僕はどちら様ですか? (苦鬱のディズニーランド番外編)」

「夢のないお話in夢の国(苦鬱のディズニーランド第2話)」の番外編です。
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キミが誰だか、僕は知らない。

ボクが誰だか、僕は知らない。

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ディズニーランドは楽しかったが、行き帰りのドライブは苦痛で仕方なかった。それは猛毒の舌を持つIさん(♀)とK藤さん(♀)を乗せているからである。

キング・オブ・エロスのK村君もこのときばかりは苦笑いで黙り込んでいた。

「さっさとこの二人を降ろさねば…。」

ところが、どうしたことか食事をする話になってしまい、指示されるままに僕は「びっくりドンキー」の駐車場に車を停めた。

どこに停めてもいいだろうに、「なんでこっちなの!!こっちに停めろよ!!あーだこーだ!!てやんでぃ!!」と、Iさんはイチイチ文句を言ってくるんだから、やりきれない(´Д｀) =3


深夜の寂れたこのファミレスは、どーにもこーにも陰鬱な雰囲気が漂っていた。店自体が古いせいもあるだろう、照明も暗いような気もするし、壁もくすんでいる。


「トッピングはひとつまでとなります。」

注文を拒否られたのは、最悪なことにIさんであった。そりゃ、毒舌ファイアに油を注ぐ結果になったのは言うまでもない。いや、Iさんの体格を考えると「脂に火を注いだ」と言い換えてもいい。


まずセットのサラダが届いたのだが、箸を置いていかない。ちょっと待ったが持ってこない。もうちょっと待ったがやっぱり忘れられている。

Iさんのメラメラと炎が燃え上がる…。

毒舌では引けを取らないK藤さんにも引火した…。

事態はみるみる悪化している…。

さらに悪いことに、ワゴンで料理を運んできたお兄さんがやってくれた。手が異様なほど震えていて、テーブルに料理を置けないのである。

食器がガタガタいうくらい震えている。

それを見かねた僕らは、いちいち料理を手で受け取らなければならなかった。K村君のライスを忘れそうになるし。

「以前よりまずくなった」とか「このジュース氷が多い」だとか、K藤さんはコメントに困るようなことばかり毒づくし、
Iさんは「クレーム書いて本社に送ってやる!!」と「お客様の声」的なアンケートハガキを探しに行く始末。

ハガキはなかった…。

「クレームが多すぎて、撤去したんじゃねーの?」
「ざけんなよ!!」

「うぉぉぉぉぉぉ、ドッカンV!!」…っとまでは言っていないけれど、脂に火がついた百貫のIさんは、まるで豚の丸焼のような様相を呈していた。

そんな騒がしい僕らに隣接した席に4人組の家族がやってきた。

前書き終了…。

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ここからが本編…。

4人組の構成は、3歳と5歳ぐらいの男の子と、そのお母さん、お姑さんといったところだろうか。

「僕はどちら様ですか?」

「僕はどちら様ですか?」

「僕はどちら様ですか?」

5歳くらいの男の子が席に着くときに執拗に言っている。繰り返しているうちに言葉のニュアンスが少しずつ変わってもいいと思うが、この子はまるでプログラミングされたロボットのようにきっちり同じことを繰り返している。

それが滑稽だったのだが、笑うに笑えない内容だと僕は思った。


「僕はどちら様ですか?」

これはもはや哲学である。

わずか5歳にして自分が誰なのかを問う。

若くして自分を失ってしまったのか。いや、そもそも自分が誰なのかなんてわからない。

皆さんは自分が誰だか答えられますか?

名前を答えるのは簡単だけれど、名前は便宜的に後から付けられたもので、誰かという問いに対する根本的な答えにはならない。

彼女の部屋に知らない男性がいて「お前誰だ!!」と言ったら「わたくし、○○ ○○と申します。」と答えられるようなものだ。

答えにならない。

僕の大好きな小説家でありエッセイストの原田宗典さんも、息子に「パパは誰なの?」と問われて相当悩んだそうだ。


「うるさい!いいから座りなさい!」

定番の「母の一喝」ってやつで子供は黙るわけだが。そのうち「生まれた意味」を自分に問いかける様になるのだろうか。この子の将来がちょっぴり心配であり楽しみだと思った。


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ふと我にかえると、目の前には相変わらず毒を吐き続けるブタの丸焼が座っている。

その饒舌な舌をタン塩にしてやりたいと思った。


食わねーけどなΨ(*｀Д´*)Ψ

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キミが誰だか、僕は知らない。

ボクが誰だか、僕は知らない。

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【リンク】


「夢のないお話in夢の国(苦鬱のディズニーランド第2話)」(2009/04/24)
　http://blog.goo.ne.jp/taira1216/e/f6a8415f2bb84675de56ce9858ab76dc


「ぐったり夢の国へ　(苦鬱のディズニーランド第1話)」(2009/04/23)
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