夜中の紫

腐女子向け 男同士の恋愛ですのでご興味のある方、男でも女でも 大人の方のみご覧下さい。ちょっと忙しいので時々お休みします

おはじき遊び 九つ目

2014-09-22 | 紫 銀

トシの話は 総悟の姉と自分は幼馴染で、

自分が友と姉と遊びに行くと必ず 総悟はついて来る と言うくらい仲良し姉弟だと言う事だった。その関係のまま 何度か庇ったりした。

姉が重い病にかかり金が必要だと言い始めると ついにスリや盗みなどし始めるようになった。

生活も大変そうだったので 総悟だけでも道場頼めと勧めるが 姉の薬代を稼ぐ事に夢中だった。

先日も 色街」で合った時タチの悪い女衒と一緒に居るので こっちに来るように言ったが、本人が戻らないと言いはる。

金がらみでは手も足も出ないので 自分は引き返してきたと言う。

 

 

田嶋は少し自分の部屋で考えていたが 

思い立ったように部屋を出て 中庭に面した廊下を歩いた。夏ももうすぐ終わってしまうだろう・・・・。

秋口になって風が冷たくなったら 姉はどうなってしまうのか

 

わいわいがやがやと むさくるしい道場の方がいつも以上にうるさい。

案の定 道場外の水場がごった返している。

子供たちが一斉に自分の胴着を洗って帰ろうと 水場に群がっていた。

石鹸を胴着に塗ってはいるが 土の地面に置いているので裏面が怖い

洗い方が分からなくて ただたらいに何度も押しこんでいる子

はたまた並ぶのが面倒くさくなったらしく 鯉の池に胴着を入れようと 池を覗きこむ子もいた。


それを後からやって来て トシが怒っている。


多分 自分で洗って帰れと だけ言ったに違いない・・・・。


はーーっとため息をついたが、多分トシならば自分で 収拾を付けるだろう。


「トシ・・・・・・例の子には 手ぬぐいだけ持たせて今までどうりにするように 言っといてくれないか・・・・?。」


というと 彼は出かけて行く自分を見送りながら 頷いた。



道場の裏手に回り 裏口近くのお勝手からもうもうと煙が出ていた。

昼飯を調理している所だった。むわっとする匂いに袖で鼻を押さえながら 入って行くと この道場のもう一人の長 おばちゃんに声を掛ける。

「・・・・ミタケさん・・・・。」

ミタケと呼ばれた 山の様なしろいかっぽう着がこちらを向く 

田嶋はどきっとした。


「はあ・・・?先生・・・。」

彼女が芋をごろごと回していた手を緩めると 周りの手伝いが 変わりおしゃもじを重そうに掻きまわし始める。

「何です・・・・?。」

「・・・・あの・・・・・身の回りを世話する者を おこうと思うのですが・・・・。」

と田嶋が言うと ミタケの表情が凍り 後ろの二人も凍りつく。


「俺の離れに・・・・。布団を・・・・・。」

とまで言う。

するとミタケの脚がぶるぶるしてくるのが分かる。 彼女の体が振れている物が共鳴したのか かたかたチンチンと音を立て始めた。

「す・・・すぐ持っていき・・・・ます!。」

彼女の声は震える肉体ではない 別な所から出たのか甲高い声で 別の者がしゃべったかと思った・・・・勘違いだ・・・。

「いや・・・・すぐではない・・・・ですけど・・・?。」

と田嶋も 震えが感染する前に引き返そうと引く。

「・・・わ・・・わかっ・・りました・・・。用意します・・・・。」

多分 まだ勘違いしたままだろう。


嫁を取るって話じゃないんだが・・・・・。

まあ布団が来てから ゆっくり話そう・・・・。


田嶋は手強いおばさんに 理解してもらうのを諦めて 出かける事にした。



若い時 稚児小姓を・・・・城で見た事が有る。

自分が仕官した際の挨拶に行った時だった・・・・・。

前髪を残し髪を後ろに束ね 成人には見えないが 短い剣を腰に差し 城の主の世話一切をするというその者は 美しい面立ちで 場内の廊下を文箱を前に掲げながら 歩いて行く。

