青空と大地の中で

北の大地より愛を込めて・・・

ジャンプのおさらい

2013-02-21 20:03:07 | スポーツ
先日、若干16歳の高梨沙羅ちゃんが見事ワールドカップの総合優勝を決めましたが
それにちなんで、ココでもスキーのジャンプ競技についてご案内させていただこうと思います。

[1]

Canon EOS 7D+EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM**Mode=Av F11 SS1/50 ISO100 中央部重点平均測光 +0.7EV 16mm C-PL
と言うことでやって来たのは、日本を代表するジャンプ競技場「大倉山ジャンプ競技場」(札幌市中央区)

現在の規格ではラージヒルに分類されるジャンプ台で
札幌オリンピック(1972年)の開催時には「90m級」の競技場として使用されました。

[2]

Canon EOS 7D+EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM**Mode=Av F11 SS1/60 ISO100 中央部重点平均測光 +1.2EV 16mm C-PL
この競技場の特徴のひとつに市街地にとても近いということが挙げられます。

[3]

Canon EOS 7D+SIGMA APO 70-300mm F4-5.6DG MACRO**Mode=Av F8 SS1/60 ISO100 中央部重点平均測光 ±0.0EV 70mm
しかも正面に札幌の中心街を望むため、選手からしてみれば・・・
ジャンプのテイクオフの瞬間は札幌市中心部のビル群に向けて体を投げ出す感覚になると言われています。

[4]

Canon EOS 7D+EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM**Mode=Av F11 SS1/80 ISO100 中央部重点平均測光 +0.8EV 26mm C-PL
観客席はこんな感じ
ランディングバーンの横に設けられています。

[5]

Canon EOS 7D+EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM**Mode=Av F11 SS1/80 ISO100 中央部重点平均測光 +1.0EV 16mm C-PL
ランディングバーン
この位置からは見えませんが、この上のアプローチ(助走路)を滑り降りジャンプした選手がこのバーンに着地します。

[6]

Canon EOS 7D+EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM**Mode=Av F11 SS1/80 ISO100 中央部重点平均測光 +0.8EV 16mm C-PL
係の方が引いている上の赤いラインが、飛距離点計算の基準となる「K点」(大倉山の場合は120m地点)

その昔は「これ以上飛ぶと危険」という意味合いでK点が設けられていましたが
近年、選手の技術進化などもあり、現在のトップアスリートたちにとってはK点超えがあたり前となっています。

過去のK点に替る現在の「これ以上飛ぶと危険」とされる地点は「ヒルサイズ(HS)」で表されています。
この大倉山のヒルサイズは134m(K点ラインの下に薄く見える赤いライン)ですが、既に数多くの選手たちがこのラインを超える大ジャンプを記録しています。

ちなみに現時点の大倉山のバッケンレコード(最長不倒距離)は、2012年1月に伊東大貴選手が記録した146m。
女子に限って言えば、2011年1月に当時14歳(中2)の高梨沙羅ちゃんが記録した141mです。

[7]

Canon EOS 7D+SIGMA APO 70-300mm F4-5.6DG MACRO**Mode=Av F8 SS1/80 ISO100 中央部重点平均測光 -0.3EV 70mm
ジャンプと言えばその飛距離と空中および着地時の姿勢(飛型)の美しさを競うことはご存知かと思いますが
その姿勢に関する飛型点を採点するのが飛型審判員の方々

[8]

Canon EOS 7D+SIGMA APO 70-300mm F4-5.6DG MACRO**Mode=Av F5.6 SS1/100 ISO100 中央部重点平均測光 -0.2EV 238mm
5人の飛型審判員が同時に採点を行います。

[9]

Canon EOS 7D+SIGMA APO 70-300mm F4-5.6DG MACRO**Mode=Tv SS1/125 F9 ISO100 中央部重点平均測光 +1.0EV 70mm
飛型に関わる重要な要素とされるのが着地時の「テレマーク姿勢」(↑のように足を前後にずらし片膝をつくような感じで両手は左右に)
両足を揃えてドンと着地した場合などはこれがなされていないと判断され減点されてしまいます。
また、転倒してしまった場合も大幅に減点の対象となってしまいます。

もちろん、飛行中のブレの無い安定した姿勢も大事なことで・・・

[10]

Canon EOS 7D+SIGMA APO 70-300mm F4-5.6DG MACRO**Mode=Tv SS1/125 F8 ISO200 中央部重点平均測光 +0.5EV 190mm
「ニャー!」なんてやってしまうと・・・
問答無用、減点です!


