ゆっくり近ずいて行く輛斗 彼は素直にしたがう。
せいが彼の肩に手を掛け 耳にその顔が近ずくのを我慢しているのか 助けを求める様にちらっと俺を見る。
少し胸が痛む。
髪の中から耳を掻き分けられもう一度 一貴(ひろし)を見たが せいが話し始めると輛斗は固まった。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
床を見て耳から入ってくる情報を頭で分解しているらしい・・・。
ふと ショックを受けたのか顔を上げ せいの顔を覗こうとして 彼に耳を引っ張られると
「・・・・いてっ・・・・・・。」
と呟いた。
輛斗はそのままゆっくり部屋の中に目線を泳がすと 一貴を見つける。
あの西山でさえ判らなかった事を せいなら判るのだろうか。
一貴は段々手が汗ばんで来た。
時々輛斗は首を振り 頷き。何に・・・?
と 堪え切れなくなると一貴は
「・・・ねえ・・・・。」
と二人に聞こうとしたが せいが一層輛斗の耳に顔を付けて二言三言喋っている。
「・・・・ホントに・・・?。」
と輛斗が せいに聞き返した。
せいは頷き返す。
なななな何を 教えたんだ・・・?
「・・・・何っすか?・・・何が ほんとって・・・なんの話し・・・?。」
絶対どう考えても 俺がって話だよな・・・。
「・・・・・ふふん・・・・。」
せいは何も言わず
やっと輛斗は自分の所に戻って来ると ぎゅっと腕を一貴に回して抱きついて来た。
「・・・俺 避けてたわけじゃないから・・・・。違うから・・・・な。」
そう言うと ガクッと床に膝を付いて一貴を見上げた。
「・・・!・・・・輛!・・・。」
「・・・・・俺を・・・・見下ろして見てたかったんだよね?。」
輛斗は笑ったまま とんでもない事を言った。
何のことやら理解不能!!、
やはり怒っているのではないか・・・?
せいはにやにやしながらゆっくりベッドに座り 組んだ脚に肘を付きこちらを眺めている。
「何言ってんだよ!・・立てよ!。」
そう言って輛斗の手を引っ張って見た時
彼は突然 知りたかった答えを言った。
「・・・・・・・俺・・・・背が伸びて・・・・嫌われると思ってたんだ。」
「は??・・・・何言ってんだよ!!・・・。」
「背が抜かされるの・・・・やだって言ってただろう?。」
えええ!!
「!!!・・・。」
ショック過ぎて声が出なかった。
「・・・脛の骨 削ってこようかと思ったんだ。」
きらきらした輛斗は一貴を見上げながら 微笑んで服の脇を掴んでいた。
「・・・にゅ・・・入院って・・・・・まさか・・・・。」
心配していた病気が・・・病気ではないと知って安心したが
もっと恐ろしさを感じる。輛斗なら絶対実行するからだ。
「おいおいおい・・・・。脛無くなっちゃうじゃん そんなことしたら・・・。」
呑気にせいは 輛斗の背後から近寄って笑っている。
一貴は全く笑えずに 引きつったまま立っていると 輛斗は一貴の背に腕を伸ばして ぐっと抱きしめると
「・・・・いっきの為なら・・・俺は いい・・・。」
と顔を一貴の体に埋めた。
「って・・・・・ば・・・・馬鹿・・野郎・・・・。」
一貴は膝から力が抜け がくっと床に付くと 輛斗の斬られずに済んだ脛を見つけ撫で始めた。
体の下に潜り込んで しっかりしがみ付いたままの輛斗を少し殴りつける。
一貴は輛斗を体から離そうとした。
「・・・いっき!・・・。」
輛斗は引き剥がされ一貴の首元にしがみ付き 少し二人はもみ合った
すると上から溜息が聞えてきた。
「ふう・・・・泣かしたな・・・・輛斗?。」
せいが言うと 輛斗は一貴の肩をじぶんから引き離す。
「ええ?!。」
一貴は横を向いて涙を何とかしようとしていたが それを輛斗に見られてしまう。
「ば・・・か・・・。」