まっすぐに 動いて行くその足には まぶしい白足袋が・・・・。

通常それを許されるのは 女官と医者と彼だけだった。

頭を下げ 文箱と彼が通り過ぎるのを見送ると 最後にもう一度だけ振り返ったのを覚えている。

彼の髪と着ものと白足袋・・・・・。

自分の嫁以外でドキッとしたのは 彼ぐらいだった・・・。


その感覚を・・・・・


今目の前で もう一度味わっている。

武家屋敷町の外れ 

太い川に 繋がる運河が引き込まれている街が有った。

ここで物資が船から下ろされ 店に運ばれるのだが 元締めと呼ばれる大棚の商人の屋敷街だ。

その一角に人足たちの元締めが 何軒か有るのだが その一つ トシの話していた女衒をしていると噂の屋敷の前。


そこに 籠を待つ一人の小姓姿の少年が立っていたのだ。

良く見ると あの総悟なのだが 城であった稚児が思い出せないほどの・・・・・


美しさだった。


向うもこちらに気がついた。つかつかと 歩み寄ると今日は逃げない様である。

つまらなそうな顔をしていた。

「・・・こんなとこで 何中恰好をしてるんだ・・・・?。」

というと 総悟は恥ずかしそうに横を向いた。

「・・・姉御が・・・倒れたぞ・・・・。」

はっと総悟が自分の顔を見る 

どきりとする。

目で 何かを訴えている。

「・・・・・・こんな事 姉上に知れたら何とする・・・?。」

説教をすると 総悟の目に怒りがよぎり

「ふん・・・・。」

と睨んできた。

「・・・・・トシに 姉上の事を聞いたんだ。お前は 俺の道場に通ってる事になってるんだろう・・・・?」

詰め寄る。彼は開き直り

「・・・・・気持ちが悪いなぁ・・・・・・。おっさん!。」

彼は話しだした口調は 全く表情に似合わず違和感さえ感じる。 

「・・・・・今日は・・・・・あんたじゃない・・・。」

と 無理に笑う。

田嶋は 腹の中に苦い物が沸き上がるのを感じた。

「・・・・もうよせ・・・・。」

手を取ろうとしたが 失敗した。

「・・・・・・・姉は どうする・・・・?。」

彼は少し困った顔になり 自分を見て

「・・・・・三つ葉・・・姉さんは・・・・。」

と口から漏れる様に言った。

「・・・・すぐに 医者を呼んだ。今は大丈夫だが やはり療養所に入れなければならないそうだ・・・。」

と田嶋が言うと 彼は頷いていた。

美しい紺の着もの 襟が抜かれ首が見える肩に手を乗せ

「帰ろう・・・・。」

と言った。

じーっと考える 美しい時の止まった人形の様だった。が・・・・・

「・・・・・・・金を借りてるんだ・・・・。」

と総悟が呟いた。

「いくらなんだ?。」

と田嶋が聞くが 総悟は首を振り 絶対に答え様としなかった。


彼は・・・・・

不安そうな目を 一度籠の中からこちらに向けると そのままどこかの屋敷に連れて行かれてしまった。  

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おはじき遊び 八つ目

2014-09-22 | 紫 銀

自分が決心した事を実行に移すには 彼の姉を説得するしかない。

 

暑さが陰ると 今まで大人しかった夏バテと言う奴が 体のあちこちにへばり付き 体調が悪くなる者も多い 少年の姉も同様で

長屋の家に行ってみると 

苦しそうに井戸に水を汲みに行くところだった。 心臓の病だろうか 滑車から伸びる綱を引っ張る事が出来ずに 井戸の縁に頭を乗せてしゃがみこんでいた。

何度か見た顔だが 今日は特に青白い顔。

生気は無く 唇も黒っぽい・・・・。

 

「もし・・・・どうしました・・・?。」

はあはあと 少しだけ顔を上げた少年の姉は 

彼に似て美しかった。

長い睫毛が乱れる事無く視線の先を示し 瞳は半分隠れ 深く澄んでいた。

姉思い・・・・この今にも折れてしまいそうな 少女を見て 彼が守りたいと思うのも無理は無いと納得する。

「・・・・はい・・・・この水を・・・・・。」

と彼女は 胴着の入ったたらいに水を入れようとしていた。

 

