バイクライフ・バイクツーリングの魅力を北海道から。
聖地巡礼-バイクライディングin北海道-
レインラン7 雨の日のアクセル・ブレーキ(アクセル編)
さて、雨の日のブレーキングの次はアクセルワークについてです。
以前挙げたポイントは3つでした。
1 開け始めをやさしく。
2 パワーバンドを外して低回転でワイドオープン。
3 パーシャルはなるべく使わない。
おお、これもすでに言い尽くされた感がありますなぁ…。
まあでも、説明にトライしてみましょう。
1 開け始めをやさしく。
「アクセル全閉から開け始めるときは、やさしく開けましょう。」
うーん、文字通りですね。では、なぜか?
電車に乗ったとき、ついふらっと来るのは、加速中や減速中に加速度、減速度が最高に強くなったときじゃなくて、加速から減速に、減速から加速に切り替わった時だったりします。
一方向に一定の力が加わっていて、その力が増減するよりも、プラスからマイナスへ、右から左へ、など、力が切り替わるときが、人は反応しにくいのです。
同じことがバイクの車体の姿勢や、タイヤのグリップにもいえます。
減速で前荷重となり、車体が沈み込んで前下がりになっていたバイクが、加速状態にすると後ろ荷重に切り代わり、フロントフォークが伸びて後ろ下がりの姿勢になります。
この切り替わり時はグリップ感をつかみにくく、タイヤとしても荷重が抜けてまた荷重がかかる際の変化は、我々が想像する以上にグリップには厳しいときがあります。
この切り替えの時にラフにアクセルを扱うと、一瞬タイヤのグリップが失われるときがあります。
もし、慎重にアクセルを開けている最中なら、反射的に一瞬アクセルを戻して事なきを得るのですが、ラフに開けかけているときだと、そのままタイヤが空転してスリップダウン、もっと悪ければ、回転が上がってからあわててアクセル全閉⇒タイヤがグリップ⇒車体が激しく揺られる⇒コントロール不能、という最悪の状態になることも全くないとは言えません。特に最近のハイパワーマシンの場合はそうです。
開け始めをじわっとしてパワーの切り替えをやさしくするにはどうするか。
柏秀樹氏や山田純氏などは、軽くリヤブレーキを引きずったままの状態でアクセルを開け始めることで、駆動力の切り替え時のショックを少し軽くすることを提言しています。
坂道発進を思い出してもらえると、ブレーキをかけたままアクセルを開けるというこの方法が意外と易しくしかも有効であることがイメージできるのではないかと思います。
リヤブレーキには車体のピッチングを押さえる働きもあるので、一石二鳥の方法というわけです。
私はといえば、この方法はあまり使いません。なぜなら、この方法は旋回に入ってからもしばらくはアクセルオフで回ることが前提となっているからで、私は雨の日は特にバンクするときが一番遅くなるように、かなり速度を落としていますので、旋回状態に入ったときにはアクセルは開いた状態にしているからです。
コーナーの中で速度を落とさなければならないようなときは「超低速多角形コーナリング」(ライテク記事「下りヘヤピン右回り」の中で説明しています)をするので、雨のコーナリング中にリヤブレーキを掛けることはとても少ないのです。
それでもリヤブレーキも必要なときには、慎重に軽く当てるのにとどめつつ、リヤブレーキとアクセルオンの併用を使います。
このとき、勘違いしてやってはいけないのが、フロントブレーキをかけながらアクセルオンにすることです。これでは止まりたがる前輪を後輪が押しまくるという、最もグリップにはよくない状況になってしまいます。くれぐれも併用はリヤブレーキと、アクセルです。
