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雑感や書評など

羽生生純「恋の門 ハンディ版 (6)」

2005-07-26 08:46:16 | 書評
田嶋陽子がなんと言おうと、普通の女性は白馬の王子様を待っているのでしょうか?


羽生生純「恋の門 ハンディ版 (6)」。最終巻です。

蒼木と同じく漫画家を志す木背。
彼と恋乃と蒼木で、雑誌の賞に投稿します。

で、受賞できたのは木背だけ。
さらに、受賞者は、他の二人に命令できるという内輪の取り決めをしており、木背が考え付いたのは、「恋乃と一ヶ月お付き合いをする」というもの。

もちろん、漫画に負け、女も取られるかもしれない…………、そんな状況下で蒼木が冷静でいられるわけもなく。
また恋乃にしても蒼木とは違い、自分を優しく扱ってくれる木背に対して新鮮な魅力を感じてしまいます(そりゃ、落とそうとする女を邪険に扱う男はいないよな)。


そんなこんなで、気まずくなった恋乃は蒼木の家を出てしまうのですが、頼った先でレイプという惨い目に遭ってしまいます。

癒しのようない傷を背負った恋乃は一旦は蒼木のアパートに戻ってきますが、最早、二人の関係は修復不可能となっていて、ついに破局を迎えます。

その際の、恋乃決意。
私の物語の主役は私なんだ
私が止まれば私の物語は死ぬ
私の現実が どんなに汗と血と毛穴と臭いと恐怖にまみれても
私にはやっぱりこれしかない
今から準備すれば冬コミに間に合うかもしれない
私はまだ終わらない
そのためには
全てをリセットして
0から始めなきゃならない
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (6)」122~123頁 Beam comix
蒼木が自作の持ち込みで現実とぶち当たったように、恋乃もまた、二次元ではなく現実と向き合う覚悟を決めます。


これで終わりで悲劇の幕切れというのも手だったのでしょうが、最後は、蒼木が恋乃を迎えにいってハッピーエンドです。
そのシーンは、臭いとは言え、やはり感動的だったりします。

蒼木は、落ちた連載の代原とは言え、どうにか自作が雑誌に載ります。
その物語というのは、レイプ犯に対して復讐するというもの。

雑誌に掲載されたということが社会に受け入れられたという象徴となっていますが、だからと言って自己の世界を完全に放棄したわけではないことが分かります。
妥協ではなく、プロの技術を使って、現実に受け入れ始めたことが分かります。ようは漫画家として成長した、ということです。

そして、その漫画に登場していた主人公の格好になって、傷心の恋乃の前に登場します。
かつては、あれほど嫌がっていたコスプレですが、恋乃のためにやってのけるのです。
自分の世界に閉じこもっているだけではなく、相手の世界をも理解しようとしていることが分かります。ようは男として成長した、ということです。


この物語の当初では「経済的にも精神的にも証恋乃が蒼木門を庇護する」という構図となっていましたが、最終的には二人は経済的には互角となり、「精神的には蒼木門が証恋乃を庇護する」という転倒で幕を閉じます。

そこらへんが「女は男が守るもの」的な、ちょいっと古臭い感じもしないでもないですが、それだけに安心感のあるラストになっていました。


さて、映画はどんなふうに味付けされいるのか、楽しみです。


これまでの書評。
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (1)」なつかしいなぁ、「ペーゲー」
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (2)」夫婦喧嘩は犬も……
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (3)」父、登場。
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (4)」芸術は爆発だぁ!
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (5)」「この作品の存在そのものが芸術たり得ている」かぁ…………


恋の門 (6)

エンターブレイン

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