「ああ・・・・これを洗うのですね・・・・。私が 代わりにやりましょう・・・・あなたはとても具合が悪そうだ。」

 

そう言って 田嶋は彼女に変わって桶に水を入れて じゃぶじゃぶと洗いだした。

厚手の胴着は泥が付いて汚れている。

誰が着た奴なんだ・・・?。

帯に自分の道場の縫い取りがしてあった。

 

「申し訳ありません・・・。」

そう言うと 彼女には強すぎる日差しに目がくらんだか 

よろよろと しゃがみこんでしまう。

 

「お嬢さん!!・・・・。」

田嶋が支えて抱き上げると 彼女の意識は無かった。

自分一人で家に入るのは 問題が有るので 向かいの家にいたおばさんに手伝ってもらって 寝床に寝かせると

自分は また胴着を洗いに戻る。

 

ばしゃばしゃと洗っていると おばさんがやって来て 自分をいぶかしみ

「あんたは・・・この家の借金取りかい・・・・?それなら総悟ちゃんは居ないよ。この頃帰ってこないんだから。」

と 告げる。


「・・・・いや私は・・・・ただの知り合いで。・・・・鉄町にある道場の 田嶋と言う者です。」

と言いながら 汚れた水を桶から 溝に流した。

「ああ!・・・・トシ!の通ってる道場だろう・・・?総悟ちゃんも 近頃行き始まったみたいだね・・・・。三つ葉ちゃんも 安心したって言ってたよ。・・・・そうだよねぇ・・・・借金取りが 道場の洗い物なんかしてくれないもんねぇ・・・・。」

じゃぶじゃぶと板に 自分の生徒の胴着を何度も擦りつけていると 胴着がなんだか柔らかくなってきた。

昔を思い出す・・・・やはりこうで無いと・・・・。昔見習いの時にさんざん洗った胴着の事を思い出した。


「彼女どうです・・・・?。」

「ああ・・・・薬を飲ませたから 落ち着くと思うけど・・・・・良く無いね。この頃じゃ起き上がって来るのも しんどそうだよ。・・・・総悟ちゃんが・・・・・療養所に入れなけりゃ駄目なんだって・・・・・・・だから道場にこもって 道場主さんの手伝いをするって言ってたけど・・・・。本当にそんなに給料貰えるのかどうか・・・・・。」

田嶋は胴着を裏返して見ながら

 

「奥さん・・・・すりこぎ・・・・あります・・・・?。」

「ああ・・・・有るけど。」

「貸して下さい。」

おばさんは家に入ると 黒いごまの着いたすりこぎを持って来た。

ごまを払おうとするので それを止める

 

井戸の上に雨よけの屋根が掛けて有って その四方向に柱が立っている。その柱に濡れた胴着を巻きつけ縛ると八の字にすりこぎを入れて水を絞り始めた。

ハンドルの様にすりこぎを回すとジョボジョボと水が滴り落ちる。

感心するおばさんを横眼で見ながら

「あ!あんな所に歌舞伎役者が・・・。」

という、すぐおばさんは振り返り 田嶋が見た方をきょろきょろと 探した。

その隙に すりこぎの黒ごまを 胴着の前立て部分に刷り込み色を付ける。

ゴマは繊維に入り渇いても 黒く残るだろう・・・・・。


「何だい!・・・居ないよ・・・?!。」

とおばさんが怒るので 田嶋は

「・・・・居たら良いですねって 話です・・・・・。」

と笑ってごまかした。

 

 

 

 

 

