ぎんぐの紅茶

紅茶初心者の奮闘記

「食卓一期一会」(長田弘)

2007年09月11日 | お茶が出てくる本&紅茶関係の本レビュー
様々な食卓の風景の詩集。
私は詩を読むほうではないが、この詩集は小説と詩の中間のようで読みやすい。
また、取り上げている題材が全て食べ物や料理に関するものなので親しみやすい。
言葉も平易だ。

この詩集はいくつかに章立てされているが、その中に「お茶の時間」という章がある。
お茶やコーヒーの詩もあるが、この章の中で私が好きなのは「パイのパイのパイ」という詩だ。


ある日、つくづくやりきれないものぜんぶ、
深い鍋に入れ、水をひたひたに注ぎ、
気のすむまで、ぐらぐらに煮立てる。
それから、腐乳をぞんぶんにくわえて
さらに気のすむまで、じりじりと煮る。
鼻をつまみたい匂いがしだしたら、
火を止めて、じゅうぶんに振りまぜて、
よく挽いたナツメッグ、ジンジャー、
丁子、黒コショー、委細かまわずふりかけて
鍋を部屋の外にだし、そのまま放っておく。
<中略>
あとは、パイ皮がふくらんでくるまで、
そのままじっと辛抱して待つんだ。
きれいに焼けたら、きれいな大皿に盛る。
一瞬ののち、機敏にきびきびと、
皿ごとヤッとばかり窓の外に抛りだす。
まったくあとくされないようにする。
パイのパイのパイのつくりかた、それが
その名も高いエドワード・リア先生の。
(「食卓一期一会」72~74ページより)

全文引用したいくらいいい詩だ。
嫌なことがあったら、この詩をゆっくり読む。
嫌なことを思う存分煮込んで煮込んで・・・最後にぽいっ。
するとちょっと憂さが晴れたような気分になる。

他も味わいのある詩ばかり。
「ふろふきの食べかた」「トルコ・コーヒーの沸かしかた」「絶望のスパゲティ」「ドーナッツの秘密」などなど。
どれも料理と言葉がうまく合わさっていて、何度読んでも飽きない。
すてきな詩集だ。

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