石川与太読書紀行

ドロップアウト、オーガニック・ブンガク

マスコミのタブーと「赤旗」

2009-08-27 09:06:06 | エッセイ
「マスコミのタブーと「赤旗」」韮沢忠雄・著 1988年


<マスコミのタブー>って言葉に惹かれて読んだ。

著者は「赤旗」記者。こなれた文書は読み易い。でも処所に顔出す赤旗/共産党賛美には白けまくり。

タブーの章は、敵対する団体への悪意剥き出しになる。共産党の<正義>だけが強調される。ジャーナリストとしての客観的な視点、何処かに消えてしまってます。ほとんど宗教並。
そこに目瞑れば、安保タブーはまず興味深いし、それの関連本は読みたい、と思った。

天皇制、電通、宗教のタブーが明かされるけど、それは「噂の真相」辺りでも挑戦してるので、もうスキャンダラスでもないと思う。
発売当時に読んだら、衝撃力も三割増だったのかも。

★★

今日もていねいに。

2009-08-25 20:57:12 | エッセイ
「今日もていねいに。」松浦弥太郎・著 2008年


彼に何が起こったの?これまでと視点、文書も別人みたいになってる。

まずカマトトぶった文書は気色悪い。ボクが初めて読んだのは「本業失格」で、かなり植草甚一意識した文書が微笑ましかったのを記憶している。しかし、ここにはJJスタイルは皆無。
何があったの?

最も噴飯なのは視点。数々の日常に於ける自分の実践を語り、それを<自分プロジェクト>と名付け、読者にも実践させようとする。「30分で出来る掃除に二時間掛ける幸せ」を説くエピソードには唖然とした。
これエッセイじゃなくって、<自己啓発本>です。

<変節>の瞬間に立ち会った気分。気持ち悪い。
何があったの?


地図から消された島

2009-08-22 07:53:12 | ルポ本(国内)
「地図から消された島 大久野島毒ガス工場」武田英子・著 1987年


広島の孤島で密かに作られた毒ガス工場。機密のために戦時中、地図からも抹殺される。島民も全て移住させられる。

話の軸点は肝心のその大久野島ではなく、中国での毒ガス使用の指摘。それにページ数かなり取る。タイトルと内容にズレがある。しかもそれが他書から抜き出し纏めただけに終始。既に知られた事実だけが語られるだけ。期待しただけに、かなりの肩透かし。

最終章では補償問題/治療の現実に踏み込む。そこだけは読み応えある。労働中に被ガスした患者の治療する医師の活動には敬服。
・・・でも取って付けた印象残すけど。

大久野島で働いた人々の息遣い感じられないのが、詰まらなかった理由。被ガス者の聞き書きを中心にするべきだったのでは?

★★

日本軍の毒ガス戦

2009-08-21 08:39:01 | エッセイ
「日本軍の毒ガス戦―迫られる遺棄弾処理」小原博人、山辺悠喜子、新井利男、岡田久雄・著 1997年


ここん所、<731部隊>関係のを追い掛けてます。
4人の著者が3章に分けて、その実態を暴くルポ本。

ただ事実だけを積み重ねた1、2章が圧巻。極秘に毒ガス使用してた事実が明らかに。被ガスの被害者の写真に目覆う。説得力を持って迫って来る。「読んだかいあった」と思った。

でも、熱く語っただけの3章には冷めた。そこの執筆者は元朝日新聞記者。いかにも朝日調な書き方。事実の積み重ねだけで、メッセージは十分に伝わったのに。蛇足か?外交での駆け引きの指摘は勉強になったけど。

★★★

七三一 追撃・そのとき幹部達は・・・

2009-08-20 16:08:49 | ルポ本(国内)
「七三一 追撃・そのとき幹部達は・・・」吉永春子・著 2001年


著者はTVドキュメンタリー製作者。これまでも<731部隊>を追求して来た方。
かなり衝撃的な内容を期待したけど、結果は散漫だった。調べたいこと多いの分かるけど、詰め込み過ぎて、どのテーマも未消化なまま終わる。