近頃見ないと言うので心配になるが 今更 色街を探す訳にも行かなかった・・・・。

しかし手掛かりは 以外にも近くにあったのだ。

自分の道場に2,3日後に行くと 黒ゴマの着いた胴着を着た塾生が 竹刀を振っていたのだ。

ちょっと 自分の部屋においでと言うと 幼い塾生は監督の先輩に怒られながらやって来た。

彼は 両家の子息で  総悟とは幼馴染だったらしい。

寺子屋では賢く 礼儀正しい子だったので 総悟は先生から好かれていた。

2年ほど前に引っ越し 貧乏人になってから 彼をからかいつつも心配していた。

小銭で 通い始めた道場の胴着を洗わせている。


「・・・・お前の胴着を 彼がいつも自分で洗うらしいが・・・俺が見た時 御病気の姉上が洗っていたぞ?。」

と頭にたんこぶを作って泣き 鼻水を畳に垂らした 幼い塾生に言う。 嘘泣きだったのか

「え?!。」

っと素っ頓狂な声を出した。

「え・・・じゃあねえよ!馬鹿!。」

と隣に座った先輩が ぱん!と幼い子の頭を叩く。

「・・・よせ・・・・・総悟の家の向かいのおばちゃんは いつもはもっと多いって言っていた。」

隣を睨むと 監督生も黙った 多分皆彼経由で 洗濯を頼んでいたのだろう。


「トシ・・・・を呼べ・・・。」

と二人を稽古場に帰らせると すぐに トシがやって来た。

やはり彼も将来仕官を目指しているらしく 髪を伸ばし後ろで束ねている。


トシは15才 落ち着き多少落ち着きすぎている感が有って 極端に無口な子供だった。事情が有って道場の内弟子にした子だ。ゆくゆくは イサミ同様立派な剣士にするつもりだ。

