東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【判例紹介】 平成6年度の固定資産税評価が適正な時価を上回り違法とされた事例

2006年06月15日 | 借地・借家に共通の問題

 判例紹介

  固定資産税台帳に登録された平成6年度の価格が賦課期日における適正な時価を上回るものとして違法とされた事例 東京高裁平成12年4月19日判決、判例時報1729号38頁)

(事実)
 自治省は、平成6年度の土地の評価について、地価公示価格あるいは鑑定価格の7割程度を目途とする旨の平成4年1月22日自治省3号事務次官通達(いわゆる7割通達)を発した上、平成4年7月1日を鑑定時点とし、平成5年1月1日を価格認定時点とし、その間の地価下落率を勘案し、時価の7割を目途として、標準宅地の価格を認定すべき旨の通知を発した。(平成4年11月26日自治省28号税務局資産評価室長通知)

 これに対して、従前の評価水準が地価公示価格の2~3割であったのが、著しく高額な価格になったこと及び平成5年から6年にかけて大幅な地価下落があったことから、これらの点が評価基準に反映されていないとして都市部を中心に固定資産評価審査委員会に審査申出や審査決定に対する取り消し訴訟が相次いだ。

 本件は、原告らは、港区赤坂に所在する土地に係かる案件である。 1審の東京地裁判決は、平成5年1月1日から平成6年1月1日までの地価下落率を平成4年7月1日から平成5年1月1日までの間の地価下落率があるものと想定してこれを評価に反映させるのが相当としたが、東京都固定資産評価審査委員会は、これを不服として、東京高等裁判所に控訴を申立てた。

(争点)
 固定資産課税台帳に登録された価格が時価を上回るか否か。

(判決要旨)
 東京高栽判決は、平成5年1月1日から平成6年1月1日までの地価下落率33・5%が、最も地価下落率を正確に反映するものとして採用し、これを超える部分について審査の申出を棄却した決定を取り消した。

(短評)
 地方税法では、宅地に課せられる固定資産税は、賦課期日における価格に税率を乗じたものとされている。そして、価格については、「適正な時価」とされ、賦課期日については、3年毎の1月1日とされている。

 本判決は、7割通達について、登録価格が賦課期日における適正な時価を下回る場合には当該登録価格が是認されるが、登録価格が適正な時価を上回る場合には、その限度で取り消すとしたものである。このことは、7割通達が適正な時価を超えないよう控え目な算定をしていることを認めるものであり、結局、年間の地価下落率が3割を超えない限り違法にならないとしたものである。

 この結果、その後の平成9年、平成12年の評価替えについては、地価下落率が3割を超えない以上、違法の問題は発生しないことになる。なお、本件は最高裁に上告されており、今後の判断が待たれる。

(2001.02.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

東京・台東借地借家人組合

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