夜中の紫

腐女子向け 男同士の恋愛ですのでご興味のある方、男でも女でも 大人の方のみご覧下さい。ちょっと忙しいので時々お休みします

38 星座の中に

2013-01-18 | 年下

バイトに行っても自分を慰めているだけだと 思い知ると 行く所が無くなった。
知り合いと飲んで見るのもいいが 今更カモ扱いされたくもないので・・・・・・。

店に行く。


いつものように普通をこなしていると 三日目に その

いつもを試す相手が来た。

ガラスのコップは一個一個手で磨く。
腰から下のエプロンに綿の布巾を入れておく。
あいた時間に 片手に手袋を付けながらカットグラスをそれで磨きだした。

研ぐように・・・・切れ込んだガラスの隅々まで拭きあげると カウンターを照らしている柔らかいライトに透かして見る。

ゆっくり回すと どこにも汚れが無い。

仕方なく棚に置き 次を取る。

「・・・・・・それ 使うの・・・・悪いなぁ・・・・。」

曲がったカウンターの端に客の男が座っていて オリーブを一つ口に入れる。


「そんな事・・・無いですよ。・・・・使ってもらう為に・・・・みがいてるんですから・・・。」

と 少しだけ笑ってガラスを置くと その客は

「今年は暑過ぎて・・・食べ物がうまく無いね・・・・。」

とまた オリーブを口に入れると
せいは

「・・・・・秋にはおいしい物でてきますよ・・・。」

と慰めた。

「たとえば・・・?。」

「そうだなー。梨は 今年甘かったらしいし・・・クリも甘いですよ。イモ類もいいんじゃないかな・・・。」

と 思い出すよに言う。


「そうだよなー。君の所は 元客が仕入れしてくれるんだって・・・?。」

と覗きこんだ。

「・・・・・なぜか 東京が嫌になって田舎に帰ると 畑をし出すんですよね、皆。・・・だから今・・・・困ってるのは 酒ぐらいですかね・・・。」

と客の後ろの棚を見る。
その時 助手の女の子が やって来てせいの前を通ると客の前に ちょっとしたつまみを出した。

助手はすっと消えるように奥に引っ込み

「・・・ああ・・・それ食べて見て下さいよ・・・。ちょっと 土佐煮を作ってるので 途中の・・・・・。」

とせいが言いながら ふと入口の所を見ると扉の前に 西山が立っていた。


「・・・・いらっしゃい・・・。」

その客から少し離れた所に招いて座らせると 少し微笑み 紙のコースターを置く。


「・・・何に・・・・?。」

さらっと聞くと 指を2本だす。

「バーボン・・・・・・?。」

と聞くと 彼は声には出さなかったが バーボン ロック と口が動いたので 自分の後ろに有る高い所の棚から酒を取る。
氷をピックで少し整えると 手早くカウンターの上で琥珀色の液体を注ぎ コースターに載せる。

客が食事をするときは少し明るくする照明 
ゆっくり落として行くと ぼんやりと西山の所だけ暗くなった。

せいは ごゆっくり と囁くと  元居た客の方に寄り さっき料理を出した客に話しかけた・・・・・。


さっきの続きの・・・・秋の美味い物の
話だった・・・・・。 

 

 

 

 

室内で走った訳でもないのだが はあはあと呼吸も早く胸が上下して 
苦しそうな一貴がベッドに寝そべると

輛斗がその口を手でふさぎ 押し倒した。
まだ汗が流れぬるぬるする体を 二人で違う場所を抱き寄せながら 無心に貪っていると 一貴が苦しくなったのか また降参するように倒れ ベッドに広がった。
はあはあと・・・・苦しそうな体の上で 諦めたのか休むように