一貴が言うと 輛斗は 本気で判らないらしく
「え?・・・あ・・・・ごめん!・・・・・いっき・・・なんで泣く?。」
一貴を覗き込んでいる。
せいは ぐっと口の中に押さえこんでいる一貴の 代弁をしてやった。
「お前が自分を大事にしないからだ・・・・。一貴に相談も無しに 脚斬るとか・・・あり得ないだろう。」
一貴は頷きながら涙を流した。
「でも!・・・嫌われたくなかったんだよ!やっと・・・・・・・仲良くなれたのに・・・・・・・・・女だって成形するじゃん!。」
輛斗は ぼろぼろと一貴の目から流れる涙に困りながら いいわけをする。
せいは・・・・
「胸膨らませるのと訳が違うんだぞ?!・・・判ってんのか?!・・・・そんな事一貴が したら お前はどお思うんだよ。」
「・・・・・・・・・・やだよ。」
輛斗はきっぱり言い切った。
「なら!・・・・一貴が どお思うかも判るだろう?。」
とせいが言うと 一貴は堪え切れず床に手をついて泣き伏せた。輛斗は為す術も無く 座り
「・・・ほら・・・。」
とせいに 窘められる。
「・・・・あーーあ・・・・・・どうすんだよ・・・・輛斗。」
そこまで言うと せいも笑いを堪える為に 口に手が必要になった。
後ろを向きながら口を押さえ
暫くしてから二人を見ると 蹲った一貴の背中を輛斗が正座して擦っている。
それをベッドに座り直しながら見ると せいの怒りは消えていた
いつもの通りに 戻ったような気分になる。
「・・・・・・・・・おい・・・・・。幼稚園コンビ。」
せいが呆れながら言うと 一貴は少し顔を上げ 輛斗はむすっとせいの方を見た。
「いいか?・・・・・・・・俺は西山さんにお前らの事を相談されたけど 今の答えは教えなかったんだ。・・・・・・・この事は 内緒だからな!」
二人は頷いた。そして
『でも 何で・・?。』
と仲良く二人が声に出すと お互いの顔を見・・・あかくなる。
「ふん・・・・・・輛斗のは・・・何で答えが判ったか?・・・だろ?。」
せいは 得意げに少し笑いながら 輛斗を見つめると
輛斗が頷く。
「・・・・女装させたのは 西山さんだろう?・・・・・一貴は・・・・・女の子見たいな 輛斗に落ちた。・・・・・男だったら抱きしめた時・・・そりゃ 上からキスしたいじゃないか。・・・・・・だからお前が背が伸びたのを見た時に 俺はすぐ気が付いたよ。・・・・ひと悶着有りそうだって・・・。」
一貴はあわててせいと輛斗の方を向いて 言い訳を開始した。
「でも俺 輛斗を女だなんて 思った事ないし!女だったらいいなんて思った事も・・・あの時だって・・・。」
せいは少し怒ったように一貴を睨み
「一ミリでもそんな事思ってると感じたら 俺が ぶん殴ってるよ!・・・・・・・お前はバイトじゃ受け専だったんだから・・・・・・リバース可能だろ?・・・・・・女がどうとかなんて口にすんじゃねえ!・・・・輛斗は普通の人間だっただろ?お前が好きになったのは ただの人間ってだけだ。特別な事でも何でもない。」
とせいが 少しいらついたように肘に乗せた顎を振って 目を伏せた。
一貴は・・・バイト先でせいから聞いた説教を聞くと 素直に反省し座りなおし た
なぜか安堵する。
「・・・・ハイ。・・・・すいません。」
素直に謝る一貴に
「・・・・・・一貴の なんで?ってのは・・・・なんで 西山さんに黙ってるか?だろう・・・?。」
そうなのかと輛斗が一貴を見ると 一貴は頷いた。
するとせいは考え込む。
答える為に 悩んでいるようだった・・・・。
暫くしてから・・・・せいが。
「・・・・・・・・褒美が・・・・ほしい・・・。」
と 誰に言うともなくせいは 呟く
そしてゆっくり立ちあがり
帰り支度を始める。
「・・・・・・・いっき・・・金の事・・・?。」
