【前書き】
京都迎賓館の最初のお客様としてブッシュ氏を招いて、日米首脳会談が行われました。日米関係の強固姿勢を突き進む日本は、正しいのか?誤りなのか?国内社説から読み取りましょう。
【ブッシュ氏から一言】
・【ブッシュ大統領はアジア訪問について「テロとの戦いや自由を拡大させるために何をすべきかについて語り続ける機会になる」と語っている。】(世界日報)
【会談前に行われたこと】
・【在日米軍再編、自衛隊のイラク駐留延長、米国産牛肉の輸入再開などの懸案は首脳会談までに方向性が固まり、会談では日本側の約束実行を促す意味合いが込められた。】(京都新聞)
【①米軍再編】
・【私たちが問題にしているのは、日米同盟強化の機軸となる米軍基地を国土の0・6%しかない沖縄になぜ75%、四分の三も押し付け、負担を強いるのか―ということだ。】(沖縄タイムス)
【小泉氏の発言】
・【小泉首相は大統領に、米軍再編に伴って基地負担が増える自治体が反対していることに、「日本の安全全体を考えて対応する。何とか理解を得て実現を図る」と約束した。】(読売新聞)
【沖縄県の反論】
・【県民はまた、橋本龍太郎元首相が九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告を伝える際、基地問題について「地元の頭越しにはしない」と述べたことも忘れてはいない。】(沖縄タイムス)
【足りないモノ】
・【米軍基地の再編に対する地元の反発が強まっているが、原因は国益よりも「県益」や「市益」優先の傾向だけではない。首相の国民説得が不在であることが挙げられる。】(世界日報)
【対談での結論】
・【両首脳は日米間の懸案になっている在日米軍再編について、来年三月までに決着させることを確認した。】(新潟日報)
【②自衛隊イラク派遣延長】
・【イラクで活動する自衛隊の派遣期限が12月14日に迫る。首相は「国際社会の一員として日本も一緒にやっていく」と派遣延長の方針を明確にした。】(河北新報)
【復興支援?】
・【実際、イラクに駐留する陸上自衛隊部隊は主要活動の給水支援を終え、一定の役割は果たした。国際貢献といいながら、米軍に付き合って残っているだけではないかとの疑念がある。「過剰な対米配慮」という批判が噴出してもおかしくない。】(東京新聞)
【イラク住民との関係】
・【これまで一人の負傷者も出ない現地での活動は地元住民との関係の良好さを示し、世界から注目されている。精強なうえ、住民と同じ目線という陸自の活動は、平和建設のための「国際公共財」ともいえ、延長は当然だ。撤退も地元住民から拍手で送られることを第一に考えなくてはなるまい。】(産経新聞)
【いつまで延長?】
・【イラク南部の治安を受け持つ英、オーストラリア軍は来年5月に撤退の意向とされる。】(河北新報)
【③牛肉輸入再開】
・【日本側は牛海綿状脳症(BSE)問題で禁輸していた米国産牛肉の輸入再開方針を固めた。】(中国新聞)
【④日中関係】
・【急速な経済成長を背景にした中国の軍事大国化は、アジア太平洋地域の安全保障にとって大きな懸念材料だ。中国は、この地域での米国の影響力を排除し、主導権確立を目指す動きを強めている。】(読売新聞)
【脅威論】
・【資源獲得に狂奔し、不透明な軍事力増強を続け、潜水艦の領海侵犯が相次ぐ中国の狙いは台湾制圧にとどまらない方向に進んでおり、わが国にとって大きな潜在的脅威となっている。】(世界日報)
【価値観の違い】
・【中国は、共産党一党独裁体制だ。自由主義、民主主義などの価値観を日本とは共有していない。日米同盟関係に代わって、日中関係を基軸に地域の平和と安定を築ける、と考えるのは非現実的だ。】(読売新聞)
【⑤集団的自衛権】
・【懸念されるのは日米の軍事的一体化だ。インド洋やイラクへの自衛隊派遣、米国のミサイル防衛(MD)への参加など、集団的自衛権の行使に抵触する恐れのある決定が次々になされているという現状がある。】
【新憲法草案】
・【自民党の新憲法草案は問題点が多いが、それでも「自らを守る責務」を前文に盛り込み「自衛軍」保持を明記したのも、そのような意識の変化を反映したものだろう。国家として当然の権利である集団的自衛権の行使も安全保障基本法に委ねられ、日米防衛協力の最大の障害が除かれようとしている。】(世界日報)
【会談後・・・】
・【会談後の共同記者会見で、小泉首相は「米国はかけがえのない同盟国だ。日米関係がよければよいほど中国、韓国、アジア諸国をはじめ世界各国と良好な関係を築ける」と日米同盟最優先の外交観を率直に語った。】(毎日新聞)
