五行目の先に

日々の生活の余白に書きとめておきたいこと。

4月6日(日)晴:北大めぐり

2008-04-07 20:23:08 | 

 8時半起床。朝風呂に入る。さっぱりしてから10時にチェックアウト。一昨日と同じくポールタウンを歩く。地下鉄大通駅近くの喫茶店でハムチーズトーストのセットの朝食。荷物が多かったので地下鉄でさっぽろ駅へ。コインロッカーにバッグを放り込む。

 札幌駅の自由通路を抜け、北海道大学へ。ここを訪れるのも2000年の学会以来。いいかえれば前世紀以来である。キャンパスがどんな感じだったか、ほとんど覚えていない。当時、ホテルのロビーに置いていたリュックサックを持って行かれてしまい、大騒ぎをしたのだけははっきり覚えている。幸い学会発表の資料なんかは別の鞄に入れてあり事なきを得た。またリュック自体も北海道を去る当日に戻ってきたのだった。だが財布が入っていたので、カードやら携帯電話やらを止めるのが大変だった。たまたま北海道に旅行に来ていた弟(Gさんに会いに来ていたのだ)にラーメン横町でラーメンをおごってもらったなあ。

 図書館には迷わずたどり着けた。日曜日だというのに開館時間が短いことを除けばほぼ普段通りの運営のようだ。東大よりも充実したサービスなんじゃなかろうか。しかも紹介状を持って行かなくても身分証だけで利用できる。他大学の教員には貸し出しまでしてくれるようだ。至れり尽くせりである。

 必要な資料は予めピックアップしてあったので、すぐに閲覧請求をする。書庫から出してもらう間、開架閲覧室をみて回る。休日だというのに六法全書なんかを傍らに勉強している学生さんが多い。やっぱりこれだけのサービスを提供してくれたら利用者も増えるよなあ。うちの大学なんて、図書館には基礎ゼミで連れて行かれたきり、なんていう学生さんも少なくないのに。

 こちらでみせてもらう資料も期待通りの内容。必要な部分をコピーする。いい資料だとコピー作業も苦にならない。あっという間にカードを3枚消費する。

 1時に昼食を食べに出かける。カメラ片手にキャンパス内の建築を撮りながら歩く。古川講堂とか農学部本館はみごたえのある建物。それ以外にもいい雰囲気の建物が再利用されている。農学部の建物は一橋大学の図書館の建物に通じるようなデザイン。ただし伊東忠太的ないたずらがない分だけ、こちらのほうがすっきりした印象だ。

 キャンパスの広さは大学当局の心の広さにもつながっているのか、学生さんたちが野外でのレクリエーションをしてもいい場所さえちゃんと設けられていた。何だかゆとりを感じるなあ。

 中央食堂という学食が開いていた。正門近くの食堂が閉まっているせいか、結構混雑している。北大ならではのメニューを期待したが、うちの大学の食堂と変わらない。生協の運営だから仕方がないか。豚丼を頼む。帯広の豚丼を期待したが、普通の牛丼屋で供しているようなものだった。

 食堂の上の購買で北大グッズを物色。昨日の小樽商大とはうって変わって、かなりの充実度。てぬぐいとバンダナ(風呂敷のように使える)、それから絵はがきを買う。

 さらにキャンパスを奥へ奥へと進む。行ってみたかった獣医学部へ。いうまでもなく佐々木倫子の『動物のお医者さん』のモデルになったところである。確かにキャンパスの一番はずれ、しかもちょっとしたポプラ並木もある。雪はすでに溶けて、牛フンはまかれていなかった。唯一それっぽかったのは、あちこちぶつかってぼろぼろになった車が走っていたことだ。

 ここまでやってきたのにはもうひとつ理由があって、獣医学部のすぐ向かいのモデルバーンを見学したかったのだ。農学部の第二農場で、札幌農学校時代の建物が残されている。クラーク先生(大学グッズのキャラクターに用いられている)ゆかりの、「模範的家畜房」である。決して広い敷地ではないのだが、異国情緒に満ちている。

