”佐藤多一”

豊橋市のイベントなど

夕凪(ゆうなぎ)

2009-07-25 17:47:29 | つれづれ草
 蒸し暑い夜、夕涼みに出かけても風が吹かないことがよくありました。丁度、夕凪(ゆうなぎ)の時間帯にあたります。凪(なぎ)の字は「かぜかんむり」の中に止まると書きます。海辺の地域では、昼間は海から陸地に向かって海風が吹き、夜には陸から海へ陸風が吹きます。空気は温められると上昇し、冷却されると下降します。水も同様で対流が起こります。一般に陸地は比熱が小さいため、比熱の大きい海と比較すると暖まりやすく冷めやすいため、海辺の地域では、空気に温度差が生じます。昼間は陸地の空気が早く暖められて上昇し、海から陸へ海風が吹きます。夜になると陸地の空気が早く冷やされ、海上の空気のほうが暖かくなり、陸から海へ陸風が吹きます。陸と海の温度差がなくなる時間帯(朝・夕)は風が止まり、朝凪、夕凪となります。海風は、海・浜の香りを運び、陸風は、山・森の薫りを運んできます。

 日本では、一般的に夏は太平洋高気圧から吹き出す南東の風が吹き、冬には大陸性高気圧(シベリア高気圧)から吹き出す北西(北より)の風が吹きます。春と秋は移動性の高気圧・低気圧が日本列島を通過するため風向きが変わります。「東風(こち)」は東風ですが、主に春先に吹く東風を指し、長い冬の北風から開放される季節の変わり目の風であります。凩(木枯らし)は晩秋から初冬に吹く北西(北より)の風で、冬の訪れを告げる風であります。

 東北地方では「イナサが吹けば魚が寄ってくる。」と言われますが、「イナサ」とは漁師に大漁の恵み、農家には豊作を運ぶ風で、春から夏にかけて吹く暖かい南東の風のことであります。反対に農作物や漁獲に悪影響を与える「やませ」は北海道・東北地方・関東地方の太平洋側に吹く、冷たく湿った北東の風で、長く続くと冷害の原因となります。

 九州や四国地方では、南から吹く風を南風(はえ)と呼び、特に梅雨期に吹く風を黒南風(くろはえ)、梅雨明けに吹く風を白南風(しろはえ)と呼んでいます。梅雨前線に南方の台風などの影響によって吹き込む南風は、黒い雲を呼び込み大雨を降らし、梅雨明けに太平洋高気圧から吹き出す南風は、晴天で雲は白くなることから、このような呼び方が生まれたものと思います。天気図のなかった頃、風向きは天候を知る手段でありました。

外に出れば、肌で風を感じますが、家の中ではどのように感じられたのか?隙間風に海・山の香りを感じたか、ヒューヒュー、さらさら、と音を感じたのか、風と言う字は、「かぜかんむり」の中にノの虫と書きます。草木の擦れ合う音に野の虫を思い浮かべたのか、定かではありません。

視察(2)弘前市・盛岡市

2009-07-07 16:53:57 | Weblog
 弘前市は、人口18万4千人あまり、弘前城の城下町として栄え、武家屋敷跡や明治・大正時代の洋館が残り、多くの観光客が訪れている。弘前城のある弘前公園の桜は有名で、桜祭りの期間には200万人以上の観光客で賑わう。
弘前市では、「わたしのアイデアポスト」という広聴事業と武家屋敷が点在する重要伝統的建造物群保存地区の取り組みを視察した。

 「私のアイデアポスト」は、市民が気軽に市政に関するアイデアや意見を提案できるよう設置しているもので、昭和59年に「市民アイデアポスト」としてスタート、平成19年に「私のアイデアポスト」と改称している。平成18年にWEBを開設、19年5月からは、ファクスによる受付を開始、平成20年度には、120件の提案があった。提案内容と回答を市のホームページに掲載し、毎月15日号の広報紙にも掲載している。提案内容と回答の公表により、提案件数が増加し、苦情の割合が減るなどの効果が表れている。
 
 伝統的建造物群保存地区は、弘前城の北側に位置する武家屋敷の残る地区で、生垣、薬医門、茅葺や板葺きの母屋が残されている。昭和53年に選定され、面積10.6haの地域に35件の伝統建造物がある。
 弘前市は、桜祭りのほか、夏のねぷた祭り、秋の弘前城菊と紅葉祭り、冬の雪燈籠祭りなど四季それぞれイベントが用意されている。2010年度、東北新幹線全線開通に向け、新たな観光客招致に官民一体で取り組んでいる。14:28分発つがる22号で次の視察地、盛岡市に向かう。途中、青森駅を過ぎると、東北新幹線青森新駅の建設現場を通過する。急ピッチで建設が進んでいる。
 
 盛岡市は、人口約30万人あまり、南部藩の城下町として栄え、岩手山などの山並みに囲まれた盆地で、北上川とその支流が幾筋も市街地を流れている。
盛岡市では、岩手県立美術館を視察した。岩手県立美術館は、平成13年10月、盛岡市中央公園内に開館した。鉄筋コンクリート造2階建て、延べ床面積13,000㎡、総事業費約108億円、建築工事費約92億5千万円で建設された。地元の作家を中心に近・現代の優れた作品の収集を行い、常設展示は、収集の柱である萬鉄五郎、松本俊介、船越保武の3人の作品を重点展示している。企画展示は、18年度ロダン展、19年度ピカソ展、20年度モディリアーニ展などを企画し多くの来場者を得ている。当日は、ロシアの国立トレチャコフ美術館展を開催しており、日本初公開の絵画も多く展示されていた。盛岡名物わんこそばを扱う店で昼食をとり、各市の取り組みを思い浮かべ帰路についた。