【批判的な意見】
・【米国への配慮が民主主義に優先してしまっている。順番が逆ではないか。】(北海道新聞)
・【「イエスマン」は都合のいい存在ではあっても、決して尊敬すべき友人にはなりえない。強い者に向かっても、言うべきことはきちっと言う存在こそ持つべき友人である。】(中国新聞)
・【対米一辺倒、アジア軽視の外交姿勢では日米同盟は「アジア地域の安定と安全保障の支柱」にはなり得ない。日本は米国、アジアとの距離を測り直し、柔軟な外交戦略の立て直しを急ぐことが必要なときである。】(西日本新聞)
【まとめ】
・【小泉・ブッシュ関係を軸とする現在の日米関係は永遠ではない。小泉首相は2006年9月には退陣する。ブッシュ大統領の任期は09年1月までだが、08年はじめに大統領選挙が始まれば、次はだれかが世界の関心になる。小泉・ブッシュ時代が長い日米関係史で例外的とさえ思えるほど良好なのは事実だろう。】(日経新聞)
【後書き】
意外にも日米同盟の有効性を述べている社説は多かったです。「左派=反米」というわけではないようですね。今回、朝日新聞は除外しましたがそれ以外にも批判的な意見を述べていた社説がありました。特に中国新聞は、「米国との友人関係」を謳いながら、日本外交を批判している。「真の友人なら・・・」という表現はどうなんでしょう?近所の友達と約束事するのとは違うのですが・・・。
もう一つの気になったのが産経の記事。サマワへ派遣されている自衛隊の情報は少ないです。サマワ住民の反米思想の煽りから、米国に加担している自衛隊(日本)の撤退を求める動きがあることを聞きました。確かに死者は出ていませんが、地元住民との良好な関係が築かれているかは疑問なところです。生活水準の向上に留まらず、地元住民の雇用斡旋などイラクが自立できる国家になるまでは時間がかかると思います。ただ、テロ活動などの反発に絶えれるのも時間の問題です。
問題を幾つか挙げましたが、会談前に慌てて米国のご機嫌をとるような判断を下したのでは?という意見はあります。確かにどれも米国を意識したものでしょう。ただ、日米関係を強固にすることが国益に繋がるというのは確かなこと。米国を敵に回して生き抜いていけるほど、日本が強い国だとは思えません。批判的意見にも一理あるのは、国民への説明不足です。米国一辺倒の小泉氏は、国内で強権を振るおうとしている、と言われてもしょうがない。「米国のために国民を犠牲にする」と反論されるのは当然であって、そこの説得を欠いたら後々ツケが回ってくるようにも思います。
日本は経済大国であり、軍事力も持っていると言われますが、それもこれも米国あってのこと。日経が述べているように、ブッシュ氏は支持率が低下し、小泉氏は任期一年を切っている。今後の日米関係をどうするかも考えなければならない時期の日米首脳会談は有効だったと思います。今後の日本はどうあるべきか?これからも核の傘の下で米国追随を続けるべきでしょうか。米国か世界のルールブックのようになっている現状からしても、日米同盟を軽薄なものにする手段はないと思います。ただ、これからの世界情勢次第では、日本も別の選択を強いられるかもしれません。それまでは、米国を利用するくらいの強かさが欲しいものです。
【参考資料】
読売新聞 11月17日社説【日米首脳会談 東アジア情勢が迫る同盟強化】
産経新聞 11月17日主張【日米首脳会談 「強固な同盟」の意味重い】
毎日新聞 11月17日社説【日米首脳会談 共感を得てこその同盟だ】
日経新聞 11月17日社説【アジアに民主主義を照射した米大統領】
北海道新聞 11月17日社説【日米首脳会談 日本の主体性が見えぬ】
河北新報 11月16日社説【日米首脳会談 首相は外交戦略示し得たか】
東京新聞 11月17日社説【日米首脳会談 『蜜月』とはいうものの】
中国新聞 11月17日社説【日米首脳会談 緊密ぶり誇示には懸念】
西日本新聞 11月16日社説【アジア安定に役立つか 日米同盟強化】
新潟日報 11月17日社説【日米首脳会談 同盟強化だけでいいか】
京都新聞 11月17日社説【日米首脳会談 同盟強化の宿題は重い】
高知新聞 11月17日社説【日米首脳会議 首相に重い説明責任】
沖縄タイムス 11月17日社説【日米首脳会談 沖縄を捨て石にするな】
世界日報 11月16日社説【日米首脳会談 同盟関係深化の好機とせよ】
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京都迎賓館の最初のお客様としてブッシュ氏を招いて、日米首脳会談が行われました。日米関係の強固姿勢を突き進む日本は、正しいのか?誤りなのか?国内社説から読み取りましょう。
