昨日の当ブログ2013.10.7「「国・一部自治体と在特会の朝鮮人差別観」で、朝鮮人差別に関して述べた。今回もその関連。私たちは、まず歴史の事実を知ることから始めなければならない。
社会民主党の機関紙「社会新報」2013.9.11号に、山田昭次・立教大学名誉教授(日本近現代史)のインタビュー記事が掲載された。「聞き手・まとめ」は私(星徹)が担当した。「社会新報」編集部の許可を得て、以下に転載する。
＊無断転載禁止
【タイトル】
関東大震災の朝鮮人虐殺から学ぶ
【リード文】
90年前に日本で起こった朝鮮人虐殺の歴史から学ぶことは多い。（聞き手=ルポライター・星徹さん）
立教大学名誉教授 山田昭次さん
■やまだ・しょうじ 1930年生まれ。立教大学名誉教授。専攻は日本近現代史。著書に『関東大震災時の朝鮮人虐殺とその後』(創史社)など。
【本文】
━━1923年9月1日に関東大震災(「メモ」参照)が発生し、その直後から関東各地で多数の朝鮮人が虐殺されました。どのような時代背景があったのですか。
山田昭次・立教大学名誉教授 第１次世界大戦期(1914-18年)に日本資本主義は急速に発展し、労働力需要が増大しました。そんな中で、植民地支配下で貧窮化した朝鮮人農民らが来日し、民族差別の下で低賃金労働者となりました。そして彼らは、日本人社会主義者や先進的労働者と連帯し、民族差別賃金廃止、さらには植民地支配からの解放を求め始めました。
権力側は、こういった動きを警戒し、23年のメーデー(5月1日)前後から、彼らへの弾圧の度を強めていました。
「朝鮮人暴動」とデマ
━━大震災後の朝鮮人虐殺は、どのようにして始まったのでしょうか。
山田 大地震が始まった当日の1日夕方からすでに、警察官や憲兵らが「朝鮮人が放火している」「井戸に毒を投げ入れた」「暴動を起こしている」などと各所で触れ回り始めています。
内務省警保局長は3日、「東京で不逞朝鮮人の暴動が発生しているから警戒するように」などと、各地6長官へ電報を打ちました。
しかし実際は、「朝鮮人の暴動」など発生しておらず、デマに基づく指令でした。
埼玉県では、先に情報を入手し、2日の晩のうちに、県内務部長→郡役所→各町村という流れで、自警団結成の指令が末端まで伝えられました。そして翌3日には、県内全域に自警団が結成されたのです。
東京・神奈川・千葉などでも、同じように自警団が次々と結成されました。
自警団は、関東地方だけで3689団体に上りました。彼らの多くは農民・下級職人・小商人等で、朝鮮植民地支配やシベリア出兵などで軍隊経験のある人も数多くいました。
自警団の暴走と警察
━━虐殺の実態は。
山田 官憲が「朝鮮人の暴動」を事実と認定した結果、民衆はその情報を信じ込み、朝鮮人虐殺を行なったのです。また、警察や軍隊が虐殺に直接関わったケースも、判明しています。
神奈川県の横浜・中村町周辺では、民衆が朝鮮人を見つけては、なぶり殺しにしました。虐殺された朝鮮人の遺体が、土手の桜の木200本以上の「すべて」に吊るされていた、との証言記録もあります。
庶民が「天下晴れての人殺しだ」などと言い、虐殺した人数を自慢する話の記録も、残されています。
━━警察は、朝鮮人を守らなかったのですか。
山田 警察官自身が「朝鮮人を殺しても差し支えない」と民衆に言っていた、との証言も多数あります。
そして、警察署内に留置された朝鮮人が、自警団の民衆らによって引きずり出されて虐殺された、というケースも数多くあります。
また、警察に拘束された朝鮮人が東京からトラックで埼玉・群馬方面に移送される途中、武装した自警団に取り囲まれて皆殺しにされた諸事件もあります。
━━何人くらいの朝鮮人が虐殺されたのですか。
山田 虐殺された朝鮮人の遺体を警察が隠し、朝鮮人調査団の調査を妨害したため、正確な数は分かりません。しかし、数千人は虐殺されたでしょう。
官憲中枢も捏造工作
━━官憲の中枢は、こういった事態にどう対処したのですか。
山田 9月5日には、臨時震災救護事務局警備部に各方面の官憲が集まり、合議しました。決定事項は、①朝鮮人による暴行事実を極力捜査し肯定に努めること ②風説を事実としてできる限り肯定するよう努めること──などでした。
要するに、官憲中枢は「朝鮮人の暴動」が存在しないことに気づき、あわてて捏造(ねつぞう)工作を始めた、ということです。
司法省は10月20日、一部の不逞鮮人が幾多の犯罪を敢行した、と発表しました。しかし、司法省が「朝鮮人の犯罪」としていることの実態を見ると、「犯人」の姓名が不明だったり、行方不明者や死亡者が圧倒的に多いのです。この調査の信ぴょう性はなく、官憲の捏造としか言えません。
━━90年後の現在でも、在日朝鮮人への差別・偏見が後を絶ちません。
山田 日本人の多くは歴史からほとんど学んでいない、と思います。こういった「負の歴史」に直面すると、「自虐史観だ」などと言って目を背ける風潮も、広がっています。
歴史をきちんを学ばなければ、過ちを繰り返すことにもなりかねません。
【メモ＝関東大震災】
1923年9月1日の正午少し前、神奈川県の相模湾沖を震源とするマグニチュード7.9の大地震があった。神奈川県・東京府の大部分と千葉県南部は震度6～7。家屋倒壊や火災・津波などにより、死者・行方不明者は推定で約10万5000人。