今はイサミが道場でガキ達を束ね 教えているはずだ。

「・・・・・・・。」

障子戸をあけ ぺこりと頭を下げたまま座っている彼に

「・・・・・何かやったか・・・?。」

ときくと 

「いいえ・・・・。」

と畳から響いて来た。・・・いつもこうだ。


「・・・・・・総悟と言う子を・・・・前 街で庇ったな・・・・。俺が酒を買いに行ったら 総悟が逃げ お前は番当から板打ち食らっただろう・・・・?」

トシは黙っていた。

大人しくしているが暴れん坊な所が有る 今日も竹刀では到底付かない様な 大きな青あざが肩にみえ 手首も擦り傷だらけだった。

端正な顔なのに いつも怒っている・・・・・しかし。

「・・・・何がおかしい・・・・?。」

見慣れた顔、結んだ口角が微かに上がっていたので 田嶋は尋ねた。

トシの顔は少しだけ緩み


「・・・・・どこにでも 居るんですね・・・先生・・・・。」

育ちの良さが滲みでる様な 話し方と言葉使いだった。

「それはいい・・・・。俺が聞きたいのは 総悟の事だ・・・・・・故有って彼を探している。・・・・・・どこに潜り込んで居るか 知らんか?。」

ふとトシが 端正な顔でこちらを見る。

彼の母親の顔は知らないが さぞ美しかっただろう。

彼は外腹・・・・2号の子供だと言う話だ。


「・・・・・・。」

心配そうな顔。

「・・・・彼の姉御が ここの胴着を洗っていて倒れられてな・・・・・。俺が 洗ったんだ。」

というと、彼の顔にすっと赤みがさす。

「いや・・・・・倒れた事を 総悟に伝えたいのだ・・・。」

「は・・・。」

トシは自分が知っている事を田嶋に話すと 稽古場に帰って行った。

彼は 年の割にしっかりしすぎていて 仕切り屋だ。


また胴着の洗濯問題を 綱紀粛正しなければいいのだが・・・・。 

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おはじき遊び 七つ目

2014-09-16 | 紫 銀

あの総悟と やってしまった後

田嶋は 彼の事を調べまくった。

両親が死に 姉が総悟を育てていたが 病気になると家を売り払いこの長屋に引っ越してきた。

財産も ほとんどなかったが、残った金で何とか治療していた。 

それにも関わらず 姉はまたっく良く成らなかった。


そして弟は 夜の街に繰り出して稼いでいるのだ。その事を姉はしらない。

幼馴染のトシや数人は何をしているか知っていたようだが 彼らではどうのもならず ただ目をつぶっている・・・・・。

姉思いの弟と 弟思いの姉と評判だったからだ・・・・・・。

あれ以後 彼は田嶋から逃げ回っている。


ある暑い日の 真昼間・・・・

今日も弁当持参で 魚を釣った後 彼を探しまわっていた・・・・。

前を見るのも まぶしいくらいだ。 

遠くから 少年が川っぺリを ものすごい勢いで走って来る。

街に入る都橋 その場所で立っていた田嶋は 少年を見つけて

「おい・・・!。」

と呼び止めると 彼は慌てた様にこちらに向かって来た。

後を見ると 後ろから集団に追いかけられている。

追いかけている物は手に手に何かを持ち振り上げていた。


また盗みでもしたのだろうか・・・・。

彼は血相を変えて自分の下まで来ると 周りをくるっとまわる。

集団の怒声が近ずくと 彼は羽織の間に潜り 田嶋の背にしがみついた・・・・。


一団が橋を渡り あたりを見回して戻って来る。


街に渡って居ないのがばれた様だ。

彼らは口々に少年の悪口を言い とられた金の額を言いながら 返せと怒鳴っていた。


田嶋はぎゅっと背を掴む彼を 落ち着かせるようと黙っていた。すると

「田嶋様!・・・今ここにガキが走って来ませんでしたか?!。」

と男が聞いて来た。

「・・・・いいや。見てませんよ・・・。」

といい 腰に手を回す。

「そうですかい・・・・。」

と言うと 不審そうではあるが 他の者の所に行く。


「・・・・・・おい・・・・・謝るまで・・・・・追いかけられるぞ・・・。」

田嶋は小声で言うと 少年はギュッと背中を強く握り返してきた。


「俺が一緒に謝ってやるから・・・・。」

「・・・嫌だ。」

と彼が小声で呟く。


ぶつぶつ独り言を言う田嶋を不審に思った集団の一人が

彼を見つけられず 自分の所に来た。

「先生・・・・背中になんか・・・・・背負ってませんか?。」

と詰め寄った。

田嶋は 首を横にしながら


「今度は・・・大丈夫。守ってやるから・・・・。」

と、自分の背中を摩る。

集団も集まって来た。

「旦那ーー??。」

一人が羽織をめくりそうになるので・・・・・。


「・・・・・まあ待て待て・・・・。ちゃんと謝るから・・・・。」