輛斗も乗っかり 息を整えた。

少し経つと落ち着き 鼻歌が一貴の胸に響く。

輛斗が歌っているようだった・・・・。


「んー~~・・ん~~・・・んーんんーー。」

何の曲だかは判らないが 
息継ぎしながら んーんー言っている輛斗が 可笑しく 
その肩を撫で始めると 輛斗は嬉しそうに一貴に身を寄せた。

輛斗は意識しないで指を見ているだけなのだろうが・・・その動く指が自分の肌に当たって・・・・非常にくすぐったい。

その場所から 震えてしまいそうだ・・・・・・。

「・・・・何歌ってんの・・・。」

一貴が聞くと 輛斗は微かに首を振って 何でもないと言う。

歌なんて 知らない・・・・・

と彼から聞いた事が有ったので 一貴は質問をそのままにする。
それでも 鼻歌は続き くすぐったさも
続いた。


我慢するように 違う事を考えると
・・・・さっき輛斗の喘いであいた口の中に 指を入れた事を思い出した。
何度も

「・・・っっ貴・・・・・・・・ぁぁ・・・い・・・・っ・・き・・・。」

と独特のねっとりした声で呼ぶので 彼の上で動きながら口もふさいだのだ。

輛斗は嬉しそうに手を掴むみ、貪るように舐め出した。
親指を 代わり にして一貴にしたい事をして見せる。壊れそうな柔らかい口腔は体内を思わせ 舌でぴったりと奥まで吸われると 感じ過ぎて耐えるのがきつくなった。

「・・・・く・・・・。」

見てしまうと駄目だと 輛斗にしている事 に集中しようとするのだが 手は歯にかまれ 舌が指の股に回る。
輛斗の頬と鼻の先に指が当たり 顔を掴む様に包むと 

輛斗の産毛がじんわりと暖かさを増し 体が喜んでいる事を しる。


「輛斗!・・・・。」

上から求める様 瞳に近ずくと 輛斗の瞳が潤って居て嬉しい。
すぐに彼の腕に首は包まれ 唇を合わせた・・・・・。




考え事をしていたのがばれたのか
輛斗は一貴をくすぐったがらせようと その指を わざと鎖骨に触れるか触れないかの所で動かしていた。

いたずらに気付くと 一貴は輛斗を見る。片目しか見えなかったが・・・・
子供の邪気を灯した目で 彼は見つめていた。

自分では気が付いていないのだろうが 

彼は 喉の奥を鳴らす様に鼻声で笑っている・・・・・。

その嬉しそうな姿に 一貴はかなり感動していたのだが それを隠して耐える。


耐える・・・が・・・・耐えきれずに


「・・・ッ!!・・・くすぐってェよ・・・・・。輛斗・・・。」

と半分笑いながら肩をすくめた。 

輛斗は満面の笑みを浮かべて喜んだ。
しっかり体の下に腕を廻し しがみつくと 泣いているのかとさえ思う 潤んだ瞳で 見つめてくるのだ。


もう21歳か?とか、自分より年下かもしれない
等というレベルでは無く

輛斗は七,八歳の 子供にしか見えなかった・・・・・・。


小さな顎と唇 更に大きくなった瞳と睫毛 さらさらと顔に掛かる髪を撫でながら 眺めると 輛斗は 子供の時に こんな風にじゃれた事無かったのかもしれないなと  思った。