例えば胎児の腎臓のビジネス取り上げられる。著者はそれを毒ガスの実験に利用していると推測する。しかし、そんな事実は出て来ない。勝手な妄想で何十ページ割かれて、オチ無いまま次のテーマへと移る。茫然とした。

それでも、ミドリ十字の創設者が石井部隊の元隊員だったことの指摘に背筋ブルブル。帰還兵のその後こそ、もっとクローズアップしてほしかった。

★★

謀略戦-ドキュメント陸軍登戸研究所

2009-08-13 09:17:29 | ルポ本(国内)
「謀略戦-ドキュメント陸軍登戸研究所」斎藤充功・著 1987年


こんな時期だから、真面目に戦争モノも読まなくちゃ。

第二次大戦中、細菌兵器や風船爆弾を研究し<731部隊>とも繋がっていた研究所のベールを暴こうとするルポ。果たして、そのベールは剥ぎ取られたのか?

題材は刺激的なのに、研究所関係者の証言が浅くて、中身は半端に。核となる肝心の<人体実験>については誰も語らないまま・・・。 それは著者の追求が甘いからか?

そこで著者は関係者の<戦後>へと方向転換。戦後アメリカ渡りCIA関係の仕事就いた研究員がいるそうだ。そこでGHQやCIAとの関係を暴こうとするが、そこでも守秘義務に前で頓挫してしまう。何となく暗示して終わる。
渡米してまで取材した意味は?とツッコミたくなったけど・・・。

それでも最後まで読ませるのは、著者の構成力の確かさあったから。筆力はナカナカ。

★★★

夜這いの民俗学・夜這いの性愛編

2009-08-10 18:25:42 | エッセイ
「夜這いの民俗学・夜這いの性愛編」赤松啓介・著 1994年


別々に出てたのを文庫化で2in1に。これは奇書です。タイトルだけで、脳髄がジ~ンと痺れます。
こんな御仁を全く知らずにいたなんて。当時から高橋鉄~「あまとりあ」関係とも関係持たずに、孤高な活動されてたらしい。

著者の凄い所は、自身もまた<夜這い実践主義者>だったこと。そう、これは研究家の堅苦しい論考じゃなく、実践者の体験談。
自身の<筆下ろし>を嬉々として語ったかと思えば、終いには<輪姦> 経験までカミングアウトする始末。全く悪びれずに。
本書を研究書と取るのか、ただの好色爺の与太話と受け取るか?ボクは後者。どっちに受け取るにしろ、大らかだった時代の空気が香ってくることだけは確か。

ただし同じことを何度も何度も繰り返すのは饒舌。編集者のチェックの甘さにNG。それも酔っ払いの与太っぽくて笑えるけど。

★★★

聞き書き性人伝

2009-08-06 19:01:18 | ルポ本(国内)
「聞き書き性人伝 この人たちの端倪すべからざる好色魂を見よ」いそのえいたろう・著 1989年


七人の<性偉人>がその心情、半生を語る。小沢昭一にも同音な著書があるけど、それを意識してるに違いない。

ジゴロ、スワッパー、盗撮フェチ、一夫多妻主義者etc・・・其々の明け透けな語り口が、そのまま<芸>になってる。それが快楽実践主義者の面目躍如?実践者にしか語れないディテールに説得力がある。

テレクラ漫画家・成田アキラの章は出色の面白さ。抱腹絶倒するしかない。語るエピソードから色事の哀愁が漂う。

最近「ヨコハマメリー」で知ったばかりのゲイのシャンソン歌手・永登元次郎氏のチョイスに驚いた。

とっても人間臭く、その人の息遣い、体臭が香ってくる。それを引き出した著者の貢献も多きそうだ。続編を読みたい。

★★★