しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ミクロの決死圏 アイザック・アシモフ著 高橋泰邦著 ハヤカワ文庫

2017-05-21 | 海外SF

‘12年ローカス誌SFオールタイムベスト長編を読書のターゲットにしていますが、SFではアメリカの巨匠アシモフの邦訳されているSF作品読破も読書のターゲットにしています。

単著でのSF長編(もしかしたらジュブナイルがあるかもしれませんが…)はノベライズである本書と、原案がアシモフ本人かが「?」な本書の続編的位置づけの「ミクロ決死圏2-目的地は脳」(入手済み)と「永遠の終わり」で読破のつもりでいます。
「永遠の終わり」は中学生か高校生時代に何回か読んでいて、2006,7年頃に再読して「アシモフ….スゲー」と思った記憶があり未読ではないので「アシモフ長編読破」が見えてきました。
(最後に「永遠の終わり」を読み直して感想を書くつもりです。)

ということで本書ですが、1966年公開の映画の脚本をもとに同年アシモフがノベライズとして書き出版しています。
映画版は小学生のころテレビで見た記憶があります。


本稿書くためwikipediaで確認したら1973年、79年,80年,94年にテレビ放映されているようなので79年か80年に見たんだろうなぁ。
当時それなりに特撮に感動してわくわくした記憶がありますが…今見たらしょぼいく見えるんでしょうかねぇ…。

なお本書はブックオフで250円で入手。(今現在絶版)

昭和46年初版、48年5月七刷のもの。

当時のハヤカワ文庫こんなかたちで口絵があったんですよねー懐かしい…。
内容紹介(扉記載)
人体を原子の大きさに縮小する! 物体の無限な縮小化を可能にする超空間投影法・・・・・・だがその欠点は、縮小持続時間がわずか一時間ということだった。米秘密情報部はそれを無限にのばす技術を開発したチェコのベネシュ博士を亡命させたが、途中スパイに襲われた博士は脳出血を起こし意識不明となる。かくてCMDF(綜合ミニアチャー統制軍)本部は、医師、科学者、情報部員ら五名を乗せたミクロ大の潜航船プロメテウス号を博士の頸動脈から注入して、患部をレーザー光線で治療する作戦をたてた。だが果たして60分の間にかれらは任務を全うして帰還できるか?


奇しくも感想としては「言の葉の庭」に続き映画がらみの作品となります。

本書は映画のノベライズということで「アシモフの自由度低くかったんだろうなぁ」と感じました。
映画でちょっと科学的におかしくなっていたところの辻褄を合わせたりと一部アシモフなりに直したりしたようですが、いかにもなハリウッド映画的な登場人物、展開はちょっと引きました。

タフで2枚目で仕事が出来てモテモテのジェームズ・ボンドばりのスパイがずっこけずに大活躍するという展開はアシモフらしくないかもしれません。

でもまぁ「宇宙気流」の主人公も職業が学者なだけでそんな感じもあったような気もするのでそれはそれでアシモフらしいかもしれませんが・・・。

ただアシモフが描く「ヒーロー」の方がコンプレックスを持っていたり激しく挫折したりとキャラは多少複雑にはなってる気がします。
本作の場合娯楽映画ですからわかりやすいキャラの方が受けるんでしょうね。

アシモフ「博士」の好み的にはくせ者脳外科医のデュバルをもっと活躍させたかったんじゃないでしょうか。
アシモフの自由にできたならその助手でヒロインのコーラとの関係ももう少し進展の可能性があったかもしれません。
ヒロインもアシモフ的にはもっとしたたかな存在にしたかったかもですが…とはいっても想像の話ですから今さらですね。

アシモフ本来の時には滑る…(笑)ユーモアもあまり見受けられませんでした。

そんなこんな全体的に自由に書けている感じは薄かったですね。

冷戦構造が反映されているのもアシモフの他作品にも見られる傾向ですが、この時代多少なりとも「社会」を描けば冷戦は避けざるを得ないテーマだったんでしょうが紋切り型にはなりますよねぇ。
犯人の動機は直接的に冷戦ではなかったのですが…。

犯人といえば航海中に潜水艇の中で起こる様々なトラブルが事故か?はたまた誰かの犯行か?犯人は?とミステリー仕立てになっているのもアシモフ風ではありました。

犯人は字で読んでいると半分くらいで何となく推定できますが映像だとピチピチのウェットスーツを身につけたヒロインのコーラが疑われて悩む場面などそれなりにハラハラするのかもしれません。
映像で受け身で見るのと字でじっくり読むのとは変わって来ますよね…。

解説で福島正美氏が「ノヴェライゼーション作品中の白眉で、後世にのこるものであることは、まちがいない。」とベタ褒めしていましたが2017年現在では余程のアシモフファンでなければわざわざ読む価値はないかもしれません。
でもわかりやすい展開なのでSF読みはじめの中学生くらいにはいいかなぁ…。

なお小さくなって人体に入り治療をするアイディアは手塚治虫が1964年9月にアトムのアニメで作った「細菌部隊」を21世紀フォックス社が勝手に使ったとの説もあるようです。
一寸法師でも人が縮んだり大きくなったりしますし人を小さくして何かをしようというアイディア自体は一般的なのかもしれません。
(ドラえもんでも潜航艇でしずかちゃんの体内入ってますし(^^))

その辺も映画や漫画のようなビジュアルのメディアであれば出てきにくいであろう「小さくなっても質量は変わらないのでは?」という疑問点も小説だと結構気になりますが、その辺アシモフらしくSF的な理由づけをしていた辺りはさすが「巨匠」とは感じました。

そんなこんな映像と文字の違いで色々難しいところもあったかとは思いますがアシモフ自身はあまり個々の作品の「価値」にこだわる芸術家タイプではなく職人なタイプですのでノベライズという気楽な立場でこの設定で白血球やら書くのも楽しんではいたんでしょうねぇ。

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村


最新の画像もっと見る

コメントを投稿