二人で抱き合っていたが 体の粘着力が増したような気がしたので 風呂に入る事にする。
一貴は輛斗の体を持ち上げると 軽くキスをして 風呂に入ろうと言う。

「・・・・うん・・・。」

頷く輛斗を見ながら 立ちあがり腕を引っ張った・・・・。

重い・・・・。もう一度引っ張ると 輛斗は動かず


「・・・・ふろ・・・。」

と言って両手で引っ張るが それでも輛斗はベッドに座ったまま・・・。

「・・・・?。」

いく気が無いと思って居なかったので 不思議な顔をすると 輛斗が笑ったまま

「先 入ってて・・・・。」

という。

「だめだよ・・・・・一緒に行こうぜ。・・・連れてくから・・・。」

一貴がだだっ子を引っ張る

「・・・・・・いい って・・・。」

と輛斗は 抵抗を見せた。

「・・え?・・・何で・・・?。一緒に・・・・・・・・・この頃入って無いじゃん・・・。」

「・・・・う・・うん。」

と少し焦った輛斗が返事をした。


「・・・・俺と入るの・・・・嫌なの・・・・か・・・?。」

「ちがうよ!・・・・ちょっと腰 痛いから・・・・先に行って欲しい・・・・だけ。」

「・・・・・ああ・・・・・・・そうか・・・・・・・ごめん。」

と 一貴は 反省し謝りのキスをして 風呂に行く。


一貴が入った後
輛斗が風呂に入り 一貴が寝ているベッドに行くと 先に睡魔に襲われたのか釈然としなかった為か 一貴は突っ伏して寝ていた。

輛斗は 起す理由を何も思いつかず 無理やり起こす訳にもいかず

ベッドの一貴の隣に並ぶのだが・・・・・ 

一人さっきの幸せが恋しくなり唇を噛む。

そのままふて寝すると・・・・・・・






彼は

次の日 不機嫌になった・・・・。

相当に。


一貴の居なくなった家の中を かたずける為に
西山が入って来ると 輛斗の気配に怒りを感じた。


テーブルに食事を並べるのだが 一切見もせず 頭に手をあて コーヒーの入ったカップをじっと眺めている。

かちゃかちゃとスプーンでソーサーの周りをなぞる様にいじくっているが・・・・・それが全く無意識らしい。


一時間たっても それが続いていたので 西山は覚悟して


「もう・・・・良いですか・・・。」

と聞くとそのスプーンが 壁に刺さるスピードで 自分の顔付近に投げつけられた。
予測していたのでそれをかわし 西山が輛斗を見ると
彼は外を眺める様に 膝を抱え出した。

取りあえず 食事をかたずけてもいいのだと思い 無言で下げると


輛斗はソファーに移動した。


こう言う時に・・・・
いつか 洗濯物を黙って畳んでいると 

大きな包丁が突然それに突き刺さった事が有る。
テーブルにささった包丁は 抜けないのでそのまま処分した。


という訳で 洗い物も輛斗の了解無しには出来ない 
そのタイミングを伺うしかない・・・・。


にこにこ笑って居ても 何を考えてるのか予想のむずかしい輛斗に手を焼かされる。


「・・・・・輛斗様のお部屋を・・・・・かたずけたいのですが・・・・。」


とだいぶ時間も経って落ち着いた頃に聞いて見たが 輛斗はいらついたように舌を鳴らすだけ。


あまり刺激すると 飛びかかって来るかも知れないので 時間をまた見計らってから


「一貴様が・・・・・・部屋が綺麗になってると・・・・喜ぶので・・・・。」


と 西山がそっと言う。



輛斗は 一貴 と言う言葉を聞いて 目がきょろきょろする。


「かたずけますか・・・?。」


とまた 静かに聞く。

輛斗は 今度は素直に頷いた・・・・。




輛斗はぼーっとしながら ソファーで胸を掴んでいる・・・・・。
きっと 一貴の事を考えて ドキドキでもしているんだろうが 西山はそれで自分に怒りが向けられる前に 色々と済ませなければならない。


洗濯と掃除を済ませ・・・・食事のメニューを聞きだすのだ・・・。というより


一貴が・・・・・・何が食べたいかなのだが・・・・・単純に一貴に聞けば済む話なのだが 輛斗の口から言わせないと 輛斗が喰わないので 一貴と一緒に
何なら食べれるのかを聞く。

