一人の男の人生を脳裏に焼き付けたデータがある惑星に着陸した。それは宇宙を超え、永遠に語り始める、、。
なんて、壮大でまさしく宇宙ロマンであります。このストーリーを聞いただけで泣けてきます。子供時代の他愛ない出来事、女性とのロマンス、それらは何ら私たちの人生の綴りと変わらないのだ。彼が惑星で想い、語り始めていることはすなわち私たちの人生でもある。
ということは、人は死んだからと、残された人の記憶 . . . 本文を読む
ある町工場。大阪とともに工場も人間たちも疲れ始めている。屋上にある立派な庭園を老父母の要望でエレベータ造りにするため大改造することになる。今までの手作りの我が家の歴史、思い出、すべてが消えてゆく、、。
高橋はある工場を一つのモチーフに、人間の生きてきた営み、その喜び、苦しみを切り取ってゆく。
それらは観客の心と重なって融合し、舞台の終わり近くになったとき、自分の心が暖かく、そして濡れていること . . . 本文を読む
意外と素直な少女であることよ。その清らかさ故、、
現実に立ち向かえられなかったのか、と残念至極の気持ちが残滓となる。
まずボスキャラ母鬼の能力・臭気たるや度を過ぎていてホラーを超えている。なぜ少女はこの世に生きていていい存在ではなり得ぬ母鬼を倒せなかったのか?これに尽きる。
精神的属性を担う多々羅の非人間的行為、実際は仕事のために人を利用する桐野の存在も彼女の生き方に影響はあっただろうが、で . . . 本文を読む
学生演劇では珍しい自前の脚本で舞台を仕立てる劇団である。若い人の脳裏にあるものを中心に劇は創造されるんだろうが、今回はだらだらしたある夏のSF研究部室から起こる空想劇を仕立て、見事にオモシロ演劇になっている。
その自由さがいい。のびのびと広がる若い人の特権のような青い空。そのまた奥を行く飛行機雲。そんな感じかな。大道具仕立ても立派。まず舞台を見て目を見張るほど。ほとんどの演劇部員が出演しているの . . . 本文を読む
現代人においても心にあるものをそのまま言葉にできる人は少ないのではないか。私もその一人だ。昭和という隠れ蓑でそんなものかと無理に思わせていたが、やはり人間は、特に女性は「言ってくれないと全くわからない」らしい。
そんな普通のことが実際はどんどん悲劇と連鎖してゆく様を見て、呆然とする。ラストは号泣。大賀はまさにそこに私が存在するかのような演技で、映画愛さえ感じてしまうほど。 . . . 本文を読む
愛すべきそして大好きな大山誠一郎の新作です。あのまたワトソン力というユニークで斬新な武器をネタに本格ミステリーを綴る。これはファンならではのお愉しみ時間であります。
でも1作目よりずいぶんと軽妙過ぎて、さらに読みやす過ぎてあっというかに読んでしまう。もったいないというか、何か物足りない気もしないではない。
でも考えたらワトソン力って、作者にとって都合がよすぎるよね。自分の解決編をその場にいる5 . . . 本文を読む
困惑する題名。難しそうな気配。翻訳劇だろうなあと思ってみてみると、雰囲気はまさにそうで、けれどとても面白く作ってある。戦争という極限にいる者たちの平和と不安と時間のリフレイン。これはなかなかすごい!
衣装を風のたなびきに任せた演技が印象に残る。このシーンが中盤と終盤に2度あり、閉塞感の永遠性が示される。面白い。感動的。人間の営みの悲しさをよく表していた。
俳優陣は匿名劇団のお二人がやはりセリフ . . . 本文を読む
題名の十字架を象徴する真面目作。O・ブルームが自分の演技力に新たな挑戦を試みた問題作ともいえる。
題名の通り、十字架が基本テーマです。信仰とは何か、人間と信仰との距離、関わり合い、生きることと信仰すること、それらを寓話のような事件から解きほどこそうとしているように思えます。
ブルームが最後にたどり着いた罪人を赦すということ、それはすなわち赦された方は神との対峙をせざるを得なくなることを意味する . . . 本文を読む
韓流の流れをくむ本格的ハートフル恋愛映画です。隣の部屋との壁越しの愛だから、もちろん純愛です。この手の映画はもはや韓国でないと作れないのではないか、と思われるほど素敵だ。映像を見てるだけで即感情移入ができるのだ。
日本映画だったら、こうはいかない。嘘っぽくなり、見られない。そういう純粋で不思議なものを韓流は持っている。でも、昔はこういう韓流を見、感動し、涙した吾輩も、そうはならない。もう心も枯れ . . . 本文を読む
心の内側に流れる澱んでいるけれども、かすかにたなびくその響き、、。誰もが抱える心の襞を包み隠さず現代人に投げかけた問題作だと思います。
友人であれ、親子であれ、夫婦もしくは恋人たちであれ、本当のことは言えないものなのです。言葉に出たそれが嘘かどうかは明確ではないけれども、、、。
誰にもある密やかに流れる心のうごめきを映像化した繊細な秀作だと思いますこの作品、冒頭の2,3分でぐいぐい画面に入り込 . . . 本文を読む
北朝鮮とのスリリングな闘いをエンタメ風に何でもあり風にやってのけたイ・ジョンジェ監督作品です。こんなのを作ってみたかったんだろうなあ、アクション部分も水準なのでどうなるかわからない展開も面白く2時間とても楽しく見られました。ラストもなかなか冴えてます。 . . . 本文を読む
阿部公房の50年前ほどの名作の映画化。知ってはいたが、未読の作品だ。意外と前衛とか実験とか形而上学的とかそんな表現はこの映画にはそぐわない。
現代に生きている我々は箱男の心情はわかる気もするから、それほど難しい映画だとは思わなかった。ストーリーを探ろうとすると阿部公房の迷宮にはまりそうなので、なるべく距離を置いて客観的に映像を眺めることにした。
とすると、1人の男の人格分散のような気もするし、 . . . 本文を読む
太陽ではなく月が全体のモチーフとなっているのがみそです。
登場人物はみんな繊細な神経を持った優しい人たち。どこにでもあるような、どこにでもいるような人たちが繰り広げるストーリーなんだが、逆にこういう設定の演劇が珍しいのか、本質の展開に入っていくのに時間がかかった。
中盤からは彼らの気持ちは手に取るようにわかるが、でも自分の気持ちがそこまで浸透できない何かを感じてしまっている。なぜだかわからない . . . 本文を読む
小さな劇場公演だが、中身はどっしり演劇臭が詰まっている秀作劇です。夫婦という仮面の中に息づく人間のもろもろの本性を暴いてゆくその手法はやはりアメリカ、イギリスの方が優れていますね。
この種の劇は映画化されているようで、この作品も「地獄のパーティ」として上演されたらしいが見逃している。古くは「ヴァージニアウルフなんか怖くない」など、作家は違えど、名作もあった。この作品のマイク・リーといえばイギリス . . . 本文を読む
シャンソンが全編流れる。何かノスタルジア多きバーでの出来事。登場人物が13人と多く、観客としてはそれぞれが消化できない感じもする。エピソードの積み重ね風演劇という設定だが、狙いはいいと思う。
でも90分位これだけの話を入れようとしたら、ちょっと詰め込み過ぎ感がないでもない。ラスト近くになってすべての真実がわかる展開だが、なるほどそうであるなら、ランタイムをもっと長くするか、それか敢えて何人かの話 . . . 本文を読む