と 一貴が答えないので 輛斗は待ち切れずに呟くと
違う違う金のはずが無いと 一貴は首をふり せいに睨まれる。
輛斗はフリーズしたように固まった。
帰り際に 悩み続ける二人をちらっと見ると
せいは ホテルの部屋を出ながら
「・・・・店に・・・・・来いと・・言っといてくれ。・・・・店に・・・・って。」
と 帰って行ってしまった。
それを聞いた一貴は びっくりしたように 顔を上げる。
せいは・・・・もしかしたら・・・・・。
「・・・なあ 誰に店に来いって言うの・・・?。だれの店に?・・・誰が・・・。」
輛斗は判らない事を一貴に聞きながら 腕を掴んだ。
「俺は せいに世話になったんだろう?・・・・今度は俺がちゃんとお礼したい いっき。」
そういうと 茫然とせいが出て行ったドアを見ている一貴の 肩を引きもどす。
引き戻された一貴は
「・・・うわ!まじやばい・・・!。せいが 本気になるとこ初めて見ちゃった・・・。」
と一貴が呟く。
輛斗は全く話が判らず ドアと一貴を見比べた。
「何?・・・俺が来る前に・・・何か?。」
焦る輛斗をなだめる様に見つめると 一貴は 輛斗の唇を引き寄せながら話しかけた。
「せいはね・・・・・俺みたいに家出してあの店に来た。その時にもう 一目惚れした相手がいたんだよ。そいつがやくざで・・・んで あの店に来てたんだ。その当時 店一番人気のるか って子がいて そいつが名前の割りにすごい悪い奴だったんだ。」
輛斗は 店 と言うのが一貴のバイト先で有ると 語り始めた目で判る。
ゆっくり二人でベッドに近ずきながら 一貴のキスを返すと
その体が恋しくなった。
「・・・・人の客は取るは 金はくすねるわ・・・手癖の悪い奴だった。るかをせいは相手にしなかったんだけど るかはせいが好きだったらしい。・・・・でもせいは 自分の一目ぼれのやくざと付き合い出した。で、悪いるかも せいの彼氏とつるみだした。・・・・・・結局 せいにるかの浮気がばれて 修羅場になった・・・・。」
「・・・・彼氏を殺した?・・・・それとも るか 殺した?・・・・せい・・・。」
ばたりと ベッドに倒れ込みながら輛斗が言うと 一貴はびっくりして
「せいが・・・殺したんじゃねえよ・・・。病気が殺したんだよ。」
「・・・・?。」
一貴が続いて隣に寝そべると輛斗が 彼を見る。
「そのやくざは 本当にせいが好きだったんだ・・・・。だから戻って来て 二人は同棲した。・・・・・それで平和になったのかと思ったんだよ。・・・・・・・・でも その綺麗だったるかが またぼろぼろになって店に帰って来て・・・・・・・・・せいは 優しいから・・・・許したんだよ。」
「・・・・そんな奴 信用できないじゃん。」
答える輛斗を
上から覗くように移動して一貴は
「・・・・・・・・もし・・・・セルゲイが ボロボロになって ここに帰ってきたらどうする?。」
と聞いて見た。
「ぇ・・・・・・。」
輛斗は見事に固まった。
一貴は輛斗の答えも聞かずに そのまま許すように笑い。
「・・・・・・・ふ・・・・・・ここは日本だから・・・・。近親相姦は やめてもらうがな・・・。」
とおでこにキスをして 彼に被さった。
輛斗は困ったように目を閉じる
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・せいは・・・・三人でずっと暮らしたんだよ。るかが・・・・エイズに掛かってて来てせいの彼氏相手に 病気写しても・・・・ずっと三人で暮らして 二人を支えたんだ。」
「・・・・・・・・・・。」
体をあげると、輛斗は一貴を見つめていた。
「・・・・・・二人が死んだって聞いてから・・・・・・・随分経つけど せいは 全く変わらない。・・・・・・だから せいには ちゃんとした人好きになって欲しいんだ。・・・みんなが そう思ってる。」
