夢職で 高貴高齢者の 叫び

          

シネマ歌舞伎 阿古屋

2017年01月11日 | 映画演劇など

 (YouTube借用)

 

シネマ歌舞伎を観に女房と宇都宮へ行った。

映画館の前で玉三郎の扮する「阿古屋」のポスターを見ていたら、80代と思われる夫婦も、ポスターを見に来た。

挨拶を交わすと、婆さんは若い頃、玉三郎の歌舞伎を観たことがあると、嬉々として話す。

爺さんは、「この帯はどのようにして織ったのだろうか?」と言いながら、ポスターを見つめている。

歌舞伎には興味がないし、映画を観るつもりもないが、帯の織り方を知りたいと言うのだ。

かつて織物関係の仕事をしていた人であろうか。

 

映画が始まった。

歌舞伎座の客席からは、見ることができない舞台裏が映る。

役者たちの稽古や化粧の様子などだ。

舞台装置を作る人たち、衣装やかつらの整理をする人たちなど、裏方の活動などが紹介される。

大勢のスタッフに支えられながら、役者が舞台に登場する様子が映された。

花道から役人たちに引き出されてくる遊女・阿古屋。

女形・玉三郎の登場だ。

着物の前には帯を垂れ下げている。

帯はクジャクに桜の花をあしらっている。

代官・重忠の前に引き出される阿古屋。

阿古屋は恋人の平家の武将・景清の行方を知っているだろうと問い詰められる。

しかし、阿古屋は景清の行方は知らぬ存ぜぬと応える。

そこで重忠は、阿古屋に琴、三味線、胡弓を奏でるように命じる。

もし、音色に乱れがあれば心の乱れ、景清の居場所を知っているはずと重忠は推理する。

琴攻め、三味線攻め、胡弓攻めだ。

しかし、阿古屋は乱れることなく三つの楽器を弾きこなす。

重忠は、楽器を狂うことなく演じた阿古屋は、うそ偽りを言っていないと判断し、無罪放免とする物語だ。

 

見せ場は、玉三郎の琴・三味線・胡弓の演奏。

現在、阿古屋を演じることができる役者は玉三郎ただ一人とのこと。

玉三郎のしなやかな立ち居振る舞いに魅せられた。

 

阿古屋が胡弓を膝に置いて演奏しているとき、クジャクの羽の織物が動くのを見つけた。

羽は平面的な織り方ではない。 

一枚一枚織られているか、一枚一枚刺繍されているように見える。

クジャクの羽は立体的に重ねて作られているのだ。

だから、帯へ胡弓の力がかかった時、羽が一枚一枚動くのだ。

映画館の前で、爺さんがポスターを不思議そうに見つめていたのは、重ね織りに気が付き、帯の織り方に興味を持ったのではなかったろうかと考えた。

爺さんのすごい眼力に驚く。

 

シネマ歌舞伎を今回初めて観た。 

銀座の歌舞伎へはなかなか行けないが、シネマだったら気軽に行けそうだ。

2月は片岡仁左衛門の「女殺油地獄」とのこと。


(ポスターをガラスごしに撮影しました)

 

2017-01-10