それではここで得点の計算方法についておさらいしておきましょう。

先ず・・・
得点の計算方法は、着地点がK点を越えるとその距離に応じた得点が基準点60ポイントに加算
逆にK点に満たなければ減点されていくというシステムです。

なお、計測位置は両足を揃えて着地してしまった場合は足の位置、テレマークを決めた場合は両足の中間地点となります。

ちなみに加算・減算される点数は競技場の規模によって決められており
この大倉山の場合は、1mあたり1.8ポイントとなっています。

なので、大倉山ではK点の120mを超えると加点、充たなければ減点されていきます。

もうひとつの要素である飛型点は5人の飛型審判員により
飛行中および着地時のフォームがどれだけ美しく安定しているかを採点します。
審判員1人の持ち点は20ポイントで、付けられたポイントの最高・最低をカットして
中間の3人分の得点を合計したものが飛型点となります。

そして、上記の飛距離点と飛型点を合計した得点で順位を競います。

[11]

Canon EOS 7D+SIGMA APO 70-300mm F4-5.6DG MACRO**Mode=Av F6.3 SS1/1000 ISO400 中央部重点平均測光 +1.3EV 70mm
ジャンプ競技にとっては風も重要な要素というのはご存知の通りですが(基本的に向かい風は有利、追い風は不利)
最近ワールドカップなどの国際試合で採用され始めた規定のひとつに「ウインドファクター」と呼ばれるものがあります。

要は、気まぐれな風による影響も公平に得点に加味しようということで・・・
場内5ヶ所で風速を計り平均値を出し、その数値によって加点(追い風の場合)、減点(向かい風の場合)します。

ウィンドファクターの数値は競技場ごとに定められており、大倉山の場合は「11.7点×平均風速/秒」とされています。


そして、もうひとつ最近耳にするようになったもので「ゲートファクター」と呼ばれるものがあります。

これは、たとえば気象条件の影響などにより競技途中でゲート(アプローチのスタート位置)変更する場合
それまでに飛んだ選手の記録はキャンセルし、すべて最初からやり直ししていたものを
ある計算によって出された数値を得点に換算し、キャンセル無しにそのまま競技を継続できるようにしたもの。
また今シーズンのワールドカップでは個々の選手(コーチ)の申請によって自分のスタートするゲート位置も変更(下げる)できるようになりました。

実際、飛距離では勝るが着地時のテレマークに不安のあった沙羅ちゃんが、飛び過ぎによる着地時のリスクを抑えるため
あえてゲートを下げる戦略を取り、見事勝利した試合がありました。

ゲートファクターの数値はジャンプ台によって決まっており(いずれの場合も競技開始時のゲートが基準=プラマイ0)
ゲートが下がると加点、上がると減点されることになります。
ちなみに、大倉山の場合は1mあたり9点の基準、そして50cm刻みのゲート位置となっているので、1段あたり4.5点の計算となります。


ということで・・・
ここで一つ演習問題をしてみましょう!

〈問題〉
大倉山で行われたワールドカップの試合で、沙羅ちゃんが飛距離140mの大ジャンプを成功させました。
その時の飛型点はジャッジAが20ポイント、Bが20、Cが19.5、Dが19.5、Eが20でした。
なお、飛距離には自信のある彼女は基準より1段低いゲートを使用しアプローチを滑り降りました。
また、そのトライアル中には平均3m/sの向かい風が計測されていました。

さて、このジャンプでの沙羅ちゃんの総得点はいくらだったでしょうか?

〈解答〉
まず飛距離点ですが・・・
実際に記録した飛距離140mから大倉山のK点120mを引きます。
「140m-120m=20m」ということでK点より20mオーバーだったことが判ります。
大倉山は1mあたり1.8ポイント加算なので
「60(pts)+1.8(pts)×20(m)=96(pts)」ということで、先ず単純計算での飛距離点は96ポイントになりますね。

加えて、彼女はゲートを1段下げてトライしており、ゲートファクターによるポイントが与えられます。
大倉山のゲートは1段50cmの差があり、1mあたり9ポイントのゲートファクターが設定されているため
この場合は50cm分「9(pts)×50(cm)/100(cm)=4.5(pts)」ということで、4.5ポイントが追加加算されます。