【ブッシュ氏から一言】
・【ブッシュ大統領はアジア訪問について「テロとの戦いや自由を拡大させるために何をすべきかについて語り続ける機会になる」と語っている。】(世界日報)
【会談前に行われたこと】
・【在日米軍再編、自衛隊のイラク駐留延長、米国産牛肉の輸入再開などの懸案は首脳会談までに方向性が固まり、会談では日本側の約束実行を促す意味合いが込められた。】(京都新聞)
【①米軍再編】
・【私たちが問題にしているのは、日米同盟強化の機軸となる米軍基地を国土の0・6%しかない沖縄になぜ75%、四分の三も押し付け、負担を強いるのか―ということだ。】(沖縄タイムス)
【小泉氏の発言】
・【小泉首相は大統領に、米軍再編に伴って基地負担が増える自治体が反対していることに、「日本の安全全体を考えて対応する。何とか理解を得て実現を図る」と約束した。】(読売新聞)
【沖縄県の反論】
・【県民はまた、橋本龍太郎元首相が九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告を伝える際、基地問題について「地元の頭越しにはしない」と述べたことも忘れてはいない。】(沖縄タイムス)
【足りないモノ】
・【米軍基地の再編に対する地元の反発が強まっているが、原因は国益よりも「県益」や「市益」優先の傾向だけではない。首相の国民説得が不在であることが挙げられる。】(世界日報)
【対談での結論】
・【両首脳は日米間の懸案になっている在日米軍再編について、来年三月までに決着させることを確認した。】(新潟日報)
【②自衛隊イラク派遣延長】
・【イラクで活動する自衛隊の派遣期限が12月14日に迫る。首相は「国際社会の一員として日本も一緒にやっていく」と派遣延長の方針を明確にした。】(河北新報)
【復興支援?】
・【実際、イラクに駐留する陸上自衛隊部隊は主要活動の給水支援を終え、一定の役割は果たした。国際貢献といいながら、米軍に付き合って残っているだけではないかとの疑念がある。「過剰な対米配慮」という批判が噴出してもおかしくない。】(東京新聞)
【イラク住民との関係】
・【これまで一人の負傷者も出ない現地での活動は地元住民との関係の良好さを示し、世界から注目されている。精強なうえ、住民と同じ目線という陸自の活動は、平和建設のための「国際公共財」ともいえ、延長は当然だ。撤退も地元住民から拍手で送られることを第一に考えなくてはなるまい。】(産経新聞)
【いつまで延長?】
・【イラク南部の治安を受け持つ英、オーストラリア軍は来年5月に撤退の意向とされる。】(河北新報)
【③牛肉輸入再開】
・【日本側は牛海綿状脳症(BSE)問題で禁輸していた米国産牛肉の輸入再開方針を固めた。】(中国新聞)
【④日中関係】
・【急速な経済成長を背景にした中国の軍事大国化は、アジア太平洋地域の安全保障にとって大きな懸念材料だ。中国は、この地域での米国の影響力を排除し、主導権確立を目指す動きを強めている。】(読売新聞)
【脅威論】
・【資源獲得に狂奔し、不透明な軍事力増強を続け、潜水艦の領海侵犯が相次ぐ中国の狙いは台湾制圧にとどまらない方向に進んでおり、わが国にとって大きな潜在的脅威となっている。】(世界日報)
【価値観の違い】
・【中国は、共産党一党独裁体制だ。自由主義、民主主義などの価値観を日本とは共有していない。日米同盟関係に代わって、日中関係を基軸に地域の平和と安定を築ける、と考えるのは非現実的だ。】(読売新聞)
【⑤集団的自衛権】
・【懸念されるのは日米の軍事的一体化だ。インド洋やイラクへの自衛隊派遣、米国のミサイル防衛(MD)への参加など、集団的自衛権の行使に抵触する恐れのある決定が次々になされているという現状がある。】
【新憲法草案】
・【自民党の新憲法草案は問題点が多いが、それでも「自らを守る責務」を前文に盛り込み「自衛軍」保持を明記したのも、そのような意識の変化を反映したものだろう。国家として当然の権利である集団的自衛権の行使も安全保障基本法に委ねられ、日米防衛協力の最大の障害が除かれようとしている。】(世界日報)
【会談後・・・】
・【会談後の共同記者会見で、小泉首相は「米国はかけがえのない同盟国だ。日米関係がよければよいほど中国、韓国、アジア諸国をはじめ世界各国と良好な関係を築ける」と日米同盟最優先の外交観を率直に語った。】(毎日新聞)
【批判的な意見】
・【米国への配慮が民主主義に優先してしまっている。順番が逆ではないか。】(北海道新聞)