当言って ポンポンと彼の脚を羽織の上から叩くと

彼は片足ずつ降りて来た。

彼は無表情に自分の近くに立つので しっかり肩を抱き


「・・・・・・この子は 私の道場に縁のある者ゆえ・・・私も一緒に 謝罪させてください。」

と言った。

「冗談じゃねえ!・・・いくら先生の頼みだって こう罪を重ねちゃ! 出す所に突き出さなきゃ・・・修まらねえよ!。」

と一人が言う。 集団も頷いた。

ぎゅうっと彼が自分の着物を握るのが 感じられた。


「皆の衆の道理は良く判って居るが・・・・そこを私に免じて許して下さい。 お金は私が必ず 返しますから・・・・・・・・・。」

と田嶋は集団に向かって 深深頭を下げた。

すると彼らは 不思議に田嶋の言う事を少し聞く気になり

「・・・田嶋先生が・・・・そう言うのは・・・・・。」

「先生が そうは言っても・・・・。」

と語気を緩める。

すかさず 田嶋も固まった少年の頭を優しく 下げる。


「・・・・・ごめんなさい・・・・。」

ついに少年が言ったので その集団は田嶋に金を返すともう一度言わせた後 許すと約束してくれた・・・・。


「これは 迷惑料と言っては何だが、私が釣って来たものなので・・・・。」

と片手に持っていた魚籠を手渡した。

大きな鯉が入っていたので 彼らは喜んで 魚屋に売ろうと言う話で盛り上がり 去って行った。

田嶋は 彼らが去った後もまだ頭を下げていた少年を

さっと脇を掴んで抱き上げる

「・・・わ・・・・。」

少年は逃げようと暴れたが、田嶋はそのまま頭の上に持ち上げると肩に座らせた。


「・・・・良く謝ったな・・・・偉いぞ・・・・。」

と言いながら 肩車で歩きだした。

田嶋は黙って肩車されている少年に向かって 話を続けたが彼は心を閉ざしていて 返事をする事は無かった。

自分に謝りも 礼も言わない少年に 

「・・・・飯食うか・・・?。」

と聞き 腰の剣の柄にぶら下げていた 包みを見せる。

その返事は 彼の腹の虫がぐううと 答えた。

「ははは・・・・。」

じっと見つめる彼の眼は 以前魚をやった彼の眼ではなく・・・・。


近くの河原に行くと 弁当の包みを開いて彼に見せた。

彼は自分から距離を取る様に離れて座っている。 

彼に 一つ握り飯を渡すと 黙々と食べ始めた。


「私は 鉄町の外れで 剣術道場をしている田嶋って言う者だ。・・・知ってるか・・・・?。」

「・・・・・。」

「・・・・・塾生の トシって知ってるだろう・・・?お前に話しかけているのを見た。」

「・・・・・。」

「お前が金を盗んだ酒屋の番頭に トシは殴られていたな?。」

と言うと 少年は

「・・・頼んでない・・・。」

といった。

田嶋はあきれて・・・・・


「そんなことしてたら・・・本当に・・・・。」

「・・・・・ろくな者に ならない・・・だろう?。」

と田嶋が言う前に彼が答え

飯を食べ終わったので 少年はゆっくり草むらから立ちあがった。

彼の子供らしさは どこにも見つからない・・・・

「・・・・・もう・・・・・ロクな者には なりたくない・・・。」

と呟く。 そのまま振り向かずに 彼は歩いて行った。

田嶋は変わってしまった 彼の背をずーっと眺めていた・・・・・。

まるで 自分が彼をろくな人名鑑から ふるい落としてしまった様な 

そんな気分になった。

その後 田嶋は彼の借金 集団の一人一人に返し 

ある決心をする。

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おはじき遊び 六つ目

2014-09-14 | 紫 銀

彼はのろのろと歩いて行った。


街の中の外れ 住宅地も山際に 

長屋街が有った。

夜も遅いのでその長屋にも周りにも 人気が全くない。


勝手口が両脇に有り 引き戸を開けると蹴上がりの板からすぐ二間の居間に続く様なごくありふれた 貧乏借家だった。

その長屋に入る為の門をくぐると彼は 奥迄続く一方向に延びる通路に入って行く。

両側に向かい合う様に玄関をいくつも通り過ぎ 

一番最後の家 洗い井戸近くの家に入って行く。

田嶋は 彼の家族が気になり過ぎて その家の前を通り過ぎ 井戸の向うの林に目を付け 登れそうな木を見つけた。

だがしかし家の中の様子を探ろうと 静かに玄関わきに立ち 中の声を聞く。


「・・・・・・・・ただいま 戻りました・・・・。」

と彼が言い 足を洗い桶で洗う音がする。

奥からごほごほと誰かが咳き込んだ。


「姉上・・・・・。」

と 彼は足を 洗うのをやめた。

「・・・・・・ぅご・・・・遅かった・・・わね。・・・」

また咳き込む、家人の咳は重そうに聞こえた。