2 パワーバンドを外して低回転でワイドオープン。
バイクに慣れてくると、あまり低回転にせず、パワーバンドにエンジン回転数をキープするのが速くてかっこいいと思うようになります。しかし、パワーバンドに入ったエンジンはレスポンスも過激で、ちょっと開けてもパッと付き、ちょっと戻すとドゥーン!とエンブレが効きます。
このレスポンスのよさが、じわっとやりたいパワーの掛け始めをドカッとしたものにしてしまい、スリップしたり、そこまで行かなくても不安になったりします。
パワーバンドを下に外してしまえば、エンジンの付きもすこし「ぼけて」、雨の日にやさしいパワーの掛けはじめにできます。
これも、ノッキングを起こしたり、エンストしてしまうほど下げてはいけませんが、エンジンに無理のかからない程度に低回転にしておいて、比較的多めに開けていくほうが、車体も安定し、精神的にもゆとりができるのです。
GPZ1100国内仕様の場合は潤沢な低速パワーがあるので、上り坂でも1500rpmくらいからでも飲み込まずに加速してくれます。2000rpmも回っていればたいていの場面では事足ります。
これを4000rpm以上にキープしてしまうと、開け始めのレスポンスが鋭く、アクセルワークに細心の注意が必要となり、疲れてしまうのです。
3 パーシャルはなるべく使わない。
もともとバイクはリヤに駆動力(トラクション)がかかっていたほうが安定しますし、ライダーも安心して自分が扱っているという実感をもってバイクを操作できます。
1の項でも書きましたが、雨に日は特に荷重の向きの切り替えでスリップや、後輪のスピンを引き起こしてしまいがちです。
ならば、加速、減速、加速、減速、とめまぐるしく唐突に荷重方向が変わらないように、始めに思い切り減速しておいて、バンクしたら即座に(バンクをアクセルで止めるように)アクセルをオープンし、その駆動力の増減でバイクをコントロールした方が安全で安定したライディングができます。
パーシャル(すなわち減速度も加速度も与えていない状態)にすると、加減速の度に車体が揺すられ、グリップ感が失われて怖さを感じますが、もっと減速しておいて遅い速度でコーナーに進入し、あとは開けながらコーナーを抜ければ、いやな駆動力の切り替えも必要なくなるわけです。
また、パーシャルで走る、ということは路面とバイクとの関係に関して、ライダーが積極的にコントロールできていないことを示しています。
バイクを操作する上での最も大切な、「自分が操っているという実感」、運転のリアルな手ごたえが、パーシャルでは得られにくいのです。
直線で流しているときはいいとして、コーナリングの中でパーシャルを長く持つことは、バイクのバンク角とスピード次第で状況が決まってしまい、自分は関与できない状態を長く持つことになってしまいます。
雨の日のようなグリップ感が希薄になり、自信が得られにくいときほど、この手ごたえは大事なのです。
遅い速度で、低いパワーでいいので、トラクションをかけ、自分が状況を支配している状態をきちっとつくっておくことが大切です。
そのためにも、パーシャル状態はなるべく短くしておきたいのです。
⇒ライテク記事目次へ。
⇒ブログトップページへ。
以前挙げたポイントは3つでした。
1 開け始めをやさしく。
2 パワーバンドを外して低回転でワイドオープン。
3 パーシャルはなるべく使わない。
おお、これもすでに言い尽くされた感がありますなぁ…。
まあでも、説明にトライしてみましょう。
1 開け始めをやさしく。
「アクセル全閉から開け始めるときは、やさしく開けましょう。」
うーん、文字通りですね。では、なぜか?