夕方になると そわそわし出して 怒りっぽくなる前に・・・・・・終えなければ。


と思っていた
のに 今日は 声を掛ける事もままならない。


昨夜・・・・考えたくもないが 何が有ったらしい・・・・。
輛斗の怒りの具合を 押し測ると 


西山は一貴にメールした。







「・・・・それで・・・・?。」

と  カウンターの向こうからせいが聞く

その日を何とか乗り切り 西山は せいの店には入って来た。
いつものようにげっそりしながらバーボンを飲み せいに 相談に来たのだ。

一杯飲んで やっと せいが質問してくれたので 一日の事を話すと せいが少しうんざりしたように西山に聞いたのだ。


「判るわけ無い・・・・。なんで 輛斗が一貴と一緒に風呂に入らなかったのか・・・・・・なんて 考えたくも無い・・・。」

西山は肩で溜息を付くと 両手で頭を抱えながら答えた。

せいは西山の 黒いシャツから見える首の後ろを眺めた。
ガッチリした肩とカウンターに着いた肘に目が行く。



「・・・・ふふ・・・・ざまあみろだね・・・・。」

少し嬉しそうにせいが言い 彼も酒を飲んだ。
その文句を訊いたのか 上目ずかいに顔を上げ睨むと 西山は自分の酒を飲む。
西山の怒りの視線が 嬉しく 
せいは やはり諦めきれていないのかと 自分を心の中で叱る。


「何か・・・・・・・・・思い・・・付かないか・・・・?。」

西山は 困ったようにせいに答えを求めた。


「・・・・・・。」

答えてやらなくてもいいのだが・・・・・今は 自分を好き勝手にした相手では無く 客なので
考える。


あれから何度か店に来た・・・・・。
最初は口もきかなかったのだが 一貴が世話になっているし・・・・・・店に来る女の子が彼にぞっこんで 彼女たちも頻繁に来るようになった。


いずれ 彼は彼女たちに出会うかもしれない・・・・・そして・・・・・。
ノーマルに 西山は彼女たちと遊ぶかもしれない 
でも、 彼女たちには自分と同じような事が出来ないので 遊ばないかもしれない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

せいは もやもやを 彼と一緒に追いだしたくて


「・・・・・何かこの頃・・・変わった事無い?。」

「・・・・?。」

「・・・・輛斗が 一貴と一緒に居ると 困る様な事だよ・・・。」

と真面目に相談にのりだした。


「え・・・・・一貴か?。」

「・・・・輛斗だろ・・・?一貴が夫婦みたいにSEXしてて 困る訳は無い。・・・・輛斗が 困ってんだろう?・・・・・・一緒に風呂に入ると・・・・・・?・・・臭いとか・・・。」