社会民主党の機関紙「社会新報」2013.9.11号に、山田昭次・立教大学名誉教授(日本近現代史)のインタビュー記事が掲載された。「聞き手・まとめ」は私(星徹)が担当した。「社会新報」編集部の許可を得て、以下に転載する。
＊無断転載禁止
【タイトル】
関東大震災の朝鮮人虐殺から学ぶ
【リード文】
90年前に日本で起こった朝鮮人虐殺の歴史から学ぶことは多い。（聞き手=ルポライター・星徹さん）
立教大学名誉教授 山田昭次さん
■やまだ・しょうじ 1930年生まれ。立教大学名誉教授。専攻は日本近現代史。著書に『関東大震災時の朝鮮人虐殺とその後』(創史社)など。
【本文】
━━1923年9月1日に関東大震災(「メモ」参照)が発生し、その直後から関東各地で多数の朝鮮人が虐殺されました。どのような時代背景があったのですか。
山田昭次・立教大学名誉教授 第１次世界大戦期(1914-18年)に日本資本主義は急速に発展し、労働力需要が増大しました。そんな中で、植民地支配下で貧窮化した朝鮮人農民らが来日し、民族差別の下で低賃金労働者となりました。そして彼らは、日本人社会主義者や先進的労働者と連帯し、民族差別賃金廃止、さらには植民地支配からの解放を求め始めました。
権力側は、こういった動きを警戒し、23年のメーデー(5月1日)前後から、彼らへの弾圧の度を強めていました。
「朝鮮人暴動」とデマ
━━大震災後の朝鮮人虐殺は、どのようにして始まったのでしょうか。
山田 大地震が始まった当日の1日夕方からすでに、警察官や憲兵らが「朝鮮人が放火している」「井戸に毒を投げ入れた」「暴動を起こしている」などと各所で触れ回り始めています。
内務省警保局長は3日、「東京で不逞朝鮮人の暴動が発生しているから警戒するように」などと、各地6長官へ電報を打ちました。
しかし実際は、「朝鮮人の暴動」など発生しておらず、デマに基づく指令でした。
埼玉県では、先に情報を入手し、2日の晩のうちに、県内務部長→郡役所→各町村という流れで、自警団結成の指令が末端まで伝えられました。そして翌3日には、県内全域に自警団が結成されたのです。
東京・神奈川・千葉などでも、同じように自警団が次々と結成されました。
自警団は、関東地方だけで3689団体に上りました。彼らの多くは農民・下級職人・小商人等で、朝鮮植民地支配やシベリア出兵などで軍隊経験のある人も数多くいました。
自警団の暴走と警察
━━虐殺の実態は。
山田 官憲が「朝鮮人の暴動」を事実と認定した結果、民衆はその情報を信じ込み、朝鮮人虐殺を行なったのです。また、警察や軍隊が虐殺に直接関わったケースも、判明しています。
神奈川県の横浜・中村町周辺では、民衆が朝鮮人を見つけては、なぶり殺しにしました。虐殺された朝鮮人の遺体が、土手の桜の木200本以上の「すべて」に吊るされていた、との証言記録もあります。
庶民が「天下晴れての人殺しだ」などと言い、虐殺した人数を自慢する話の記録も、残されています。
━━警察は、朝鮮人を守らなかったのですか。
山田 警察官自身が「朝鮮人を殺しても差し支えない」と民衆に言っていた、との証言も多数あります。
そして、警察署内に留置された朝鮮人が、自警団の民衆らによって引きずり出されて虐殺された、というケースも数多くあります。
また、警察に拘束された朝鮮人が東京からトラックで埼玉・群馬方面に移送される途中、武装した自警団に取り囲まれて皆殺しにされた諸事件もあります。
━━何人くらいの朝鮮人が虐殺されたのですか。
山田 虐殺された朝鮮人の遺体を警察が隠し、朝鮮人調査団の調査を妨害したため、正確な数は分かりません。しかし、数千人は虐殺されたでしょう。
官憲中枢も捏造工作
━━官憲の中枢は、こういった事態にどう対処したのですか。
山田 9月5日には、臨時震災救護事務局警備部に各方面の官憲が集まり、合議しました。決定事項は、①朝鮮人による暴行事実を極力捜査し肯定に努めること ②風説を事実としてできる限り肯定するよう努めること──などでした。
要するに、官憲中枢は「朝鮮人の暴動」が存在しないことに気づき、あわてて捏造(ねつぞう)工作を始めた、ということです。
司法省は10月20日、一部の不逞鮮人が幾多の犯罪を敢行した、と発表しました。しかし、司法省が「朝鮮人の犯罪」としていることの実態を見ると、「犯人」の姓名が不明だったり、行方不明者や死亡者が圧倒的に多いのです。この調査の信ぴょう性はなく、官憲の捏造としか言えません。
━━90年後の現在でも、在日朝鮮人への差別・偏見が後を絶ちません。
山田 日本人の多くは歴史からほとんど学んでいない、と思います。こういった「負の歴史」に直面すると、「自虐史観だ」などと言って目を背ける風潮も、広がっています。
歴史をきちんを学ばなければ、過ちを繰り返すことにもなりかねません。
【メモ＝関東大震災】
1923年9月1日の正午少し前、神奈川県の相模湾沖を震源とするマグニチュード7.9の大地震があった。神奈川県・東京府の大部分と千葉県南部は震度6～7。家屋倒壊や火災・津波などにより、死者・行方不明者は推定で約10万5000人。
