しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

トリフィド時代 ジョン・ウィンダム著 井上勇訳 創元推理文庫

2016-03-18 | 海外SF
エンディミオンの覚醒」の後は、古典的名作SFである本書を読みたくなり手に取りました。
本そのものは一昨年あたりにブックオフで見かけて購入済み。

12年ローカス誌オールタイムベスト48位、1951年刊行です。

SFマガジンのベストではランクインしていないので少なくとも現代日本ではそれほど評価高くないんでしょうねぇ。
私が小中学生頃(1980年代)から古典的名作として名高く、知ってはいたのですが未読でした。
ジョン・ウィンダムの作品は星新一翻訳の「海竜めざめる」は読んだことがありますが…ほとんど覚えていません。
 
内容紹介(裏表紙記載)
その夜、地球が緑色の大流星群の中を通過し、翌朝、誰もがこの世紀の景観を見上げた。だが翌朝、流星を見た者は全員が視力を失ってしまう。狂乱と混沌が全世界を覆った。いまや流星を見られなかったわずかな人々だけが文明の担い手だった。しかも植物油採取のために栽培されていたトリフィドという三本足の動く植物が野放しとなり、盲目の人類を襲いはじめたのだ。 人類の生き残る道は?


80年代、90年代の米国SFを読んでから読むと、ウェルズの流れを汲む古典的英国SF的世界がとても落ち着きました。
「サイエンス」という意味では人間が視力を失うに至る流星の光線や、食人植物トリフィドについても原理的説明や謎解きはなく、特殊な状況下での人間のモラルや社会性を問うのがメインテーマの作品です。
セリフよりも主人公の内面を追ったり情景描写も多いので「娯楽作品」を求めて読むと調子が狂うかもしれません、教養小説的要素があります。
(字も小さいし)

「自分だったらどうかなぁ?」と自問しながら読みましたが「古い?」と思うところもありましたがそれほど違和感はありませんでした。
まぁモラルや社会性などはそれほど変わらないものなのかもしれませんね。
「自動運転車」などが出てくれば変わるのかもしれませんが60年以上経ってもあまり状況は変わらないような気もします。

設定についてですが「目が見えない」ということだけで人類がここまで「何もできなくなってしまうかなぁ?」とも思いましたが、大部分の人間の視力が失われたら現代でも大混乱にはなるでしょうねぇ、ネットワークは進歩していますが聴覚ではなく基本視覚情報ですもんねぇ…。
人間の「文明」というのはかなりの部分を視力に頼っているんですねぇ、ここに着目するのにはなにかモデルがあったのかもしれませんが新鮮な視点でした。

「トリフィド」というなにやら異質な存在も「植物」に対してはなにやら漠然とした「異質感」を持っていたんだなぁと改めて気づかされました。
倒しても倒してもきりのないのが不気味です...。

さてそのような異質な世界で本作の主人公ビル・メイスンは大多数の人たちが視力を失う中、幸い(?)にして視力を失わずにすみます。

大混乱のロンドンや次第に繁殖をして人を襲い始めるトリフィドとの戦いの中、二転三転「どうなるんだろう?」という状況に陥りますが、最後にはヒロインと結ばれるという筋立てとしては単純な作品だったりしますが、行動を取るにあたって「モラル」を自問自答し社会的にも問われるところがなんとも古典的ではありました。

現代においてはストレートにモラルを問う教養小説は成立しにくくなっているかと思いますが、このストレートさが逆に新鮮でした。

二転三転ありますが最後は主人公とヒロインにとっては割とハッピーな展開であり読後感もさわやかだったりします。

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