むという前提の確保が明確でない」という理由をあげている人が37%、「経済・雇用への影響が不明確」なことを懸念している人が36%、「日本だけが突出すると産業の国際競争力が低下し、空洞化を招く」と反対した人が13%だった。

 これに対して、なんらかの形で「25%以上の削減目標」を掲げることに賛成した人はわずか9%に過ぎない。具体的には、「30%以上削減すべき」という人が6%、「25%を堅持すべき」という人が3%だった。

 一方、鳩山首相は1月29日に今通常国会の施政方針演説を行い、今回の基本法の策定方針を述べている。

 念のため、演説を振り返ると、まず、「ピンチをチャンスと捉える」「変革こそが、必ずや日本の経済の体質を変え、新しい需要を生み出すチャンスとなる」などと前置きして、そのうえで「地球温暖化対策基本法を策定し、環境・エネルギー関連規制の改革と新制度の導入を加速する」「低炭素型社会の実現に向けたあらゆる政策を総動員します」と表明したのだ。

 だが、政府・与党は、この基本法の設置が民意に反していることを「意見募集」で知っていたはずだ。つまり、政府・連立与党は民意を無視したのである。

 さて、そこで、話を、本論の基本法の内容に進めよう。

削減賛成派でさえ
政府方針に批判の声


 政府も後ろめたかったのではないだろうか。一計を案じ、できるだけ民意とかけ離れない法にしようとしたものと思われるフシがあるからだ。

 どういうことかというと、やはり1月14日の政策会議に「次期通常国会に提出を予定している法案について」という10ページの資料を出し、そのページを割いて、政府は「地球温暖化対策基本法案(仮称)の概要」を説明しているのだが、中期目標としては、25%削減を明記する一方で、これと併せて「公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築や意欲的な目標の合意を前提」とすることを法案に書き込むと記している。他の主要国の温暖化ガス削減策が不十分な場合は、日本も突出しないので安心してほしいというわけだ。

 しかし、ちょっと考えてみてほしい。あらゆる政策を動員するはずの国家プロジェクトの基本法に掲げる目標が、他国の動向に左右されるものであり、日本が主体的に決めて取り組むものでないというのである。これでは、策士が策に溺れたようなものだろう。

 さすがに、様々な立場の関係者から批判の声があがっている。皮肉なことに、その中には、中期目標の引き上げに反対・懸念する人たちだけでなく、むしろ、目標の引き上げが必要だと主張してきた「賛成派」も含まれているのだ。

 例えば、環境NGOであり、環境NPOでもある「気候ネットワーク」の例がある。代表の浅岡美恵さんが、「温暖化防止の公約を守ってください!」と題した鳩山首相あての私信をホームページで公開した。その私信には、「いつ、日本の削減目標と位置づけられるのかもわからない25%削減目標であれば、国民にも経済にも後ろ向きのメッセージとなり、世界は日本に不信を抱くでしょう」と強い調子で不満が表明されている。

効果のない排出権取引に
固執する一部の閣僚


 元を辿れば、民意を無視した基本法を制定し、中期目標を掲げようとしたことが問題の発端である。本来なら、策を弄さざるを得ないような基本法など作るべきでないのだ。

 むしろ、エネルギーを、地球温暖化研究の不正解明に注ぎ、その有効性と温暖化ガス削減努力の証明に向けるべきなのだ。そのうえで、主要国との外交交渉にも重心をかけ、反対の人々からも合意を取り付けられる、国際合意の形成を優先すべきだったのだ。

 首を傾げざるを得ないことは、他にもある。大前提の中期目標がいい加減なのに、個別の施策となると、不思議なほど多彩なのだ。それぞれの問題点には目をつぶり、とりあえず、かき集めたとしか思えないほど多岐に及んでいるである。

 前述の「地球温暖化対策基本法案(仮称)の概要」によると、その施策の主な柱は、(1)国内排出量取引制度の創設、(2)地球温暖化対策のための税の実施に向けた検討、(3)エネルギーの固定価格買い取り制度の拡充??などとなっている。

 このうち、(1)は、これだけ実施しても、温暖化ガスの排出削減には何の役にも立たないことで知られている。というのは、排出権取引が有効に機能するのは、まず、政府や産業、家庭の排出量の上限(キャップ)を決めて、その削減計画を立てて、それぞれの主体の将来予測も含めた過不足を明らかにして、はじめて過不足を補う排出権取引(トレード)制度がワークするからである。

 はっきり言って、取引制度作りで喜ぶのは、一部の金融資本市場関係者だけである。関係者の中には、「一部の閣僚がこの市場を来年中にも創設すると異常な執着をみせており、不自然だ。常識的なインセンティブがあるとは思えないので、理解に苦しむ」との指摘も存在する。

 また、前述のキャップを決める権限を誰が持ち、どのようにして決めるかで重要になってくるのが、(2)の地球温暖化対策のための税のうち、排出税とか排出権税などと呼ばれるものだ。

 これからは、小さな商売を一つ始めようとか、結婚するので家を建てようと言うようなことでさえ、それに伴い、温暖化ガスを排出できるキャップを入手する必要が出てくるからだ。

 このキャップを割り当てる権限は大変な利権となるため、官庁や地方自治体の許認可制にする形で任せてよいのか、それとも、電力料金に税金を上乗せして、それを支払うことでキャップが得られるようなものも含めて税制で工夫するのかなどが、大きな議論になるとされている。

 一方で、政府は、道路の特定財源の扱いなど、すべてを税制改革任せで、排出権について、どんな税制や許認可制の導入が必要になるかすら国民に示していない。こういう状態を放置したまま、基本法制定を急ぐというのである。

 中期目標の25%削減を達成するために、あまりにも重い税負担を負わされるとなれば、中期目標事態を見直す必要があるかもしれないのに、このような稚拙な議論の進め方をするようでは、無責任のそしりを免れまい。

 さらに、(3)の関連で最も懸念されるのが、家屋の屋根にソーラーパネルを設置して発電した電気を、電力会社にすべて買い取らせる全量買い取り制度の導入問題だ。実は、これだけでも、世論を真っ二つに分断することになりかねない大変な争点のはずである。

 というのは、こうした自家発電は、戸建住宅に住み、最低でも300万円前後もする設備を購入できる、富裕層にのみ可能なもの。これに対して、全量買い取りの資金は、電気料金に転嫁して消費者が全員で負担するか、それとも税金で補助して納税者が支払うか二つに一つである。

 いずれにせよ、太陽光発電を導入できない世帯にとっては、負担だけを強いられる制度となるわけだ。こうした逆累進性の強い施策が社会的な要請かどうか、国民的な議論も必要なはずである。こそっと基本法に忍び込ませて、有無を言わせず、国民を従わせようというのは、まるで犯罪だ。

 ところが、政府は当初、本稿掲載日にあたる3月5日に同法案を閣議決定し、多数を握る国会で可決する準備を進めていた。さすがにマズイと思ったのか、直前になって、閣議決定を3月8日の週以降に延ばす一方で、急きょ、産業界や労働界への説明会も開催する方針に変更したという。

 政府は、国民から見れば、環境省政策会議や産業・労働界との会合は、密室政治の延長にしか映らないことをよく肝に銘じるべきである。

 昨年の総選挙で、民主党を勝たせたがゆえに、このような内容の地球温暖化対策基本法を制定され、今後何十年にわたって重い負担を強いられるなど、国民にとって悪夢でしかないはずだ。地球温暖化防止問題は、もっときちんと世に問い、国民的な合意を形成すべきテーマのはずである。

http://diamond.jp/articles/-/1187


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