《『大凡の日々-妹尾義郎と宗教弾圧』(理崎 啓著、哲山堂)の表紙》
ではここからは、新しい章「五、弾圧、転向」に入る。理崎氏によれば、
昭和10年には、日本でもファシズムが流行したきた。在郷軍人会、青年団、消防団、各種学校団体から労働組合、農民組合までも国家主義化されて、ほとんど完全に近く軍事全盛、軍事万歳のファシズムの時代が到来しました、と機関誌『新興仏教』は報じている。…(投稿者略)…
ファシズムは反自由主義、反個人主義、反議会主義といわれる。戦後は悪の権化のように言われるが、この頃は、閉塞した政治状況を救う新運動との期待があった。
〈122p〉ファシズムは反自由主義、反個人主義、反議会主義といわれる。戦後は悪の権化のように言われるが、この頃は、閉塞した政治状況を救う新運動との期待があった。
という。私も「悪の権化」と思っていたのだが、それは後に歴史によって判断されたのであって、ファシズムが台頭してきた時は「閉塞した政治状況を救う新運動との期待があった」ということを知って、はっとした。今そのような政治状況が起こりつつあるのではなかろうかと。歴史は繰り返すといわれるから、心せねば。何となれば、
そうしたファシズム運動は行き詰まった金融資本の延命的転身策で、国民的立場を看板にしているが、無産大衆を資本家に売り渡すもの、と新興同盟は批判している。
〈122p〉と理崎氏は紹介していて、歴史の裁きを待たなくても、その時点で妹尾等はファシズム運動のまやかしを見抜いていたからだ。
また、理崎氏は次のようなことも教えてくれる。
この頃、新興宗教が隆盛になっていった。大本教の隆盛はいうまでもないが、ひとのみち教団は十年で五百万人に、成長の家は一、二年で百万人に膨れ上がった。ファッショ圧制下の民衆は不安から、無知のために新興宗教に流れてしまう。
〈124p〉しかし、大本教もひとのみち教団も弾圧されたのだそうだ。それは理崎氏によれば、「権力は成長する生きた宗教を神経症のように恐れた」〈125p〉からであると見ていた。さらに当局は、昭和14年には「宗教団体法を成立させ、戦時として宗教団体を総動員する体制を作っていく。…(投稿者略)…仏教、キリスト教の各派は合同を急ぐことになる」〈126p〉という。そして、仏教もキリスト教も時代の荒波に翻弄されていったということになる。
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