すずめ通信

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第349号 アメリカの税制の歴史を調べてみました(3)

2006-04-23 17:52:51 | Washington Report
【Washington】アメリカの税制の歴史について絞って書いてますが、税制決定の背景には、独立後の政体をどうするかという植民地13州の代表による時間をかけた徹底的議論がありました。議論は中央集権派と連邦派に分れ、最終的には州の政治は州が行う連邦制をとりました。連邦政府(中央政府)は、州際業務、対外業務を行うだけの限定的権力しか与えられず、立法府、行政府、司法府はそれぞれ独立を保ちながらも、三権の力が常に均衡を保つよう互いに監視、牽制する機能を持たせた憲法を制定しました。

連邦政府の州政治への干渉を最小限にすることを憲法で定めたため、連邦政府は必要経費を得るためにでさえ州の住民である個人への直接課税も思うにまかせず、本格的な個人所得税の導入には憲法改正の手続きが必要でした。では、昨日の続きを、憲法改正に踏み切ったところから始めます。

【16次(憲法)修正(続き)】連邦個人所得税導入のための憲法修正案は、物品税に変わり土地への課税を恐れる農場主を多く抱える南部の州の議員達から提案された。その結果、連邦政府が事業所得税、州の人口比に関係なく全員から「合法的に」稼いだ個人所得に対する税を徴収できる憲法改正法案が通り、1913年迄に36州が批准した。この時点では課税対象は所得50万ドル以上の人で、人口のわずか1パーセントであった。

新しい所得税法は「合法的な」所得をどのように決めるかに問題があった。1916年に所得税法を改正し、「合法的な」という言葉を所得税法から消し、すべての所得が課税対象になった。その結果、不法に得た所得にも課税できるようになり、密売業者などが所得税を払わなかった場合は脱税罪に問えるようになった。(勿論、密売業者などが正直に税を払う訳はないので、密売を摘発した時に取り損ねていた所得税を取るということなのだと思いますが...。なんか可笑しいですね。)

憲法修正による所得税の導入前は、ほとんどの国民が政府の知るところなしに私的な経済活動に携わることができ、個人も事業主も連邦政府の干渉なしに富を貯えて行った。しかし、個人所得税導入によって政府は個人の経済活動情報をすべて知る権利と必要が生じたため、議会は所得税申請を通じて政府が得た納税者に関する情報をある程度まで秘密情報と定めた。

【第一次世界大戦と1920年代】第一次大戦の戦費賄いのため個人所得税の課税対象者と率が引き上げられたが、1920年代の好景気で税率が何回も引き下げられた。しかし1929年の大恐慌の始まりで、政府は再び個人所得税率の引き上げや他の税の引き上げをしなければならなかった。

【社会福祉税】大恐慌は失業保険の導入、高齢者や障害者への援助導入の必要を生み、社会保障税が導入された。

(続く)
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