石川与太読書紀行

ドロップアウト、オーガニック・ブンガク

仮面を剥ぐ―文闘への招待

2007-01-27 16:00:39 | エッセイ
「仮面を剥ぐ―文闘への招待」竹中労・著 1983年

80年代の竹労はエアポケット期って感じもするけど、これはこれで熱のこもった力作になっています。骨太な文書にグイグイと引っ張られる。<反創価学会キャンペーン>と<中国の文化革命>の二本立て。バッタバッタと評論家やジャーナリストを斬り捨てて行く。
学生運動は過ぎ、左翼的な活動は、どうしても時代や世間から乖離してしまう。この著作も読み手との距離を考えてしまう。かっての左翼活動家を斬り捨てる場面には、遠い距離を感じてしまった。逆に今だからこそ<JCIA>の謀略を指摘した箇所は輝きを増すけど。

ブコウスキー 酔いどれ伝説

2007-01-18 17:57:10 | エッセイ
「ブコウスキー 酔いどれ伝説」ニーリ・チェルコフスキー・著 1998年


チャールズ・ブコウスキーの生前の知人が綴る伝説の数々。

バロウズやギンズバーグと同じ世代なのに、ドラッグより酒を、セックスより執筆することを愛し、旅に出ても「路上」のような素敵な出逢いなんて無い。そんな平凡な日常と勝負するように書き殴って行く。

家族との不和、容姿のコンプレックス、ドイツ人という差別・・・そんなトラウマが書く事に昇華していくのがイイ。ブコウスキーが再評価されるのは、そんな初期衝動の共感が多いと思う。
ドフトエフスキー「地下室の手記」に感動したという記述は、ちょっとイイ話。その人間像が生き生きと描かれているのがイイ。

★★★★

ばくち打ちの子守唄

2007-01-18 17:15:26 | 国内小説
「ばくち打ちの子守唄」阿佐田哲也・著 1984年


博打打ちの主人公のその名も<チンポの衆>の生き様に、優しく寄り添うようなヒロインは、博打の借金返済のためにトルコ風呂に売られたりしながら、それでも離れず、沖縄へ向かう飛行機の中で死んで行く。

文体は会話文が主体なので軽い印象を受けるけど、その行間から人生の儚さが滲み出してくる。それはいつもの阿佐田節。イカサマがバレてヤクザに脅される場面が印象的。マズマズです。

★★★

闇に消された原発被爆者

2007-01-18 17:00:32 | ルポ本(国内)
「闇に消された原発被爆者」樋口健二・著 1981年


これはコワイ本だ。社会派の写真家がカメラをペンに持ち替えて、原発被曝者を調査しインタビューして行く。
電力会社の杜撰な管理体制と対応が暴かれる。その衝撃たるや。被爆事故を隠すために医師と会社側が手を組んでいることも抉り出してみせる。

被曝者の証言にも背筋が凍るけど、圧巻は後半。取材のために施設内への立ち入りを許される。最後にプルトニウム移送のエピソードも語られる。

次はドキュメンタリーに撮ってほしい。マイケル・ムーアのように!

★★★★

芸術は恋愛だ

2007-01-11 22:44:49 | エッセイ
「芸術は恋愛だ」横尾忠則・著 1992年

横尾が語り下ろした芸術論やら神秘主義やら、60年代のドラッグ体験。ニューヨークへ渡っての狂乱の日々に時代を感じさせるけど、やはり面白い(笑える)のはUFOや交霊などの神秘主義者の面。何と三満由紀夫の霊と対話をしているそうだ。
芸術論には思わず膝を叩いた。曰く「マルセル・デュシャンを否定しなければ」と語るのは、アートとパフォーマンスの境界線を知っている著者の感性の鋭さを見直した。

ディープ・スロートの日々―リンダ・ラブレイス自伝

2007-01-11 22:27:29 | エッセイ
「ディープ・スロートの日々―リンダ・ラブレイス自伝」リンダ・ラブレイス・著 1980年

ハードコア・ポルノの古典「ディープ・スロート」の主演女優の壮絶なまでの回想録。未成年での出産から始まり、娼婦時代の地獄のような体験は圧巻。ヒモの暴力の日々、抜け出したが捕まって受けたアナルへの拷問の凄まじさ。とにかく成功するまでの前半は圧倒的。
スターになってからもヒモからの搾取が赤裸々に語られるが、それよりも登場する<セレブ>の裏側が興味深い。「プレイボーイ」誌のオーナー、ヒュー・へフナーとの乱交パーティ、サミー・デイビスJr夫妻とのスワッピング体験が語られて行く。ただ、それまでの自分を否定するオチには白けたけど・・・。

典子は、今

2007-01-11 15:39:16 | エッセイ
「典子は、今」松山善三、高峰秀子・立木義治・著 1981年


同名映画のメイキング本。企画の段階、撮影の裏話・苦労話まで。

その映画の方はパッとしなかったけど、こっちは面白い。松山の方はそこそこにして、高峰の方の軽快な文書がイイ。開けっぴろげで本音全開なのに、気品が漂うのは何故?毒舌の匙加減が絶妙。

しかし白眉は立木義治のヒロインを撮った写真。クローズアップで撮った意図が、ヒロインの生き様に肉薄しているような迫力と説得力を持っている。
こんな素晴らしい写真家とは知らなんだ。

★★★

偽原始人

2007-01-11 15:28:03 | 国内小説
「偽原始人」井上ひさし・著 1976年


第一級の娯楽作。コメディの傑作。

教育ママに押し付けられた熟通いに反抗する小学生のアノ手コノ手の騒動記。野坂昭如なら「ゲリラの群れ」のように暴走するけど、この人の作風は温和だから、ちゃんと現実の中へ着地する。

病院に潜入する序盤は結構グロイ笑い。後半はちょっとバランスが崩れるけど、軽快なテンポで気にならない。この人の中でもベストのクラスなのではないでしょうか。

★★★★

インチキ科学の解読法

2007-01-11 14:49:56 | エッセイ
「インチキ科学の解読法」マーティン・ガードナー・著 2004年


「ついつい信じてしまうトンデモ学説」と副題がついている。
カルト宗教から神秘主義までを、<科学>という濾過紙を使ってバッサリと斬捨てる快著。爽快な気分になる。
自分の中のメディアに洗脳された部分を癒されたような気分になった。今のメディアがどこだけ神秘主義を持上げる取り上げ方がされているかを、勝手に再確認。

<キリスト教>の強い影響力に背筋が凍るけど、それ以上にエジソンやニュートンの<山師>としての裏面が興味深い。まさに「天才とキチガイは紙一重」とは正解。ついでにフロイトにも毒舌をビシッ。

★★★★

SF的発想のすすめ―知的生活への逆説

2007-01-11 14:34:28 | エッセイ
「SF的発想のすすめ―知的生活への逆説」豊田有恒・著 1978年


これは面白い。知的好奇心をくすぐられる。手塚治虫のマンガと、邪馬台国伝説や「古事記」「日本書紀」が同居し、著者の思うまま自在に行ったり来たりする。軽妙で時に皮肉たっぷりな語り口がイイ。

今では忘れられている作家だけど、ちゃんと小説を読まなくちゃ。他のエッセイ本もチェックしなくちゃ。と思わせる。

★★★★