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羽生生純「恋の門 ハンディ版 (2)」

2005-07-03 08:56:05 | 書評
夫婦喧嘩は犬も……


初体験に失敗のショックで旅に出た蒼木門。
金がないので、自分の作品(石が貼り付けてある、意味不明の漫画)で、支払いの代わりにしようとしますが、
「警察呼んで」
「と 年寄りだからって なめんじゃねェぞ コラ!!」
「うちは仏教徒ですから」
「それに価値があるんなら 俺のクソは重要文化財だ」
「お客さん困るよ ゴミ捨てられてっちゃあ」
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (2)」8~9頁 Beam comix
と言われる始末。
最後には、ただ酒を飲もうとして(蒼木門にしてみると、漫画が代金となるはずだったのでしょうが)、ボコにされます。

でも、
理解できないものは全て病気…
あんた知ってるか
そういうのを思考停止っつうん…
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (2)」13頁 Beam comix
と懲りずに負け惜しみを言う男。

見事な駄目人間です。


でも、一方で、証恋乃もかなりの強烈なキャラです。彼氏と喧嘩をして、怒りすぎたことを、こんなふうに後悔しています。
門くんだって ワザとやったんじゃない
むしろ私がちゃんと言わなかったから……
大事な本 汚されて我を忘れちゃったけど……
あまりキツく言うと また逃げちゃうかも知れない……
逃げたら また違う女の所へ行くかも知れない
もしその女がコスプレイヤーで
門くんにもコスプレさせて
いつかコスパで ばったり会ったりしたら……
嫌ッ
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (2)」143~144頁 Beam comix
基準はあくまで、コスプレです。自分の世界最優先です。

この二つの異様な性格が一緒に暮らしていく姿は、なんとも奇妙な心情にしてくれます。

第十三話「諍い」など、この二人の落差が見事に作用しているのではないでしょうか?

声優の顔のついた雑誌を汚されたことに怒っている恋乃を見ているときは、蒼木と同じように「なにもそんなに怒ることないのに」と読者である自分も思ってしまいます。
が、報復に石を割られてしまって嘆き怒っている蒼木を見ているときは、恋乃と同じように「なにもそんなものにこだわることはないのに」と読者である自分も思ってしまいます。

で、最後は、蒼木は雑誌を古本屋から探し出し、恋乃は代わりの石を持って帰ってきます。しかし、雑誌は切り抜きだらけで恋乃には不満なものだし、石も以前のものとは全く違っており蒼木には納得できるものではありません。
しかし、二人は互いを思いやる気持ちに感動して仲直りするわけです。

これは、O・ヘンリーの「賢者たちの贈り物」のパクリなんでしょう。「賢者たちの贈り物」ですと、読者も感動! ですが、「恋の門」では「あほか、お前ら。勝手にやってろ」という読後感。

見事な独自性を描き出しております。


「電車男」映画版では、オタク男がちゃんと描かれていると評判ですが(未見)、「恋の門」映画版も、ちゃんと「オタク女の痛さ」と「勘違い芸術家志望青年のマヌケさ」が描かれているのかな?


恋の門 ハンディ版 (2)

エンターブレイン

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