思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

殊能 将之『美濃牛』読了しました

2017-12-13 13:22:42 | 日記
ネットを散策すると、賛否両論ある作品なんですね。

私は嫌いではないです。おもしろかったです。

通勤読書としては少々重かったですが(中身ではなく重量が)、
さくさく読める軽妙な文章と内容なので
さほど苦にはならなかったです。

まあ、王道のミステリかと言われると
そうではないので(逆説ミステリ?とかなのか?)
そういうものを求めて読む人には
まどろっこしい部分も多々あるような気が。

アメリカのクラシックポップ論とか
正岡子規(作者、お好きなんでしょうねえ)の話しとか
横溝正史が詠んだ句とか(知らなかった)
何かと横道に逸れまくる上に、
最初の死人が出るまでに150ページ弱。
こういうところが好みの分かれ目なのかもしれません。

あと、作者の殊能氏は書評家でもあったそうで、
小説の「お作法」とか「技」みたいなものを
きっと色々知っていた人なんだと思います。
ミスリードのためのミスリード、
伏線のフリをした挿話、みたいな描写が
結構あったように見受けられました。

村長の「都合の悪いことは忘れる」癖とか、
ミステリ好きにはもう「深読みしてね!」って感じですよね。
私も深読んだよ!ぐぬぬ。

あ、そろそろネタバレなことを書き始めます。
未読の方はお気を付けください。

タイトルの美味しそうな『美濃牛』に
Minotaurという英文字がひっかけられているように
小説内の名称もギリシャ神話のミノタウロス伝説から
いくつかひっかけられているようです。

ヒロインの窓音(まどね)は、アリアドネ
主人公(?)の天瀬は、テセウス
舞台の暮枝村は、クレタ島
ってのはわかるのですが、
郷土史家の代田先生は、ダイダロスなのだろうか…。
なんか作ってたかな、先生。俳句か。

そうそう、作中で登場人物たちが詠む句も、
それぞれのキャラがちゃんと出ていて良かったです。
作者は芸達者ですね。
石動の
E=mc2 秋の暮れ
がふざけてて良いですが、先輩が詠んだ句の
クラシック音楽の翻訳センスもすごく良い。

三兄弟と父の異様な関係性は気になっていましたが、
読了後、
「そういえば三兄弟そろって“年寄り”って呼んでたな」
という腑に落ち感は気持ちよかったです。

あと三兄弟、業が深すぎ!
窓音と真犯人も含めて羅堂家の人間、怖すぎ!

天瀬くんの将来が心配です。
(もう手遅れだと思うけど)

ところで哲史くんはおじいちゃんの変化に気づかなかったのかな?

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 殊能 将之『美濃牛』を読むま... | トップ | 原田マハ『楽園のカンヴァス... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事