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《『塔建つるもの-宮沢賢治の信仰』(理崎 啓著、哲山堂)の表紙》
続けて理崎氏は、 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」――これが縁起の思想である。人間はあらゆる生命と交流して刻々と変化し成長していく。とすれば、自分だけが幸福で、周囲は皆不幸だということはありえない。つまり、世の中の人々が全て幸福にならなければ完全な幸福はないことになる。
〈138p〉と解説を続けている。
まずこの「縁起」という用語の意味が私には馴染みのものでなく、その意味が解らないので広辞苑を引いてみると、
【縁起】(因縁生起の意)
①〔仏〕一切の事物は固定的な実態をもたず、様々な原因(因)や条件(縁)が寄り集まってせいりつしているということ。仏教の根本思想。因縁。因果。
②事物の起原・沿革。由来。
③社寺などの由来または霊験などの伝説。また、それを記したもの。
④吉兆の前兆。きざし。
とあった。あっ、たしかに②~④の意味では使っていたなということを「認知症」の私は思い出した。①〔仏〕一切の事物は固定的な実態をもたず、様々な原因(因)や条件(縁)が寄り集まってせいりつしているということ。仏教の根本思想。因縁。因果。
②事物の起原・沿革。由来。
③社寺などの由来または霊験などの伝説。また、それを記したもの。
④吉兆の前兆。きざし。
そしてもちろん、理崎氏が使っているところの「縁起」とは〝①〟の意味でだろう。さりながら、「仏教の根本思想」というとまた私にはとても近づけない思想だから、今の私とすれば、
縁起≒〝因縁。因果〟
という近似式で赦してもらおう。
しかし、この近似式では今までどおりである。それは何がかというと、「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という論理が私にとっては今までどおり理解不能だということが、である。こうして、理崎氏に説明してもらうと以前よりは少し理解が深まったが、やはり私にとっては手強い。なにしろ、まず「ぜんたい幸福」という用語の意味、定義がはっきりしていないからだ。「ぜんたい幸福」等という用語は私が持っている辞典には載っていないし、その他の辞典等でも私が探した限りではなさそうだ。
さりとて、
「世界ぜんたいが幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」
では勿論ない。ただし、こちらの論理であればなんら解釈に迷うことはないし、こんな論理は現実にはあり得ないということもほぼ自明。なぜなら、ブータンは幸福度が世界一だと云われていることを思い出せば、「幸福」とは相対的なものであるということが容易に判るからである。そして、そのブータンでさえもいつまでもそうであるという保証はないだろう。そこには、人間の業がある(と私は思っている)からである。
延いては、この「人間の業」がある限りは、
世の中の人々が全て完全な幸福になる。
ということも、それこそ「あり得ない」とついつい私は思ってしまう。
いずれこの
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」
については、「ぜんたい幸福」という用語がどんな意味を持つのか、あるいはどう定義されるかによって、その解釈や結論は百人百様にならざるを得ないと私は現時点では思っている。譬えてみれば、土台がしっかりしていないのにその上に建物を建てるようなものだと、私には思えてならないのである。
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なお、ブログ『みちのくの山野草』にかつて投稿した
・「聖女の如き高瀬露」
・『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』
や、現在投稿中の
・『「羅須地人協会時代」再検証-「賢治研究」の更なる発展のために-』
がその際の資料となり得ると思います。
・「聖女の如き高瀬露」
・『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』
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・『「羅須地人協会時代」再検証-「賢治研究」の更なる発展のために-』
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