・【「イエスマン」は都合のいい存在ではあっても、決して尊敬すべき友人にはなりえない。強い者に向かっても、言うべきことはきちっと言う存在こそ持つべき友人である。】(中国新聞)
・【対米一辺倒、アジア軽視の外交姿勢では日米同盟は「アジア地域の安定と安全保障の支柱」にはなり得ない。日本は米国、アジアとの距離を測り直し、柔軟な外交戦略の立て直しを急ぐことが必要なときである。】(西日本新聞)
【まとめ】
・【小泉・ブッシュ関係を軸とする現在の日米関係は永遠ではない。小泉首相は2006年9月には退陣する。ブッシュ大統領の任期は09年1月までだが、08年はじめに大統領選挙が始まれば、次はだれかが世界の関心になる。小泉・ブッシュ時代が長い日米関係史で例外的とさえ思えるほど良好なのは事実だろう。】(日経新聞)
【後書き】
意外にも日米同盟の有効性を述べている社説は多かったです。「左派=反米」というわけではないようですね。今回、朝日新聞は除外しましたがそれ以外にも批判的な意見を述べていた社説がありました。特に中国新聞は、「米国との友人関係」を謳いながら、日本外交を批判している。「真の友人なら・・・」という表現はどうなんでしょう?近所の友達と約束事するのとは違うのですが・・・。
もう一つの気になったのが産経の記事。サマワへ派遣されている自衛隊の情報は少ないです。サマワ住民の反米思想の煽りから、米国に加担している自衛隊(日本)の撤退を求める動きがあることを聞きました。確かに死者は出ていませんが、地元住民との良好な関係が築かれているかは疑問なところです。生活水準の向上に留まらず、地元住民の雇用斡旋などイラクが自立できる国家になるまでは時間がかかると思います。ただ、テロ活動などの反発に絶えれるのも時間の問題です。
問題を幾つか挙げましたが、会談前に慌てて米国のご機嫌をとるような判断を下したのでは?という意見はあります。確かにどれも米国を意識したものでしょう。ただ、日米関係を強固にすることが国益に繋がるというのは確かなこと。米国を敵に回して生き抜いていけるほど、日本が強い国だとは思えません。批判的意見にも一理あるのは、国民への説明不足です。米国一辺倒の小泉氏は、国内で強権を振るおうとしている、と言われてもしょうがない。「米国のために国民を犠牲にする」と反論されるのは当然であって、そこの説得を欠いたら後々ツケが回ってくるようにも思います。
日本は経済大国であり、軍事力も持っていると言われますが、それもこれも米国あってのこと。日経が述べているように、ブッシュ氏は支持率が低下し、小泉氏は任期一年を切っている。今後の日米関係をどうするかも考えなければならない時期の日米首脳会談は有効だったと思います。今後の日本はどうあるべきか?これからも核の傘の下で米国追随を続けるべきでしょうか。米国か世界のルールブックのようになっている現状からしても、日米同盟を軽薄なものにする手段はないと思います。ただ、これからの世界情勢次第では、日本も別の選択を強いられるかもしれません。それまでは、米国を利用するくらいの強かさが欲しいものです。
【参考資料】
読売新聞 11月17日社説【日米首脳会談 東アジア情勢が迫る同盟強化】
産経新聞 11月17日主張【日米首脳会談 「強固な同盟」の意味重い】
毎日新聞 11月17日社説【日米首脳会談 共感を得てこその同盟だ】
日経新聞 11月17日社説【アジアに民主主義を照射した米大統領】
北海道新聞 11月17日社説【日米首脳会談 日本の主体性が見えぬ】
河北新報 11月16日社説【日米首脳会談 首相は外交戦略示し得たか】
東京新聞 11月17日社説【日米首脳会談 『蜜月』とはいうものの】
中国新聞 11月17日社説【日米首脳会談 緊密ぶり誇示には懸念】
西日本新聞 11月16日社説【アジア安定に役立つか 日米同盟強化】
新潟日報 11月17日社説【日米首脳会談 同盟強化だけでいいか】
京都新聞 11月17日社説【日米首脳会談 同盟強化の宿題は重い】
高知新聞 11月17日社説【日米首脳会議 首相に重い説明責任】
沖縄タイムス 11月17日社説【日米首脳会談 沖縄を捨て石にするな】
世界日報 11月16日社説【日米首脳会談 同盟関係深化の好機とせよ】

今後もよろしく
興味深く読ませていただきました。
同感してしてもらえて嬉しいです。こちらこそよろしくお願いします。
ともかさま☆
多いかどうかは分かりませんね。今は"社説だけ"しか読まないので、当然抜け落ちる部分はあると思いますよ。人の意見を聞きながら補っていきたいです。