「・・・・寝ててと 言ったのに・・・・。食事は 親方の所で済ませますから 寝てて・・・・姉上。」

その姉とやらを心配する声は彼なのだが 彼の声ではなく別人かと思うほど 穏やかだ・・・・・。


「・・・・今夜は 親方が少し多めに 払ってくれたんだ・・・・薬当分続けられるね。やっぱり続けてないと  食欲もなくなるし・・・・・。」

「・・・・・・・。」

小さな姉の声は聞こえなかった。

「・・・・・・うん・・・・寝るけど・・・・・水浴びてきます。・・・・・汗かいたから・・・・・。もう・・・・寝てて姉上。」

洗うと聞こえたので 田嶋は走って井戸の向こうの木に登った。


すると からからと表戸が開いて 中から少年が出て来た。

彼は 着替えを井戸脇に有る 台の上に置くと 

この寒い風が吹く中 着物を脱ぎ水を浴び出した。


ばしゃ・・・・・・。







「・・・ああ・・・・・ふっ!・・・・・・ううう・・・。」

田嶋が現代の自分の部屋に意識が 戻った時 


彼は総悟の物を

口に含み 舌で小さな口を嬲る。 

それで総悟がたまらず 声を上げた時だった。


後ろに着いた手が 所在なさげにつっぱり 総悟の起こした半身は 藍色の寝巻が半分肌蹴け

腰に吸いついている田嶋の動きによって 苦しそうに固まっていた。

もう片方の総悟の手は 田嶋の頭に有り 上下に動き 自分の物を嬲られるのをその手でも 感じていた。


「・・・・・あっ・・・・・ああ・・・・もう・・・・!。」

総悟が身を曲げ 田嶋の髪を強く握ると 彼は応じるように 深く沈む。

「・・・・ぁぁ・・・・・。」

声にならない悲鳴を上げると 田嶋の口の中に

彼の精液が溢れて来る。

それを舌を使って 丹念に舐め上げた。


やめてくれと 総悟の膝が田嶋の首を囲むように曲がり まだ細い総悟の体は布団に倒れた。


田嶋が目を開けると そこには濃くは無いが毛が生えていた。

それを愛でるように触れる。

曲げられた膝から下に・・・・・・手を這わせて行くと 足袋の中に足は消えていた。


足袋の凛とした張りが 清楚で 固い・・・・。


田嶋はまた総悟の萎えたそれを吸い込み 

柔らかな背後の袋を手で 揉みし抱くと 

彼の腰は浮き上がり 足袋の踵はきしむ。

踵の小ハゼがきつそうだったので 指で一つ二つ外すと 形の良いとがった踝が見えた。

田嶋はじっと眺めていると


「・・・・・・・・・・・なんで・・・・・・・。」

と 総悟が不思議そうに聞いた。

「・・・・・・・・・・・。」

田嶋が 少し微笑みながら上に戻る。 彼の体の上に半分だけ重なると 

総悟が目を閉じた。

・・・・・・その意味を理解はしていたのだが、

彼は 青年になった総悟の頬を指で触って誤魔化した。

ふん と総悟が鼻を鳴らして横を向くので 田嶋は 脇に体をずらした。





「・・・・・・覚えてるか・・・・?。」

「・・・・・。」

総悟は天井を見上げながら 頭の下に手を組んだ。

彼の透き通った瞳は当時のままだ。

田嶋は 総悟の上に広がった髪をいじくりながら

「・・・・・・・俺に・・・・良い声で鳴くって どんな声・・・って聞いたんだぞ?。」

呟くと


「はあ・・・・?覚えてねえし・・・。」

と総悟が答えた。

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おはじき遊び 五つ目

2014-09-10 | 紫 銀

今でも余り記憶が定かではないのだが・・・・・・・ 


暴れていたかもしれない。

自分が大人相手の様に 普通に力を使ったので 自然に抑え込んだのだろう。


覚えているのは・・・・

覚えているのは・・・・・

覚えているのは・・・・・・・・



「お師匠様・・・・?」


びくっと現代に戻り ふと前を見ると 総悟と名乗る青年が 自分の下に居る。

短い時間だったのだが・・・とてつもなく 長い感じがした。

「・・・・先生・・・・。」

と心配した彼が少し体を起こし 自分の肩を揺すっている。

溜息を吐くと 安心したように総悟が・・・・・・。

「もうボケ?・・・・・ですかねぇ・・・・。」

と言う。

グイっと・・・総悟を久しぶりに自分の胸に抱きとめ

そのまま倒れた。


「・・・・何故・・・・白足袋・・・・?。」

と田嶋が聞くと・・・・・

「・・・・・・ふふ・・・・・・好き・・・・でしょう?。」

と下から彼が答える。


もう一度総悟を眺めると 彼は 片腕は自分に脱がされていたが・・・・・・もう

あの時の・・・・・・幼い・・・・子と言う 面影はどこにもなかった。



胸筋から腹筋は、見事に絞り上げられ 女らしい要素は全く見られない。

男・・・・物のふくらみが 骨盤を横切る様に付けられた白い布の下にある。

