意思による楽観のための読書日記

暴走する国家 恐慌化する世界 副島隆彦、佐藤優 **

世界の政治経済の舞台裏話を表舞台では爪弾きものに扱われる二人が暴露しあう、という感じの本、だから面白い部分も多分真実もある。

副島:アメリカにはリバータリアニズムという思想がある。権力、統制、官僚が嫌い、税金は取られたくはない、過剰福祉は不要という考え方、民衆的保守思想。サラ・ペイリンはこの代表選手、アラスカに移住したペイリン家に生まれ、夫とは漁業をやっていた開拓農民魂を持っている。NRAの会員であり、銃で自分たちを守る。ペイリンはポピュリストでもある。ポピュリストは迫力ある演説で這い上がり、地元の親分に利用されながらも頭角を現して、ある時点で親分の悪事を暴きだしてでもさらに上に這い上がる、というタイプ。オバマが大統領に選ばれた選挙では、このペイリンがリベラルだけではなくて保守系にも嫌われた、しかし黒人は嫌なのでヒラリーにしたかったのに、金融経済人たちはオバマを大統領に決めた。

佐藤:竹中さんは「自民党には新自由主義的な改革はできない、規制を緩和して経済的に強いものはもっと強くするという改革を行う必要がある」とまだ言っている。
副島:彼はもうどこかに逃げたいはず。しかしリーマンから資金を得ていたために捕縛されるかもしれない。リーマン破綻で資金源が絶たれた。ファニーメイとフレディマックの債権は20分の1に暴落、日本では三井住友の被害が一番少なかった、2000億円だった。最大は農林中金、5.5兆円、三菱UFJが3.3兆円。さらに言えばリーマンショックで日本の金融機関が出資・買収した海外金融機関は、みずほが1300億円メリルリンチに出資、三井住友銀行が1060億円をバークレイズ銀行に出資、野村はリーマンの部門を数百億円で買収、三菱UFJは9500億円をモルガン・スタンレーに出資した。野村はファニーメイの債権も2兆円ほど買わされている。野村はデイビッド・ロックフェラーへの義理立てがあったが、リーマン社員の所得保障をしたので野村社員からの怒りを買った、これは野村の命取りにもなりかねない。

佐藤:ロシアでは燃料を除いて黒パン、じゃがいも、ウォトカ、タバコが収入の2%位で手に入るように管理している。ゴルバチョフは反アルコールキャンペーンをやって、フィルター生産を一手に握っていたアルメニアの紛争がありタバコもたから持たなかった。プーチンとメドベージェフはこういう政策をうまくやっている。ロシアの男性平均寿命は58歳、女性は72歳ですからこれはウォトカのせいです。

副島:ユダヤ人には希望はなく、根拠のない待望しかない。Ratio(合理と理性)、そしてリーズンReason(理由)で動いているので保険商品が発達した。暴走すると強欲と拝金になる。金融デリバティブの正体は保険商品、損害のリスクヘッジである。不安と心配を商品にして、保険料としてボッタクる。これがニューヨーク発の金融恐慌です。

佐藤:アルメニアはイランとロシアと手を握っている。敵対するアゼルバイジャンはイスラエルとアメリカと手を握っている。グルジアのサアカシュビリ政権は地方政権にすぎない、南オセチアとアブハジアはロシアの傀儡政権、こういうなかでグルジアがアメリカの後押しで南オセチアに進行しようとして、ごシアが押し戻した、これがグルジア紛争です。グルジアンは世界のゴミ箱のような状況です。

2008年12月に出版されたこの本、とんでも本と思うか、面白い情報ネタ本と考えるか、読む人次第である。

暴走する国家 恐慌化する世界―迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠
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