しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

地球の長い午後 ブライアン・W・オールディス著 伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫

2014-09-07 | 海外SF
バベル-17」の作者ディレイニーはSF作家の分類としては「ニューウェーブ」の作家ということになっているらしく…。
英国の作家ではありますが同じく「ニューウェーブ」に分類されているらしいオールディスの作品を読みたくなり本書を手に取りました。

本書は中学生くらいの時に読んだ記憶がうっすらとあるのですがほとんど内容覚えていない…。
ただ、あまり「ニューウェーブ」という気はしなかった記憶があります。

最近、ブックオフで見かけて新版も買ってしまっていたりもします。

新版といっても訳は変わっておらず伊藤典夫氏ですが。(それもまた手に取った理由だったりします。)

12年ローカス誌オールタイムベストでは321位と今一つですが、日本では人気が高いようで’06年SFマガジンオールタイムベストで6位14年でも7位となっております
1961年発刊。

内容(裏表紙記載)
大地を覆いつくす巨木の世界は、永遠に太陽に片面を向けてめぐる植物の王国と化した地球の姿だった! わがもの顔に跳梁する食肉植物ハネンボウ、トビエイ、ヒカゲワナ。人類はかつての威勢を失い、支配者たる植物のかげでほそぼそと生きのびる存在になりはてていた。人類にとって救済は虚空に張り渡された蜘蛛の巣を、植物蜘蛛に運ばれて月へ昇ること。だが滅びの運命に反逆した異端児がいた・・・・・・ヒューゴー賞受賞の傑作。

3部構成になっていて、もともと別々の短編として出されたものをまとめたとのことですがまったく違和感なく一つの長編として読めました。
逆に「うまくまとめよう」感がなく雄大な世界観を造り出すのにこの形式適していたのかもしれませんね。

読み始めてしばらくは「読んだ記憶まったく残っていないなー」と思っていましたが、第二部の途中でアミガサダケが出て来た辺りで「なんとなーく」読んだ記憶がよみがえりました。確かに中学生頃に読んだと思います。

その当時、人類がそもそも「知恵」を持ったのがアミガサダケのおかげという設定にえらく感心した記憶がよみがえりました。

違う生物が寄生していつしか一つの生物として共生関係となるというのは、当時としてはなかなか斬新な発想だったんではないでしょうか?
(本作の発想は動物と細菌などとの共生関係からでしょうかねぇ、ミトコンドリアの起源説などは1970年辺り以降のようですし。)

その他の設定は当時の読解力では単なる冒険物語として読んだ記憶がありますが、今回読み返してみると、いわゆる「長い午後」を迎えた地球上の情景やそこで生きる強大な植物やら変貌を遂げた動物、そして人間たちの雄大かつ自由、そして緻密な発想には感嘆しました。
植物だけでなく第3部では犬やらイルカの末裔と思われる動物も出てきてこれまたなかなか面白い。
優れて生態学、生物学的ハードSFと感じました。

暴力的な生態系では「風の谷のナウシカ」も連想しましたが、本作にインスピレーションの一部を得たりしているかもしれませんね。

全体としては、主人公グレンとその一行のロードストーリーなのですが、とにかく出てくる植物やら動物がどれも「えっ」という想像を超える存在で楽しめました。

後半は「人間」の「知性」を太古(我々の生きている状況)から司ってきた、アミガサダケが人間との久々のタッグを組み地球の覇権を取り戻そうとするわけですが…。
「長い午後」を迎えた地球ではアミガサダケのやることなすことが可哀そうなくらい全て裏目に出る。
アミガサダケの失敗も人間臭いですが、寄生されている側の「人間」の反応もなんだか人間臭く対比が笑えます。

ただアミガサダケやら月世界人が所与の条件として進歩をめざし、グレンはそうではなく日常生活の大事さに目覚める的な結末は教訓的で「ニューウェーブ」という感じはしませんね。

結末はもう少しあいまいな方が余韻は残りそうですが、これもまた良しでしょうかねぇ。

暴力的な植物・動物と生態系に圧倒された作品でした。

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