せいがカウンターを廻って西山の隣に座ると 彼は首を傾げた。

「・・・くせえだろ・・・ぁんだけ籠ってやれば・・・・。」

と西山は 自分が掃除して来た乱れたきった部屋を思い出して言う。


「・・・それが嫌とか?・・・でもお互い様かぁ・・・。」

何かを 思いだそうとするせい。

「・・・・・それに 輛斗は・・・汗臭い物・・・・大好きだぞ・・・・。一貴のなら なおさら・・・・。」

西山が酒を飲みながら 答えると

「じゃあ・・・何?・・・・・何かが 変わっちゃうのかな・・・SEX・・・で。」


せいが 西山を見ながら聞いた。



「・・・・・輛斗が 変わって・・・・・一貴に知られて嫌な事・・・・?。刺青は 見せたしな・・・・・。」

刺青を思い出す。 しかしそれ以外では 思いもつかず首を振って 西山は酒を飲んだ・・・・。


せいが考えると・・・・・・少し前。



車いすで輛斗が来たのを 思い出し 次に 快気祝いでソファーで輛斗が
必死にバイト仲間から隠れる様に 一貴の体に潜り込んでいた事を思い出した。

隠れているようで 隠れて居なかったので 面白かったのだ。

しかし・・・・・輛斗がその事を気にしているとしたら・・・・・・。



「・・・・・ん!!・・・・。」

そう言うせいが 突然閃いたように 西山には見えた。

「・・・判ったのか?。」

西山がひじから頭を離してせいを見ると 
せいは西山を見る。

「・・・・・・。」

「・・・・・何か判ったんだろ?・・・教えろよ・・・・。」

と西山が聞くと せいは 酒を飲み誤魔化そうとした。

教えろ教えろと西山が詰め寄ってくるので 

条件が有ると せいが言う。


「条件?・・・・何だよそれ・・・。」

西山は少し警戒したように 引いて条件を聞く。

その条件は 少し

「条件て言うより お願いだよ・・・。」

とせいは言った。

「・・・付き合えとか 言う話・・・。」

西山が予防線を張ろうとすると それを遮る様にせいが

「違う・・・・。もうここには 来ないで欲しいって 言う事。」

と静かに言った。

「・・・・・・・。」
すこし 西山には ショックだった。

 

 

