Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

公募は不採用。鹿島鉄道の廃線が正式に決まる。

2006-12-25 07:19:28 | 鉄道(地方・専用線など)
今年2月に廃止を表明し、それ以降も市民団体・一部の行政サイドを中心に存続に向けた動きが見られた鹿島鉄道。
それ故に「廃止確定」と言われていても、ゼロに近い確率であっても期待を持っていた人はいると思う。
しかし、その命運は今度こそ決した。

「茨城の鹿島鉄道が廃線へ 引き継ぎ会社公募、採用なし」(asahi.com、12/24)

記事を整理してみる。
○鹿島鉄道の廃線が24日開催された鹿島鉄道対策協議会で決まった。
○鹿島鉄道の引き継ぎ事業者として公募に名乗り出ていた「鹿島鉄道再生ネットワーク」と「トラベルプランニングオフィス(TPO)はいずれも不採用。
○公募不採用とした理由は以下のとおり。
・茨城県と4市は来年度から5年間で6.5億円を限度に支援を予定しているものの、それを超える負担が生じる可能性が高い
・無償で鹿島鉄道から施設の移譲を受けるのは困難 等

結局、二週間で公募を行ったのは一体何だったのかと思う。
このような短期間で審査に耐えられる案を作ることも難しかっただろう。
と同時に、「名目」だけの公募なら実施せずに代替交通機関の検討に入った方が良かったのではないかと結果を見て思う。
不採用理由として挙げられている点もかねてから指摘されていた点であり、新味はない。

加えて、来年4月から鹿島鉄道の事業を承継するというのも実務的には難しい話だと思っていたので、ヒアリングで「鹿島鉄道再生ネットワーク」が求めた「一年間の廃止延期」も頷ける点はあった。
しかし、この点についても鹿島鉄道が応じなかったということになる。
こうした要素を積み上げていけば来年3月末での廃線という結論は動かす方が難しいと思うのだが、あえて公募を行った意図は何だろうと結果を見て思う。
やはり存続を求めた市民団体への幕引き、もっと言えば「ガス抜き」を意図したものだろうか。
そんな人を食ったやり方もないと思うし、そのような形だけの公募で失った時間は損失と言うほかない。

いすれにしても、2月の廃止表明からちょうど10ヶ月。
鹿島鉄道の廃線は確定した。
廃止表明から確定までここまで時間がかかった事例はちょっと聞いたことがない。
これまでの経緯を見ると、鹿島鉄道の廃止表明に対し行政サイドが一方的に「存続」という思いを言い続け、結局両者の意向は交わることがなかった。
市民団体の活動内容も然り。
大規模な存続活動が実を結ばなかったということ、そしてそれが利用客増に結びつかなかったこと、存続に至らなかったという結末について、今後議論を要する点ではないだろうか。

さて、鹿島鉄道の廃線が確定したことで次の焦点は代替バスをどうするか。
これまでの議論では殆ど論点に挙がっていない問題を年明け以降、廃止までの3ヶ月でどう決着を着けるのか。
鹿島鉄道対策協議会は解散するものの、交通弱者の足をどうするかという問題は解決するどころか、更に悪化する可能性は高い。
特に鉄道を敬遠して自家用車での送迎や原付通学をしている通学生がバスに戻ってくるという印象は受けない。
スクールバス的に各学校を回る位の路線設定、運賃の引き下げをしないと通学生の利用は見込めないと思う。
沿線自治体と鹿島鉄道、親会社の関東鉄道がどのように調整を図ってくるか注目したいところだ。

ただ、代替バスを走らせるとしても鹿島鉄道の時のように市民団体の協力が得られるとは考えにくい。
好むと好まざるとに関わらず、不採算が見込まれる代替バスに行政が関与する度合いは今より大きくなるだろう。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
残念です (ZENTAMA)
2006-12-25 09:33:26
時間がかかったのは県議選の影響でしょう。廃止確定後に選挙の場合、現職が落選する確率が高いからね。



廃止は赤字が原因と言うより、2007年問題で常総線龍ヶ崎線の運行する社員を補う為が本音でしょう。気動車の免許を持っている運転士を関東鉄道本体に戻したかったのでしょう。



現状ではバス転換でも仕方の無い輸送量。問題は百里空港が開業後のアクセス。最寄り駅からタクシーで六千円以上かかりそう。
代替えバスは (珠洲)
2006-12-25 10:22:00
すでにダイヤも確定済みだと聞いています。
なので、移行はすんなり行くでしょう。

なにより廃止確定が残念。

地元土建業界の圧力もかなりあったとのことなので、覆せなかったのではないでしょうか。
一部だけでも… (MAKIKYU)
2006-12-25 19:42:40
こんばんは。

鹿島鉄道の全線廃止がこれで確定になってしまいましたが、利用客が割合多く、列車本数もそれなりに運行されている石岡方(常陸小川辺りまで)だけでも、老朽化した旧型車を一掃してまだ使えるKR-500形だけ運行することは出来なかったものか、考えさせられます。

また路線バスに代替するにしても、現在この一体を走っている路線バスの賃率で走らせると、ただでさえ割高な鹿島鉄道(30㎞足らずで1000円を超えます)並みか、下手するとそれ以上という事も考えられます。

そうなると実質的に本当にそれしか利用できない人間のみの利用に限られてしまいますので、名鉄の一部廃線代替バスの様に割安なバスを自治体主導で走らせ、現行より利用しやすくする施策が必要かと思いますが、今の沿線自治体の対応を見ていると、何処までやるのかは全く未知数ですね。