「で・・・・・・・・・西山・・・・・・・・?。」
輛斗は少し悩むような顔をして一貴に聞き直した。
一貴が頷くと輛斗は 息をのみ込んだ後
「なら・・・・ちゃんと付き合えって俺が 首締めてやるよ。・・・・あいつの!。」
と思い立ったように答えるが 一貴は
「駄目駄目駄目!! それが駄目なんだって!!。西山さん輛斗の事めちゃくちゃ気に掛けてるんだから!お前が言ったら せい ぼこられるって!。」
「なら!!殺す!。」
と決めながら輛斗が答えると
「だから!!・・・ないよ!・・・それ一番無いからね!!。」
と、一貴は焦って輛斗を掴み 頼むと言う様にゆすった。
輛斗は悩んだ。
「せいは・・・自分を認めてくれればいいんだって。それ以外は 余計な事だろ?・・・・二人を見守るだけで良いんだよ俺達は。・・・・頼むぞ輛斗。」
「・・・・うん。」
まだ納得していない輛斗を抱きしめながら 一貴は
「・・・・・・うまく いくといいな。」
とつぶやいた。
久しぶりに 暖かい物に手が当たったような気がする・・・。
手を広げ掴むと簡単に形が変わり その肉は 血管から流された血でどくどくと動く。
「・・・ああ・・・。」
声を上げた女を見ると 掴んだ女の胸はゆらゆらと自分の手の中で揺れていた。上に上げられた腕は細く白く ・・・・・
細すぎる骨に恐怖さえ感じる。
やっと正上位で接合し 胸に手を当てて見ると ぐやぐやして崩れてしまいそうで 手が離せなくなった・・・。少し体で動いて見ると
胸から延びた首は少しずつ顎を上げ 尖った顎の裏が見え始める。
もう・・・感じてしまう物なのか
いつも そう思う。
女の肉の匂いがした・・・・。
西山は 横に広がった女の足を抱きしめる様に自分の方に寄せ集めると それに唇を近ずけながら匂いを嗅いだ。
肉のハリと 匂いですぐにまた 死臭に近い脂の匂いを思い出す 酸化した脂が 舐めても居ないのに上顎に張り付くような感覚・・・・。
「はあ・・・・・はあ・・・・。」
ぐいっと乗り出す様に 更に深く女に入り動く・・・・
ぐしゅっと・・・・飛び散った脂肪と血が混じり合う匂いを 思いだした。
女は・・・女の匂いが 血液に近いのだ・・・・。
それが自分をこんなに駆り立て 肉欲にして晴らそうと させている・・・・・。
「ああ!・・・・・はうう・・・・。あああっ・・・。」
揺れる女の胸が淫美に 笑う様に 踊る。
手で胸の動きを止め ピンクになった肉の先に 舌を付けると女の体は ぐにゃぐにゃと悶え
「あん!・・・いや・・・・。何やってる人なの?すごい筋肉質な・・・。」
そう言って女が自分を観察し脚を絡めて来て 腕を首に巻いた。
西山は その腕をすぐさまほどき
「・・・・体に 腕を廻すな・・・・。・・・・両手を掛けないでくれ・・・。」
取った腕をほどきながら女を見ると
女はびっくりして怪訝そうな顔をする。
西山は人懐っこそうに笑ってから 目を閉じて女の唇に近ずくと女は許したように 付けた睫毛を閉じて舐めてくれた。
「いい・・・・・・ああぁ・・・・。」
そう言いながら付けた爪を伸ばし 西山の首にそっと伸ばす。
もう一方の腕は折りたたむように西山の腕の中に入れた。
・・・大きめのおっぱいが見えなくなると少し 西山が不満そうな顔をする 女はご満悦そうに 西山の唇をついばんだ。
どんなキスをするのかと 合わせて見ると 手ごたえのない頬の先に唇が有り ぬるぬるする唇に 舌を少しだけいれる。
覚悟して舌を入れると 薄い舌がひらひらと・・・。
こんなものか。
つまらないので どんどんと動くと 女は嬉しそうに 首を引っかいた。
楽しい・・・?
そう男の声で聞かれた・・・のは・・・・・?