もうここには 来ないで 欲しい。

西山は頭の中はもっとも簡単な願いなのに

了解する事が出来ない状態になった。


「・・・・・輛斗の問題・・・考えてる事・・・・・・・・・・知りたい・・・・なら・・・・・。」

せいが酒のグラスを置きながら 静かに言う。



西山は自分の隣に来たせいを どこかで勘違いしたようだ。
その途端に 重苦しく・・・・・
体が固まった。 

YES と
まだ言えない。



「いい?・・・・言うよ・・。」

「いや・・・・・そんな・・・・・・・難しい話じゃないんだろ・・・?。」

と西山が遮る。

「・・・・・・・・・輛斗・・・・・単純な子だよ・・・・見てれば 判る 判りやすいほうさ・・・・。」

せいが言っている間に 西山は酒を飲みほし 手にポケットを突っ込んだ。

そして札を何枚か出すと椅子から降り・・・・・


「何・・・・?・・・帰るの・・・・?。」

「・・・・ああ。」

と 勝手に入口に歩きだす。


せいは あっけにとられ・・・・



「またね・・・。」

と声を掛ける。 

西山は振り返えらず そのまま出て行った。







その後

暫く 西山は店にも現れず。
暑い日は続き・・・・・・ 
例年通り いきなり涼しくなって 秋めいてくると
せいは 諦めた・・・・・。



思おうとした。
実際に事故みたいな 始まりだったのだ。
ノーマルだと言う男にちょっかい出してしまっただけの事。
自分に非が有り 
もう来るなと言っただけの事。

よくある 些細な行き違いで 忘れる方が身のためだ・・・・。

自分には かつて愛し合った相手がいた それだけでも軌跡なのだ
もうそれでいい・・・・・。


何ごとも無かったように 秋の栗を剥き 紅葉を皿に引き 彩の戻った食卓を客と楽しんだ。

客も食べたい物をリクエストし せいの懐も 仕事も順調。

そんな時・・・・・

バイト先からメールが入り 客から指名が入った。



相手の名前が書きこまれていないが 事務所に確認すると 絶対に大丈夫な相手だそうだ。

断っても いつならいいのかと聞いてくるので 会って済ませる事にした・・・。


最高級ではないが バイトで良く使うホテルに入って行くと

事務所で指定された部屋のカードキーを手に入れ 部屋に行く。



もう新しい客を開拓しようと思わない それを事務所のマネージャーは良く知っているはず 
だから 今日の客はどこかであった客なのだろう・・・・・。

部屋に入ると 

先に来ていてもおかしくないはずなのに 客が来ない・・・・。

もしかして 西山が・・・・・隠れているのか 
 

部屋のど真ん中で立ちながら ドキドキし相手を待つ。

「・・・・・ふー・・・。」

息抜きをするようにジャケットを脱いで ベッドに座ると辺りを見回し・・・・。

ん?・・・・・ バスルームが少し開いている事にきずく。

「・・・・・・・・・・・・誰?・・。」

とそこに居るであろう誰かを 呼んで見ると 中で人がびっくりして物音を立てた。


嫌な予感がして 自然と顔が険しくなる。暫く睨んでいると そっと扉があいて中から・・・・・・


「・・・・・!・・・・お前・・・。」

ひろしが出て来たので 

せいは 睨み。
一貴はそのまま膝を付いて 頭を深く下げ廊下に土下座した。


「・・・・・・・もうお前とは 縁切りだ!。・・・・ いい度胸じゃねぇか・・・・。」

そういってせいは ジャケットを持って立ちあがる。可愛い弟分だと思っていたのに・・・・・。


「せいさん!!・・・・・すいません!どうしても・・・聞いてもらいたい事が有って・・・・・。」

一貴はやはり方法がまずかったと思い知ったが・・・・。
せいは ひろしも見ずに荷物を取ると つかつかと歩いて部屋から出て行こうとする。

「お願いします!!輛斗の事で どうしても解らないんです!俺・・・避けられててどうしたらいいか!!・・・・にいさんバイト先に もう来ないって言うし。携帯も繋がらないし・・・・・。西山さんに 兄さんの名刺見せてくれって言ったら・・・・・・。」

ひろしは土下座したままはいずって、ドアまでせいに付いて行き 
せいは、ドアノブに手を掛けたまま止まる。
そしてやっと一貴は、せいのズボンの裾を 掴む事が出来た。
ひろしの必死さは伝わったが・・・・。

せいは黙ったままドアを見ている。


「・・・・・・・。」

「・・・・最初は 相談に乗ってくれたんですが・・・後で 怒られて・・・・・・。もうせい兄さんしか 判る人はないと思って!・・・・・。事務所に言ったら こうやって呼び出せば客大事にしてるから 来るだろうって・・・・・・・。・・・・・舐めた真似して・・・・。ほんとに すいません!・・・。」

ひろしは頭を床に付けたまま謝りつずけた。

ゆっくり振り返り 床に這いつくばった ひろしを見るとせいは

「・・・・・・何て・・・・・・言ったんだ・・・?。」

と 尋ねた。

「は・・・・・い?。」

少しだけひろしが顔を床から上げると 鼻水が床から糸を引いているのに気付く。

「・・・・・その・・・・西山さん・・・だよ・・・。」

「・・・・え・・・・その・・・・てめぇで・・・考えろって・・・。」

せいが 自分に声を掛けてくれた嬉しさと 安堵でまた涙が出て 鼻水が・・・・・床に・・・顔を上げられなくなってしまう ひろし。

それをいらいらしたようにつま先で引っ掛けてあげようとする せい。

どうしていいか判らずおどおどしていると一貴に

「・・・この為に呼んだんだろうが!!ちゃんと 説明ぐらいしろ!。」

と 言い、

怒ったままベッドに戻り どかっと座る。

慌てて顔を上げると 鼻水が・・・・・
せいが嫌そうに顔をそむけると 一貴はあわててバスルームに飛びこんだ。




「ふーーん。」

一通り説明を受けると せいはつまらなさそうに眼を伏せた。
事の顛末はともかくとして 大体の事は 予想通り。

それを・・・・・

「前は帰ると玄関まで来てくれて 声掛けてくれたのに、今じゃ座ったままだし 俺が呼んでも来てくれないんです。・・・・俺と一緒に居たくないって言うか・・・・。具合が悪いのかと聞いてもそんな事は無いと言うし・・・。西山さんは 知らないの一点張りだし 俺は何だか置いてけぼりくったみたいな・・・・。」

一貴は床に正座したまま落語のように一人喋りつづけている。せいは組んだ脚をぷらぷらと揺らし 悩む一貴を見る。

「近頃病院探してるらしくて・・・・・。俺が心配してる事なんて 二人ともまるっきり無視してて・・・。」

多分答えを言ってしまえば 何だそうだったのかと一貴は帰って行くだろう。西山にもその答えが伝わるはずだ。
だから尚更簡単に教えたくはない・・・・。

「・・・よし・・・・。輛斗を・・・呼び出せ。」

ひろしは話に夢中で 話の途中でせいに言われた言葉を聞き逃した 

「え・・?。」

と聞き返すと せいはめんどくさそうに

「輛斗が・・・お前に言えない事かもしれんだろ・・・・・。俺が聞いてやる。」

「ええ!!・・・ホントですか?せいさん!!・・・まじに?!。」

「・・・・まじ。」

お手軽なひろしの・・・・やたら喜ぶ顔を見ながら 西山の悔しがる顔を想像し 少し微笑むと頷いて見せた。一貴はすぐに携帯に手を掛け せいの気の変わらぬうちに、横を向きながら輛斗に連絡を取った。



