しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

時計じかけのオレンジ完全版 アントニイ・バージェス著 乾信一郎訳 ハヤカワ文庫

2014-03-19 | 海外SF
この本も昨年川崎のブックオフで買っていた本です、450円。

’12年ローカス誌オールタイムベストSF長編68位かつ、タイム誌が選ぶ英語小説100に選ばれていることもあり購入しましたが、なかなか手に取りませんでした。
なお本作1962年発刊。

2001年宇宙の旅」を読み、そういえば本書も「映画」かつ「キューブリック」で有名な作品だったなぁということで読み始めました。
ただこちらの方は映画を見ていません。(定番なのにねぇ)
本書は映画で描かれなかった章も含む「完全版」ということで文庫では2008年に発売されたものです。

内容(裏表紙記載)
近未来の高度管理社会。15歳の少年アレックスは、平凡で機械的な毎日にうんざりしていた。そこで彼が見つけた唯一の気晴らしは超暴力。仲間とともに夜の街をさまよい、盗み、破壊、暴行、殺人をけたたましく笑いながら繰り返す。だがやがて、国家の手が少年に迫る―――スタンリー・キューブリック監督映画原作にして、英国二十世紀文学を代表するベスト・クラシック。幻の最終章を付加した完全版。解説/柳下毅一郎

読んでみてとりあえずの感想「先駆者的なものときらりと光るものは感じるんだけどねぇ..。」
よくわからない感想ですが(笑)

ロシア語まじりのスラング「ナッドサッド」を創出し描かれる世界は優れて映像的で、後のサイバーパンクのはしりという感じでしょうか。
ただ「はしり」的作品の常として、後から出てきた作品の方がより純度が高くなるので現代の眼から見ると中途半端感とありがち感は否めないかなぁ。

書かれた1962年現在では「超」暴力だったんでしょうが、現代ではこんな暴力などは文学作品でも現実でも珍しくなくなっているような気がする。
少年マンガなどでもこれくらいは普通に表現されていますよねぇ...。

そういう意味ではパンチは薄れている気はします。
先駆者の運命なんでしょうが...。
印象に残っている場面は主人公アレックスが仲間と喉切りカミソリでやりあう場面。
かっこいいです。
このかっこいい主人公が、少年院で教誨師に媚びたりしていたり、洗脳されて矯正された後に足を踏まれたり、鼻をはじかれたりした相手に憐れみを乞う場面のギャップは楽しめました。
あと矯正に使用される映像で、ナチスのユダヤ人虐殺の場面にベートーヴェン交響曲5番の第4楽章が使われているところ。
クラシック好きな主人公ではないですが強烈な違和感があります、この組み合わせはスゴイ。

少年院を出てからはかつてのアレックスの仲間が警官になっていたり、アレックスの一団に妻をレイプされた作家が理想と個人的恨みの間で苦悩したりありながらも、一気に場面を展開させてラストまで持っていきます。

映画では最終章がない形で主人公の縛りが解け「これですべて元通り」というところで終わるようですが、この完全版では最終章で「俺も大人になったな...」ということで回心するような話があります。

最初に英国で出版されたときには最終章付きで出版されたようですが、米国で出版するときに省かれたようです。
映画はこの米国版を基にしているようです。

どちらがいいのか...はいろいろ意見があるでしょうが、「映画」であれば最終章の場面がない方がいい気がします。
最終章がないと人間なんて結局は汚い存在という感じで終わるイメージ(ご都合主義でアレックスを元通りにする大臣含めて)かつ観る人にいろいろ考えさせるラストですね。
最終章があると人間の中にある善性をある程度認めるイメージ。
アレックスの両親などで伏線は張ってはありますね。

私は、小説であれば....最終章があった方が好きかなぁ。

手塚治虫が本作のタイトルをもじった「時計仕掛けのりんご」という作品を書いていますが(本作と内容はかぶらない)、ブラックジャックで同じようなテーマを扱った作品を書いていたなーというのを読んでいて思い出しました。
内容は、
暴力行為を重ねる金持ち息子の不良少年に心臓疾患が見つかり、ブラックジャックが手術し一命を取り留めるが以後「カッと」なると心臓が痛み倒れてしまうようになってしまった。
「どういうことなんだー」と思い再び暴れようとするができず….。
最後は善に目覚め弱いものを守るために戦うことで自分の残り少ない命を散らす。
というような感じだったかと思います。(記憶あいまい)
若干は本作に影響を受けた作品だったんでしょうか?手塚治虫らしいヒューマニズムではありますね。

私は人間のなにか理性というか善性というものも信じたいような気がします。

解説によるとこの辺のことと、著者自身はこの作品が自分の代表作となると思っていなかったのに映画のせいであまりにも本作が有名になり過ぎたこととで著者とキューブリックは不仲だったようです。
映画版が広く普及したためか「本作に影響され青少年の暴力が増えた」と非難されたようですし。(時代なんでしょうけれどもねぇ....)

前述のように場面場面は陳腐といえば陳腐なのですが、なにやらとても鮮度というか光るものは感じましたが「不朽の名作か?」といわれると違うかなぁとも思いました。
しかし一読の価値のある作品であるだとは思います。

でも映画は見ていないのですが、キューブリックの映画の方が印象深いんだろうなぁという予感はします。
そういう意味では「2001年宇宙の旅」同様不幸な作品かもしれませんね。


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