 元きた道を引き返す。道はまっすぐだが、向こうがみえないくらい長い。てくてく歩く。途中で総合博物館に立ち寄る。大学の歴史から始まって、恐竜の化石なんかまで展示してある。しかも建物も古い。博物館の規模としてはかなりの大きさだろう。ここでもミュージアムショップで北大の建築の図面と模型の絵はがきを買い込む。貧乏旅行のくせに案外お金が残らないのは、こうやって絵はがきだの写真集だの大学グッズだのを買ってしまうせいだ。

 図書館に戻ると3時。食事も含めてだが2時間の散歩になった。それだけのスケールがあるということ。恐るべし北海道大学。

 午後の資料閲覧は1時間ほどで終わらせる。こちらも収穫は大きかった。一昨日に続いて今回の資料収集は本当に大成功だった。

 4時を過ぎて、今日も映画を観ることにする。MovieWalkerをチェックして、すすきのでチャップリンの「独裁者」が観られることを知る。地下鉄東豊線で豊水すすきのまで行き、スガイシネプレックス札幌劇場という映画館へ。チャップリン映画祭というシリーズの一環としてこの「独裁者」が上映されるのだ。

 中学校だか高校だかの社会科の教科書にも載っていたけれど、実際の映画を観るのは初めてである。前半はベタな笑いを取りながら、徐々にシリアスな内容へと転化していく。その変化に違和感がないのがすごいと思う。最後の6分間にもわたるチャップリンの演説には圧倒された。美しいことばが散りばめられている。これが現代ではなく、ナチスが台頭していく1930年代末に作られたというところに意味がある。文化対文化の火花の散るようなせめぎあいというのを、当時の人々はどう受け止めたのだろう。

 アーケード街の狸小路を抜け、すすきのに出る。繁華街のネオンサインはエネルギーの浪費であることは承知しているが、やはりこの彩りあっての都市だという気もする。

 昨日とは逆のルートで市電に乗る。昨夜とぼとぼと歩いた道を快走する。電車事業所前で下車して、車庫に留まっている電車を写真に収める。乗ってきた電車の1本後に再び乗って、西四丁目へ。

 札幌駅に向かって歩く。真っ直ぐにではなく、寄り道をしながら。大通公園からテレビ塔、時計台、北海道庁旧庁舎を撮影する。いずれもライトアップされているので、割ときれいに写真が撮れる。

 昨日に続いてJRタワーの「カレー研究所」でスープカレーを食べる。念願のスープカレーは土鍋でぐつぐつと煮立ちながら運ばれてきた。うまかった。

 夜食と飲みものを買い、札幌駅の改札を抜ける。ホームに立つとすぐに急行「はまなす」が入線してきた。カーペット車はもちろん、寝台車も売り切れているという。指定席車のドリームカーもかなり埋まっている。座席のリクライニングを倒してみると、思いのほか深く倒れるのでびっくりした。予め100円ショップでアイマスクとU字型のエア枕を買ってある。加えて普通のガーゼマスクもある。みてくれは怪しいが、車内の明るさや乾燥、そして寝違え対策はばっちりだ。

 途中何度か目が覚めたが、割とよく眠ることができた。函館で目を覚ます。ここで30分停車。ホームに出て、機関車の切り替え作業を見物する。函館を出ると青森まではノンストップである。

 青函トンネルを抜け、右手に海がみえ、朝日が昇ってくるというところで目が覚めた。ああ、戻ってきてしまったか、と少し残念な気分になる。ここのところすっかり旅づいていたから、もうしばらくは流浪していたかった。だがそういうわけにもいかない。

 青森駅に定刻通りに到着。少し体が冷えるな、というところに駅そばが営業していたので迷わず食べる。何の変哲もない普通の立ち食いそばだがおいしく感じられた。向かいのホームに停まっていた特急「いなほ」に乗り継ぐ。

 6時35分に弘前に着く。絵はがきや写真集で重くなった荷物を担いで帰宅する。洗濯機を回して、2時間ほど仮眠を取ることにした。思いつきと勢いで出かけた旅だったが、先の旅と同じくらい、いやそれ以上に充実していたなあ、と思う。

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