電車に乗ったとき、ついふらっと来るのは、加速中や減速中に加速度、減速度が最高に強くなったときじゃなくて、加速から減速に、減速から加速に切り替わった時だったりします。
一方向に一定の力が加わっていて、その力が増減するよりも、プラスからマイナスへ、右から左へ、など、力が切り替わるときが、人は反応しにくいのです。
同じことがバイクの車体の姿勢や、タイヤのグリップにもいえます。
減速で前荷重となり、車体が沈み込んで前下がりになっていたバイクが、加速状態にすると後ろ荷重に切り代わり、フロントフォークが伸びて後ろ下がりの姿勢になります。
この切り替わり時はグリップ感をつかみにくく、タイヤとしても荷重が抜けてまた荷重がかかる際の変化は、我々が想像する以上にグリップには厳しいときがあります。
この切り替えの時にラフにアクセルを扱うと、一瞬タイヤのグリップが失われるときがあります。
もし、慎重にアクセルを開けている最中なら、反射的に一瞬アクセルを戻して事なきを得るのですが、ラフに開けかけているときだと、そのままタイヤが空転してスリップダウン、もっと悪ければ、回転が上がってからあわててアクセル全閉⇒タイヤがグリップ⇒車体が激しく揺られる⇒コントロール不能、という最悪の状態になることも全くないとは言えません。特に最近のハイパワーマシンの場合はそうです。
開け始めをじわっとしてパワーの切り替えをやさしくするにはどうするか。
柏秀樹氏や山田純氏などは、軽くリヤブレーキを引きずったままの状態でアクセルを開け始めることで、駆動力の切り替え時のショックを少し軽くすることを提言しています。
坂道発進を思い出してもらえると、ブレーキをかけたままアクセルを開けるというこの方法が意外と易しくしかも有効であることがイメージできるのではないかと思います。
リヤブレーキには車体のピッチングを押さえる働きもあるので、一石二鳥の方法というわけです。
私はといえば、この方法はあまり使いません。なぜなら、この方法は旋回に入ってからもしばらくはアクセルオフで回ることが前提となっているからで、私は雨の日は特にバンクするときが一番遅くなるように、かなり速度を落としていますので、旋回状態に入ったときにはアクセルは開いた状態にしているからです。
コーナーの中で速度を落とさなければならないようなときは「超低速多角形コーナリング」(ライテク記事「下りヘヤピン右回り」の中で説明しています)をするので、雨のコーナリング中にリヤブレーキを掛けることはとても少ないのです。
それでもリヤブレーキも必要なときには、慎重に軽く当てるのにとどめつつ、リヤブレーキとアクセルオンの併用を使います。
このとき、勘違いしてやってはいけないのが、フロントブレーキをかけながらアクセルオンにすることです。これでは止まりたがる前輪を後輪が押しまくるという、最もグリップにはよくない状況になってしまいます。くれぐれも併用はリヤブレーキと、アクセルです。
2 パワーバンドを外して低回転でワイドオープン。
バイクに慣れてくると、あまり低回転にせず、パワーバンドにエンジン回転数をキープするのが速くてかっこいいと思うようになります。しかし、パワーバンドに入ったエンジンはレスポンスも過激で、ちょっと開けてもパッと付き、ちょっと戻すとドゥーン!とエンブレが効きます。
このレスポンスのよさが、じわっとやりたいパワーの掛け始めをドカッとしたものにしてしまい、スリップしたり、そこまで行かなくても不安になったりします。
パワーバンドを下に外してしまえば、エンジンの付きもすこし「ぼけて」、雨の日にやさしいパワーの掛けはじめにできます。
これも、ノッキングを起こしたり、エンストしてしまうほど下げてはいけませんが、エンジンに無理のかからない程度に低回転にしておいて、比較的多めに開けていくほうが、車体も安定し、精神的にもゆとりができるのです。
GPZ1100国内仕様の場合は潤沢な低速パワーがあるので、上り坂でも1500rpmくらいからでも飲み込まずに加速してくれます。2000rpmも回っていればたいていの場面では事足ります。
これを4000rpm以上にキープしてしまうと、開け始めのレスポンスが鋭く、アクセルワークに細心の注意が必要となり、疲れてしまうのです。
3 パーシャルはなるべく使わない。
もともとバイクはリヤに駆動力(トラクション)がかかっていたほうが安定しますし、ライダーも安心して自分が扱っているという実感をもってバイクを操作できます。
1の項でも書きましたが、雨に日は特に荷重の向きの切り替えでスリップや、後輪のスピンを引き起こしてしまいがちです。
ならば、加速、減速、加速、減速、とめまぐるしく唐突に荷重方向が変わらないように、始めに思い切り減速しておいて、バンクしたら即座に(バンクをアクセルで止めるように)アクセルをオープンし、その駆動力の増減でバイクをコントロールした方が安全で安定したライディングができます。
