石川与太読書紀行

ドロップアウト、オーガニック・ブンガク

出張ホスト

2009-09-18 19:01:49 | エッセイ
「出張ホスト―僕は一晩45000円で女性に抱かれる」一条和樹・著 2003年


デリヘルじゃなくって<デリホス>が語る回想。
内容のヤサグレぶりに惹かれた。興味本位で一読。

実体験を書いたポルノグラフィーとしては古典「我が秘密の生涯」から「カサノヴァ」まで多いし、もし作り話だったとしても「エマニュエル夫人」とかあるから、これをゲテモノとは思わない。ポルノ小説の王道パターンとすら思う。

さて肝心の中身。ディテール粗い。草稿って感じ。聞き書きだと思うけど、全体の構成が単調でドラマが無い。コラムみたいに羅列してるだけ。
失敗の責任はゴーストライターか?

オージー好みのアブノーマル夫婦、バージン、バイセクシャルetc・・個々のエピソードは面白しいのに、孤独な女性たちの姿に人間味を感じさせてくれないのが致命的な欠点。


★★

奇術師

2009-09-14 08:34:49 | 海外小説
「奇術師」クリストファー・プリースト著 1995年


映画「プレステージ」も傑作だったけど、原作も力作です。

物語は2人の魔術師の確執。その理由、顛末を各々の日記、手記を使って描き出す。トリッキーな語り口が面白い。アイディアの勝利か?

序盤は快適なテンポで傑作の予感。この前読んだ「魔法」は世評と違い凡作と受け取っていたから、見直した。
ちょっと日記に作為あるのが気になるけど、それも物語を盛り上げる意図だと納得することにした。許せる範囲内。あくまでもエンターティーメントの枠から食み出さない娯楽マナーを守っている。そこに物足りなさを感じる玄人方もいるやも知れないけど、ボクはそこに好感を持つ。

でも<透明人間>ネタへ急転する終盤、作劇に辻褄合わない箇所が見受けられて???スケール大きくし過ぎて、キャラクター処理が半端になってるし。<エピローグ>も蛇足だし。う~ん、残念。
この著者、繊細に見えて、実は大味。それは「魔法」読んで分かってたけど・・・。

★★★★