シャワーを浴びながら 再び聞いた声に ドキッとして目を開けると
もうもうと湯気が立ち込めていた。
体を洗いタオルを巻いて出て行くと 女はベッドに倒れたままだった。
死んではいない。
ゆっくりベッドに座って髪を触って見ると 絡みつく長さ。
「もう・・・・・へとへと・・・・。」
と女が 眠そうに言い 腕を掴んだ。
安らかな女の顔を見て それは・・・・・嫌いではないと感じる。
ただ・・・・・
「・・・・・・・少し休んで行くと良い・・・・・。」
そう言って 頬を撫で 女の目を見つめてやると 安心したのか女は目を閉じた。
「・・・・・。」
西山は静かに帰り仕度を始めると 女がまた声を掛けて来た。
「また 電話してくれる・・・?。」
「・・・ああ・・・またな・・。」
そう言いながら 名前も覚えてないのに・・・・?
と心の中で呟いて
笑った。
外の街はうるさい
どこでそんなに音がするのだろうかと見る
車が 信号待ちから解放されて 線から出る所だった。
歩きだす靴の音。がやがやとうるさい大学生。
スカートの短い女子高校生の 態度さえうるさい。今抱いて来た女と変わらない足が目に付いて いらいらさせる。
出さなきゃ可愛くも見えるのに 彼女たちは武器を出し挑発するから 愛せないのかもしれない。
こんな雑踏の中でさえ煙草も吸えず 隠れながら暮らしているようで 嫌になるのだが輛斗を選んだ時から 仕方のない事になった。
血を流しながら 兄を殺す為池に 行くと淡々と答える・・・・・。
スノーモービルが用意され ライフルを抱えた俺が しゃがんで輛斗に
「行けるか?。」
と聞くと
「ああ・・。」
とだけ答えた。
その時 兄と二人で 池の氷を割って飛び込んでしまう映像が浮かんで仕方がない。
値踏みするように覗いてしまったが 仕方なく起ちあがり 三人の仲間の所に戻った。
我々はお互いにライフルを持ち 殺す相手を眺めていた。
「・・・・・俺に やらせてくれ・・・。」
西山が二人に言うと 納得できないのか煙草の煙を西山に吹きかけてくる。
「・・・・・。」
「・・・・・・お前ユーリを・・・ずっと 女だと思ってたよな。・・・・・・惚れてる?。」
「・・・ばかな・・・。」
笑って見たが 二人の笑い方は 西山の笑い方とは違っていた。
「・・・・・・・・一発だ・・・・・それでセルゲイを仕留められなければ ユーリ毎仕留めるからな・・・・。」
二人が言い 西山も了承した。
「四時だ・・・・・。」
腕に巻いた時計を見ると 四時を過ぎている。
仕損じた輛斗に餌をやる時間だった。
ゆっくり歩き出すと すぐスーツのポケットに手を入れてしまう。
らしくないのでポケットから手を出し歩き 溜息を付くと駅が近ずいて来た。
輛斗の部屋のカードキーを使い入ろうとすると すっと目の前に包丁が突き出されている。一瞬は入る前に確認するので それは避けられたが・・・・
「輛斗様・・・・・・・何か 有りました?。」
と声を掛ける。
と 包丁はすっと下がり ドアは開いた。
西山が見ると 輛斗は包丁にキスするように唇に当て笑っていた。
「何か・・・・・良いこと・・・?。」
ポンと包丁を投げあげて回転させると 落ちてくる所を掴み また投げながら廊下を進んで行く。
西山は ざわざわと自分の中のアドレナリンが
血流を増やすのを感じる。
窮屈なネクタイを取り荷物を玄関に置くと 輛斗から距離を取り付いて行った。
一貴は・・・・・・。
解体でもされたか?輛斗と言うより ユーリにだが
それがユーリの本職 そう言う本能を持っていないと祈りたいが・・・・いつやってしまってもおかしくない・・・・。
「良い事・・・?そんな事無いって判ってるだろう・・・?。」
いつもより饒舌な輛斗に 恐怖さえ感じる。
「何故 です?・・・。」
「なぜって・・・?。」
輛斗は投げていた包丁を見ずに そのまま下に落とす。
さすがに 輛斗の脚を見ると カーペットに少し刺さってから包丁ははねた。
「お前が・・・泣かせた・・・から。」