しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ガニメデのクリスマス アシモフ初期作品集2 アイザック・アシモフ著 冬川 亘・浅倉 久志訳 ハヤカワ文庫

2012-12-19 | 海外SF
アシモフ初期作品集1とともに2~3年前ブックオフで購入し積んでいたもの。
(400円だった)
なお前回書きませんでしたが、この初期作品集全3巻当然のごとく絶版です。

前巻は1938-39年、10代のアシモフの作品でしたがこの巻は、1940年1月1日アシモフの20歳の誕生日脱稿の「地球種族」から始まる短編12編と各作品に対するアシモフ自身によるコメント(というか思い出話)から成り立っています。

ということで作者も前巻より成長しており、「どうにもいただけない...」という作品はありませんが、まだまだ試行錯誤中という感じで出来もばらついていますし雑な作品もある感じです。
この作品集の性格上これまで単行本未収録のものを集めたものですからしょうがないのかもしれませんね。

ということで各作品別に感想など。

「地球種族」1940年執筆
恒星間航行技術を開発し、銀河連盟参加資格を得た地球人の特殊性を心理学者が解決する。
キャンベルに採用された2作目の作品。
作品的には、「ちょっと雑かなぁ」という印象、重要な説明を飛ばしているような...。
「心理学」が重要な役割を果たすという意味でファウンデーションにつながる話。
アシモフいわく「地球人」が他知的生命体に対し優位性を発揮する話は、キャンベル好みだったとのこと。
またその場合の「地球人」は「白人」であり、その辺はどうも納得いかないということが語られていました。
その辺を解決するためにファウンデーションシリーズでは銀河系全体に知的生命体は単一種族しかいないようにしたとのこと。

「金星の混血児たち」1940年執筆
1に収録の「混血児」の続編、金星に旅立った火星・地球人混血児たちの苦闘を描く。
「続編を書いてくれないか」という依頼に応え執筆した作品とのこと。
ちょいとしたラブストーリー風にしていますが、アシモフはこの辺得意分野じゃないような気がします。
出来は「混血児」の方が上ですね。

「虚数量」1940年執筆
続編に味をしめたアシモフが「地球種族」の続編を書いてみようと自ら書きだした作品。
キャンベルには没にされたとのこと。
「地球種族」の主人公の心理学者ポーラスを主人公としたドタバタ。
内容は...「あるの?」という感じ。

「遺伝」1940年執筆
地球と木星の衛星に別れて育った一卵性双生児は生まれて25年経って分かり合えるか?
という話ですが、主題がどんどんそれてなんだかよくわからくなっている作品。

「歴史」1940年執筆
金星、地球間の戦争にあたって切り札となる火星の古代の武器をめぐる話
「戦争はばからしいんじゃないか?」と「軍隊の官僚制・横暴」それと対比する「学者」ということで風刺しているんじゃないかと思いますがなんだかいいたいことがよくわからない....、いまいちかなぁ。

「ガニメデのクリスマス」1940年執筆
木星の衛星の原住民に話したトナカイに乗ったサンタの話をめぐるドタバタ。
気の利いたことを書こうとせず、「ドタバタ劇」と割り切って書いている感じで楽しめました。
クライマックスは電車の中で読んでいましたが不覚にも笑ってしまいました。

「地下鉄の小男」1941年執筆
フレデリック・ポールとの共作。
ファンタジーに挑戦しようとして書いたもの。
「神」及び「宗教」についての風刺なんでしょうが、私の読解力もしくは宗教に関する知識では面白みがよくわからない作品でした。
なんとかキャンベルにファンタジー専門誌のアンノウンに採用してもらおうとしていたようですが採用されなくてあがいていたようです。
ちょっと力が入りすぎていたのかもしれませんね。


「新入生歓迎大会」1941年執筆
この作品の前に陽電子ロボットもの、スーザン・キャリバンが登場する作品を書きだしたようです。
ぼちぼち後の代表作が出だしていますね。
ロボットものを続けて書こうとしたら、キャンベルから「いろいろなものを書いて力をつけた方がいい」という意見がでて書いたとのこと。
この作品は地球種族の流れ、けっこうこの展開好きなんでしょうね。
銀河連盟に加入して初めて入学する地球人に対してのイタズラを地球人がその独特の性質で乗り切るという話。
あまり感心はできない出来と感じました、まだまだばらつきがあります。

「スーパー・ニュートロン」1941年執筆
スーパー・ニュートロンなる物体が太陽に衝突して太陽系が消滅するというほら話(?)
に関するお話。
“サイエンス”に振っている話かと思いますが、不気味な雰因気を出してファンタジー風に仕上げようとしたのでしょうか?
中途半端で成功している感じは受けませんでした。

この後にアシモフのシリーズものでない短編で一番評価の高い「夜来る」を書いています。
だんだん乗ってきているようですね。

「決定的」1941執筆
木星人の侵攻におびえる、木星の衛星に駐在する地球人及び地球のお話。
これもサイエンスの要素に振っている話ですが、他に余計な色気を出していない感じでまとまっており素直に楽しめました。
ただラストのひねりが少し足りないかなぁ。

「幽霊裁判」1941年執筆
これも「ファンタジー」ものを書こうということでのフレデリック・ポールとの共作。
幽霊が居住権をめぐって裁判を起こすという内容です。
何が書きたいのかわかりませんでした。。

この後、ロボットものと並ぶアシモフの代表作「ファウンデーションシリーズ」第一作の「ファウンデーション」を書いていますが、次の「時猫」は頼まれ仕事のショート・ショート「時猫」で、「キャンベルの扱いは大したものでなかった」というようなことをいっています。

「時猫」1941年執筆
1アイディアで書いたショート・ショート。
これもいまひとつの出来かなぁ。
アシモフ氏あまり短いのは得意じゃないのかもしれませんね。
この作品を書き上げたのがちょうど真珠湾攻撃の日12月7日、ということでこの後アシモフの生活もSFを取り巻く状況も変わってきます。

1940-41年のアシモフ、代表作も出ていますがまだまだばらつきが多い時期だったんですねぇ、成長の過程が垣間見える作品集だと思いました。
思い出話の方ではアシモフがなんとか学者として生計を立てていこうと努力していたのがうかがえます。
その合間にこれだけ作品残しているんですから大した才能ですねぇ。


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