パーシャル(すなわち減速度も加速度も与えていない状態)にすると、加減速の度に車体が揺すられ、グリップ感が失われて怖さを感じますが、もっと減速しておいて遅い速度でコーナーに進入し、あとは開けながらコーナーを抜ければ、いやな駆動力の切り替えも必要なくなるわけです。
また、パーシャルで走る、ということは路面とバイクとの関係に関して、ライダーが積極的にコントロールできていないことを示しています。
バイクを操作する上での最も大切な、「自分が操っているという実感」、運転のリアルな手ごたえが、パーシャルでは得られにくいのです。
直線で流しているときはいいとして、コーナリングの中でパーシャルを長く持つことは、バイクのバンク角とスピード次第で状況が決まってしまい、自分は関与できない状態を長く持つことになってしまいます。
雨の日のようなグリップ感が希薄になり、自信が得られにくいときほど、この手ごたえは大事なのです。
遅い速度で、低いパワーでいいので、トラクションをかけ、自分が状況を支配している状態をきちっとつくっておくことが大切です。
そのためにも、パーシャル状態はなるべく短くしておきたいのです。
⇒ライテク記事目次へ。
⇒ブログトップページへ。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
« レインラン6... | レインラン8... » |
操作も理解も乏しいです。
何とか言われることは理解できそうですが…。
樹生さんが書かれたライテク記事インデックスは当方の参考書になっています、多少バイクの特性上の違いはあるようですけど根本的なところは変わらないようにおもいます。
今回の項目は参考書第2章ですね。^^
弾正さんおっしゃるように、バイクによって実際の操作は大きく変わっても、2輪車であることの基本的性質は共通することがおおいのではないか、と私も考えています。
今回は要点は三つで、解説の理屈の方が難しかったかもしれません。これは、「グリップ感」シリーズを踏まえてかつ雨でちょっと滑ったりした経験がないと分かりにくい説明だったかも…。
この辺りは『BIG MACHINE』誌の柏秀樹氏の連載の方が具体的操作に関しては分かりやすいと思います。
また、「ヤングマシン」別冊の『実践バイクライディング免許皆伝Ⅱ』(5月号増刊なので、書店にはもうないかも、取り寄せはできると思います)なども、具体的で連続写真を多く用いた紙面で大変参考になると思います。
『今日から乗れるビッグバイク』(RIDERS CLUB MOOK編集部)も、示唆に富む本です。
私は私で20数年の経験とライテクおたくとしての意識でわりと一生懸命書いてますが、素人ですので、あくまで参考程度にしてくださいね。
私の場合、ただ、「こうすればいい」「こうしろ」ではなくて、「どうしてだ?」という意識が結構あってそれを調べたり考えたりするのもバイク趣味の一部になっているところがあります。
だから理屈っぽいんですが、読んでくださる方、利用してくださる方がいると、とてもうれしいです。
これがインターネットの力なのか…、と思ったりもしています。
質問やご指摘、どんどんお願いします(^^)。
南畑ダムの下りカーブ。
山の天気は変わりやすいです。
登る時は晴れていたのに気付いた時には一瞬でウェット路面に。
ってことがままあります。
今まではバイクの姿勢変化を怖れてアクセル一定で下っておりなんとも心もとなかったです。
でも早めの減速からじわっとアクセルを開けながら曲がると、速度は低いですが晴れの時と同じリズムで走れる!
グリップが感じられました。
雨のライディングに少し自信がつきました^^
少しでもお役に立てたら、とてもうれしいです。
現在のバイクは、どんどん進歩していて、特に電子制御はグリップを失わないように驚異的な進歩を続けています。
そのせいで、不安を感じることなくアベレージをあげることができる側面もあるのですが、いずれ物理的な限界は来るわけで、その時、それまで安心だったからこそ、自覚のないままに大きな運動エネルギーの下にいてしまうことも多くなっています。
その意味では、アクセル一定でくだって心もとない状態を知っている…というのは、経験値として強みになると思います。最終的に雨の日は、晴れの日ほど大きな運動エネルギーのやりとりはできない。遥か手前で限界が来る。
そのことを知ったうえで、速度は低くても晴れの日と同じリズムで走れ、グリップを感じられる…というのは、とてもいいと思います。グリップ感は、路面とのエネルギーのやり取りに関する、実感の伴うセンサーなので、とても大事です。
いいですね!
どうぞ、安全運転で!