夜目に青白く浮き上がった布の下にそっと手を入れると 細い紐の結び目が有った。


総悟の体が 少し浮き上がり 彼の口から漏れる。

「・・・ん・・・・。」

ぐいっとそれを引くと紐はほどけて 覆い隠していた布は・・・・・・・。





ひっくひっくと・・・・・・

泣けもせず・・・・・喉が引き攣っていた。

涙は一粒ずつ流れるのだが・・・・・ショックの為か 顔はびっくりしたまま固まっている。



いかがわしい船宿に ほぼ幼児を連れ込んで 力任せに襲ったのだ。

酔いも助けて大人の良心は どこかに消し飛んでいた。


彼の背中にめくりあげられた着物は 縛られた手や 帯をねじ込んだ口を覆い隠していた・・・・・・。

彼の体のダメージは、隠れていたが今まで繋がっていたので想像はつく それ以上に心におわせた傷は 想像するのも怖くなる。


事が終わり ひきつったまま動かない背中を 暫く眺めていた。

触れて分かった事だが、彼は思った以上にか弱かった・・・・。



近くに置いてあった 水飲みを取るとグラスに注ぎもせずそのまま飲む。

ごくごくと体内に入って行くと 自分と言う理性が少し戻って来る。


彼の頭の上に有った手首は まだ自分の紐で縛られていたので

その戒めを解こうと ゆっくり近寄った・・・・・。

・・・なぜ・・・そんなに細い腕なのか・・・・・。

夕べは固くしっかりしていた少年の腕がなぜ・・・・・か細くなったのか


縛って居た紐をほどくと みだれた着物の下にもうひとつほどけた物が見えた。

包帯だ 

盗みを繰り返したせいで 誰かに折檻されたのだろう その傷を隠すように包帯が巻かれたのだ。

それがほどけ今は 一周りも二周りも細い。


おまけに彼の背も 小さい・・・・。


恐怖に・・・・・

そっと彼の体をひっくり返してみると・・・・・・


「・・・・・お前・・・・・・・・。」

思わず声が 震えてしまった。


「お前・・・・・・・・どうして・・・・。」

とまた男が 愕然とその場に膝を付き 唾を何度も飲み込む。

口には 自分の黒い帯が大量に入り 

ゆっくり取ると 少年の呼吸は堰を切った乱れる。


呆然と 自分が抱いてしまった体が起き上がって来るのを眺めた。


少年は自分に背を向け膝を付き 着物を着ようとしていたが 肩が痛くて中々体に帯が回せない。後ろで帯を縛れず諦めると立ちあがった。

ゆっくりと自分の方に手を出す。


俺は財布を慌てて出すと 何も見ずに紙幣を手に取る。

「な・・・・何に・・・使うんだ?この・・・・この金に!・・・・・変えられる物が あるのか?!。」

そう半ば半狂乱な叫び声で言いながら 少年を見ると 

悔しそうに・・・・彼は・・・・

「金なんか・・・・き・・・ら・・いだ・・・。・・・・・・だけど・・・・・」

やっと答えた。

彼は 憎しみをこめるように俺から金を握り取ると 動きだす。

「まて・・・・!。」

彼が出て行くのを見ながら 自分の身なりを 急いで整えた。


その後の 記憶も余り定かではない・・・・・。


俺は彼をこのまま帰せないと 後を必死でおったが 

彼は煙の様に 消えてしまった。

船宿の通路を上から下まで探して見つからないと 彼が入れそうな部屋を一つずつ調べた。当然 事を見られた客ともみ合いになったが


それどころではない。

軽く彼らを 数人締めて静かにさせると 店の主人が用心棒を連れて来た。

用心棒は自分の姿を見ると 一歩引き 相手になりたくなさそうに固まる。

知った顔がいくつかあったのだ。

その彼らに 自分の連れの説明をし 探させると

 

もう宿にはどこにも居なかった・・・・・。


今度俺は 外に出て 川っぺりを小走りに走って探すと よたよたと ちいさな影が家路をに向かって歩いていた。


・・・・・誰かに またかどわかされたのではないか・・・・・・

・・・・・川に飛び込んだのではないか・・・・・

そう思っていた心が 静まり・・・・・


我に返った時は

自分には 彼を心配する

資格がないと 悟った時だ。


暗がりに動いて行く影に 消そうと思っても消せない夕べの光景が重なって来る。


「・・・うう・・・・。」

犯された体を返され 呻く彼の白い体には・・・・

折檻されたのか鞭うたれた腕に 赤いみみずばれが見えていた。

幼児の様にふくらむ腹。


そして 切り裂かれて流れた血と・・・・・。

産毛さえ生えていない性器。


「・・・・・・・。」

もう後悔の 言葉さえ発する事も出来ず 

俺は・・・・彼が帰る姿を遠くから眺めるだけだった。


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