Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

「がんばれ!秋田内陸線」を読んで

2005-02-14 06:19:18 | 読書録(鉄道)
地方のローカル私鉄、特に第三セクター鉄道についてまとめた本を商業ベースで見かけることは少ない。
この種の本は購読層が限定されることもあって大手出版社ではなかなか出してくれない。従って、今回取り上げる本のように地方の中小出版社の頑張りに期待するしかないというのが現状である。
ちなみに、この本を出した無明舎出版は秋田市にある。

この本はその題名通り、秋田内陸縦貫鉄道を応援し、その魅力を紹介するガイドブックである。
ページをめくる度に沿線風景が乗客の視点から描かれている。
その文章も過度にマニアックでなく、またミーハーでもなく、淡々としている筆致で路線の魅力はしっかりと伝わってくる。
また、秋田内陸縦貫鉄道線の成立経緯、経営状況の推移、厳しい経営状況の結果として生じた存続問題についてもコンパクトによくまとめられている。
特にこの本で一番良かったと思うのは、「地元・現場・サポーターの声」として行政、サポーター及び運転士、車掌、車両及び軌道保守といった現場の人々、地元の人々の声を拾い上げて整理している。何故鉄道を残さなければならないか、残すには何が必要か、この本にはそれが凝縮されているように思う。

秋田内陸縦貫鉄道の存続に向けて2002年度から「がんばる三年間」と称して列車内のフリーマーケット開催等様々な取り組みがなされている事も紹介されている。車両の動きは鉄道雑誌やインターネットで見ることはできるが、そういった地道な活動を知る機会はそうそうないので、年表形式とはいえ非常に勉強になる。

惜しむらくは、サポーター活動の詳細などをもっと知りたいのだがコンパクトにまとまったせいか、そのあたり触れられていないのが残念な点か。
それでも、本としては100ページ足らず、あとがきには「ブックレット」と表現してあるが、ガイドブックとして現地へ持って行ってもいい出来だと思う。

そういえば、本書で「使用済乗車券セットの商品開発」という言葉が出てきたので、公式HPを見たら、使用済乗車券セットや記念乗車券がどれも100円で売られていた。
有効期限外ということで非常に安い価格に設定したと思うが、買う側から見れば有り難い。しかし、安すぎるという印象もある。増収を目的とするのであればもう少し高い値段にしてもいいのではないか、そんなことを考えてしまった。

<データ>
「がんばれ!秋田内陸線」大穂耕一郎編 無明舎出版
価格900円(本体)

最新の画像もっと見る