「・・・・・・西山さんには 内緒で出てくるように 言うんだぞ・・・。」


普段運転手をしている西山を使わずに 日中人混みの中電車で来るのは輛斗にとっては苦痛でしか無かったが、一貴から大事な話を 内緒でしたいと言われて 
彼は思いつめたように蒼白気味な顔でやって来た。

部屋番号を エレベーターの中で繰り返すと 前に立っていた男が挙動不審の輛斗を振り返ったが、それを無視しそのまま目的階の廊下に踊り出た。

落ち付けと自分に言い聞かせても 少し早歩きになる。 
廊下は走りやすかったせいか 輛斗は走り出し
走ると 心も焦り走り出す。何かが起きそうな気がして悲しくなって来た。


一貴が この体のせいで もし自分と別れたいと言ったら 自分は黙って身を引けるだろうか・・・・。

「・・・いっき・・・・・。・・・やだ・・・やだ・・・。」

輛斗は指定された部屋の前まで行くと 扉をどんどんと叩きだした。
一秒でも早く着いて 考えを変えてもらわねば・・・・ならない。


だが少し開いて一貴の顔が見えると 輛斗はすっと目線を下げる様に頭を下げる。それを見た一貴は がっかりしながらも 輛斗の腕を引っ張って 部屋の中に入れた。

「・・・・いっき!・・・・俺はぜったい認めないからな・・・・。もし 離れたいって言うなら 少しだけ時間をくれれば俺・・・・。病院で・・・・。」

後ろめたい事を隠す様に 下を向いたまま輛斗が言うので ひろしは

「は?・・・病院?!・・・やっぱりお前どっか悪いんだな?それを俺には隠してて・・・・言えないって言う事なんだろう?。」

せいがベッドに座ったまま 二人が自分の前に揃うのを待っていた。 
しかし もう会うなり喧嘩を始めてしまいそうだった。
どんな具合だろうと首を伸ばす様に眺めると 一貴が掴みかかり 輛斗は必死に身を縮める様に避けている。

それを見て 実際に納得したせいは にんまりと笑う。


「・・・・・・言ってくれればいいだろう!。俺は家族じゃなかったのかよ!。」

「言って治るようなもんじゃないんだって!病院で・・・・ちょっと切っって・・・。」

「切る!!ってどこをだよ!!。」

一貴は輛斗がベッドでチュウブだらけになっている所を思い出し 
ぞっとした。その途端呼吸もままならなくなる。

輛斗を失いそうになった事を思い出しただけで 貧血を 起こしそうだった・・・・。


どこまでやるんだか・・・・・。
せいは面白そうに脚を組みほどくと 耳の良い輛斗が 音に気ずき奥のベッドの方に目を向ける。すぐに せいを見つけ 固まってしまった。

落ち着いた輛斗を見て一貴も溜息を付き せいを見ると 彼が笑っていたので輛斗から手を離す。

「・・・・・。」
「・・・・・。」

「・・・・ふっ・・・はははは・・・あははは!・・・。」

まるで喧嘩の最中に 正面のドアを開けられて固まる 野等猫だった。
久しぶりに・・・
腹のそこから 笑いがこみあげて来て せいは 腹を押さえて笑い転げた。

笑いがすこしおさまるとベッドから 体を起し 固まった二人のうちの輛斗に視線を合わせ

指をちょっと曲げて 呼び付けた。


輛斗はためらったが、一貴が後ろから押すので せいに近ずいていく。


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