視察(1)三沢市・十和田市

2009-07-06 17:14:29 | Weblog
 6月29日から7月2日まで3泊4日の日程で、視察に出かけた。メンバーは、4期の藤原議員と同期の尾崎議員と私の3名、視察先は、青森県を中心に4市を視察した。
東北新幹線の終着駅八戸駅から東北本線に乗り換え、午後1時半過ぎ三沢市に着いた。この日は東北地方太平洋岸の季節風「やませ」が吹いており、肌寒く感じられた。三沢市には航空自衛隊三沢基地及び米軍三沢基地があり、ジャパンデー、アメリカンデーなど在住外国人との交流事業を活発に行っている。三沢市では、国際交流のキーステーションとして、平成16年5月にオープンした三沢市国際交流教育センターを視察した。当施設は、鉄筋コンクリート造2階建、延べ床面積5,847㎡の施設、総事業費約31億5千万円、建設費20億5千万円で、年間6万人以上の市民・外国人に利用されている。国際交流ラウンジ、263席のイベントホール、茶室、陶芸室などの交流施設のほか、定員60名の宿泊施設があり、日本文化理解教育講座、語学講座などの国際交流事業を行っている。三沢市は、平成17年の「三沢市英語教育推進特区」の認定を受けており、米軍三沢基地の外国人を英語指導助手として委嘱し、小学校全学年の授業に派遣している。多文化共生に対する意気込みが感じられる。

 翌朝、三沢駅から十和田観光電鉄に乗り、十和田市へ向かう。新渡戸稲造の祖父ら3代にわたって掘削された人工河川「稲生川」沿いに走る路線で、稲を育てる力強い水の流れと、土手に植えられた桜の若葉が心地よい。
十和田市では、平成20年4月の開館した十和田現代美術館を視察した。十和田現代美術館は、官庁街通りに建設され、新しいアートの体験をする施設として、交流の促進を図る参加型の施設運営を目指している。大小さまざまな展示室が点在し、それぞれに異なる作者の作品が展示され、さらに中庭、屋上、階段室などにも作品が展示されており、敷地、空間すべてがアートとなっている。22の常設展示のほか、企画展示室、市民活動スペース、野外イベントスペースなどが設けられており、市民の活動の拠点となっている。
 美術館前面の官庁通りには1.1Kmにわたり桜と松が植えられており、「日本の道百選」に選ばれている。通りには彫刻が点在し、アートイベントなども開催され、アートによるまちづくりが進められている。
昼食後、三沢駅に戻り、次の視察地弘前市に向かう。

セミの声

2009-07-05 09:23:00 | つれづれ草
"閑かさや岩にしみ入(る)蝉の声"松尾芭蕉が山形県の立石寺を訪れたときに読んだ句であります。立石寺はその名のとおり、奇岩が折り重なる杉林の山奥に立てられた寺で通称"山寺"と呼ばれています。芭蕉が訪れた時期は、旧暦5月27日(新暦7月13日)の午後2時過ぎあたり、参拝を終えたのは4時近くだと思います。この句に読まれたセミは「アブラゼミかニイニイゼミか」という論争がありましたが、梅雨明け前のこの頃、最も早く鳴き始めるセミはニイニイゼミであることからこの句に読まれたセミは、ニイニイゼミではないか、との結論が出されています。ニイニイゼミは、雑木林などの里山や桜や果樹などの広葉樹を好み、比較的群れを成して生息しています。杉の木がうっそう茂る山寺にはあまり似合いません。
 
「カナカナカナ」とかん高い声でなく"ヒグラシ"は暗い杉林を好みます。ヒグラシは杉の木に産卵し、朝や午後から夕方にかけて活動し、昼間は日陰の杉林の下層の茂みの中で休息します。鳴き始める時期はニイニイゼミと同じ頃「6月下旬」であります。よく鳴く時間帯も夕方で、芭蕉が山寺を訪れた時間帯と一致しています。"チィーチィー"と小さく長く鳴き続けるニイニイゼミよりも"カナカナカナ"とかん高く短く鳴き、余韻を残すヒグラシの鳴き方のほうがこの句の趣にあっているように思えます。どこか哀愁のある音色で"カナカナカナ"と岩に打ち付けるように響き、3~4秒で岩にしみこんでしまう、そんな鳴き方に聞こえます。

 関東以西に生息するクマゼミは"シャアシャアシャア"と力強く鳴きます。群をなして生息し、日の出とともに大合唱します。クマゼミは午前中しか鳴きません。代わりに午後になるとアブラゼミが鳴き出します。クマゼミが鳴き始めると梅雨明けであります。人が判断する梅雨明け宣言よりも確かであります。限られた地上での短い夏、乾燥を好むクマゼミの特性であると思われます。セミは地中に3年~7年生息し、地上に出てからの命は長くて2~3週間であります。間違って梅雨期に出てきてしまったのでは鳴くに鳴けません。地中でわずかな梅雨明けの気配を感じ取るのでしょう。
 
 クマゼミの大合唱から開放されるとツクツクボウシが鳴き始めます。夏が去り秋の気配を感じる頃であります。ツクツクボウシは、必ずクマゼミの後に出てきます。力強いクマゼミの鳴き声にはとてもかなわない、と思っているのでしょう。土の中でクマゼミの鳴き声を聞きながら、静かに出番を待っている幼虫の姿が思い浮かべられます。成虫になったセミの命ははかなく、"せめて精一杯鳴きたい"そんなセミの想いが感じられるセミの声であります。