山型のアール天井が包む木の家。住む人にびったりの空間で昔からそこにあった家のようでした。モビィーディックという宮脇まゆみさんの湖畔の木の家を思い出しました。スケール感やプロポーションが的確で、どこを歩いてみても体にぴったりの感じがしました。でも部分を見ていくとあちこちに新田さんの挑戦も感じました。懐古的なのではなく、時間横断的な新田さんのアプローチが絶妙でした。
戸田さんの空間は、言葉に表しにくい性格を持っていると考えています。「逸脱」や「混在」といった操作が今回もかなり感じられました。南と北面での建物の表現もかなり違いました。斜面地に建っているのですが、そのあり方もそびえるでもなく、這うでもなく、浮かぶでもなく。と両義性を感じてしまいました。全体が明確な焦点を絞れない構成になっていると思いました。最後に斜面を登って眼下の全景を見渡してみて、「雲」のような屋根を見て初めて、その全体が腑に落ちた気がしました。環境としての建築という言葉が戸田さんの口から出ていましたが、ここからの建物の姿は、非常にやさしく柔らかく感動的でした。