ただし、向かい風が吹いていたために、ウインドファクターによる減点があります。
この場合は平均3m/sの風が吹いていたので、これに大倉山の基準「1m/sあたり11.7ポイント」を当てはめると
「3(m)×11.7(pts)=35.1(pts)」ということで、35.1ポイントが減点されてしまいます。

と、以上の要素を合計すると 「96pts+4.5pts-35.1pts=65.4pts」ということになり
飛距離点は「65.4ポイント」になります。


次に飛型点・・・
A~Eの5人のジャッジの得点の中で最高はA、B、Eの付けた20ptsなので
まずこの中のひとり分を除外(とりあえずここではAを除外)します。
一方最低はC、Dの付けた19.5ptsなので、これもどちらかを除外(ここではD)します。
ということで有効な得点はB=20pts、C=19.5pts、E=20ptsなのでそれらを合計
「20pts+19.5pts+20pts=59.5pts」ということで、飛型点は59.5ポイントとなりますね。

そして総得点は、上記で算出された飛距離点と飛型点を合計・・・
「65.4pts+59.5pts=124.9pts」ということで、総得点は「124.9ポイント」になります!


それでは以上のことを踏まえまして・・・
この後は、1月12日に開催されたHTB杯スキージャンプ競技大会の模様を観戦いたしましょう。

[12]

Canon EOS 7D+SIGMA APO 70-300mm F4-5.6DG MACRO**Mode=Av F5.6 SS1/800 ISO400 中央部重点平均測光 +0.7EV 300mm
HTB(北海道テレビ放送)からは「onちゃん」も応援に駆けつけ
場内を盛り上げています!


【撮影地】 大倉山ジャンプ競技場(札幌市中央区)
【撮影日】 2013年1月12日
【カメラ】 Canon EOS 7D
【レンズ】 EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM/SIGMA APO 70-300mm F4-5.6DG MACRO



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Luxio)
2013-02-21 21:09:09
こんばんは。
なるほどですね。
ジャンプの採点方法について伺うと
その解説を丁寧にされているなと感じています。
今、女子ジャンパーの活躍を
大倉山にてご覧になられるケースが
多くなりつつあるかと思います。
村とランキングに応援
おはようございます。 (信州かつみ)
2013-02-22 05:13:13
大倉山ジャンプ競技場・・・冬の五輪を見ていました、
で、又すごい女性が活躍していますね~16才だって・・・
ソチでは期待できますね。

今朝もマイナス9度です、道路は凍結しています。
福寿草の群生地に行って来ましたが90%はき雪の中。
ランキングに応援 ☆
おはようございます♪ (カシオペア)
2013-02-22 07:15:42
今のスキーのジャンプとスケートはオリンピックが楽しみですね。
紗羅ちゃんと真央ちゃん、カワイイから大好きです(^^♪

応援ポチッ☆
Unknown (きょん)
2013-02-22 10:41:47
おはようございます~!
ジャンプ解説色々とわかりやすくありがとうございます!
沙羅ちゃん、本当に素晴らしかったですよね。
今後の期待に注目したいと思います!
ジャンプ奥深いですね~
Luxioさん (tetsu)
2013-02-22 20:14:18
こんばんは。

ありがとうございます。
最近は採点方法もややこしくなっており
単純に飛距離だけでは判断できないということもあり
ソチ五輪に備えて紹介させていただきました。
かつみさん (tetsu)
2013-02-22 20:14:36
こんばんは。

この大倉山ではありませんでしたが
札幌五輪では宮の森での70m級、
日本の金銀銅独占が忘れられないですね。
そして、白馬での団体戦の金獲得の感動もですね!

当然、ソチでも期待がかかりますが
きっと感動の名場面が待っているような気がします。
カシオペアさん (tetsu)
2013-02-22 20:15:00
こんばんは。

そうですね~
ジャンプ、スケート・・・
そしてアイスホッケーも忘れないでくださいね!

と、思い浮かべてみると・・・
冬も女性アスリートが頑張ってますよね~
もちろん、男子にももっと頑張って欲しいですが
やはり美しく輝く女性たち、より応援に力入りますね!
きょんさん (tetsu)
2013-02-22 20:15:18
こんばんは。

ありがとうございます。
最近のジャンプのルールもややこしくなってますが
今後中継をご覧になる際には参考にしていただければ幸いです。

沙羅ちゃんは素晴らしいですね~
我が子よりもまだ年下の彼女ですが
競技に取り組む姿勢、立ち振る舞い、勉学などに関しても
ホント尊敬してしまいます!

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