shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

A Hard Day's Night / The Beatles

2009-09-20 | The Beatles
 今日はビートルズ3枚目のアルバムにして彼ら初のサントラ盤の「ア・ハード・デイズ・ナイト」である。80年代以降にこのアルバムを買われた方はまず、 “何このジャケット?” と思われるかもしれないが、これは我が家の初代「ア・ハード・デイズ・ナイト」、つまり私が中学生の時に買った日本盤LPのジャケットなんである。当時の私は初めて買ったビートルズの赤盤LPに付いていたディスコグラフィーをまるでバイブルのように信奉し、同じようなジャケットなのに日英米で収録曲の違う何枚かの盤(「ミート・ザ・ビートルズ」や「ザ・ビートルズ・セカンド・アルバム」、「ザ・ビートルズ№5」etc...)に戸惑いながらも、なけなしの小遣いを貯めて1枚、また1枚と買っていったものだったが、そんな中でひときわカッコ良いジャケットが気に入って買った盤がこの「ア・ハード・デイズ・ナイト」だった。中身の方もキラキラと輝くような躍動感溢れるサウンドが満載で、来る日も来る日もこのジャケットを見ながら “ジャーン!!! イッツビナ ハァ~ デイズ ナァイ~♪” を聴いてコーフンしていた。まだまだビートルズに関してド素人だったその当時の私は、まさかそれが日本のレコード会社が勝手に作ったものだとは知る由もなく、その後アルバム・ジャケットがUKオリジナル盤に戻された時、ものすごい違和感を感じたものだった。それはもうデザインの良し悪しの問題でも好き嫌いの問題でもなく、私の頭の中で「ア・ハード・デイズ・ナイト」の全13曲とこの日本盤ジャケットとが密接に結びついており、言ってみれば既に “刷り込み” が完了してしまっていた。だからこの歳になった今でも「ア・ハード・デイズ・ナイト」といえばこのジャケットなのであり、いくらUKオリジ盤(43ポンドだった...)やリマスターCD(ステレオではこのアルバムから極端な左右泣き別れ感が徐々に解消されつつあります...)の音が良くってもこればっかりはどうしようもない(>_<)
 このアルバムを聴いてまず感じるのは、前作「ウィズ・ザ・ビートルズ」で究極のガレージ・サウンドを聴かせた彼らが全曲オリジナル、それも珠玉の名曲ばかりという強力なアルバムを引っさげて前人未到の領域へと第一歩を踏み出したということ。それまで地球上のどこにも存在していなかったようなキャッチーでポップな旋律のアメアラレ攻撃に、ジョージの12弦エレクトリック・ギターの煌びやかなサウンドが華を添え、そこに映画の映像との相乗効果も加わって、まさに鬼に金棒、フェラーリにシューマッハ状態なのだ。それともう一つ忘れてならないのが13曲中10曲がジョンの曲で占められているということ。一気通聴してみるとアルバム全体が完全にジョン色に染め上げられている。つまりこれはジョン・レノンという不世出の天才が作り上げた入魂の大傑作アルバムなのだ。
 このアルバム最大の聴き所は何と言ってもA面冒頭①「ア・ハード・デイズ・ナイト」の “ジャーン!!!” であり、B面冒頭⑧「エニー・タイム・アット・オール」のリンゴの一打 “バン!!!” に続くジョンの “エニタイ マトォ~♪”だと思う。特に超ハイ・テンションで疾走する⑧の狂おしいまでのジョンのヴォーカルは圧巻の一言!本気を出した天才ヴォーカリストの凄味が存分に味わえる1曲だ。尚、1980年代の一時期、関西ローカルで放送されていた人気番組「突然ガバチョ!」のオープニング・テーマ曲として①の手拍子入りリミックス(←今から考えるとよぉ許可下りたなぁ...)がお茶の間に流れてきた時はホンマにビックリした(゜o゜)
 ②「アイ・シュッド・ハヴ・ノウン・ベター」を聴くと私は必ず映画のシーンが思い浮かぶ。列車の客室でトランプに興じ、何故か檻の中で演奏する4人(特に女の子が格子の向こうから演奏中のリンゴに触ろうとする時の手の動きにはワロタ!)が実に生き生きしててカッコエエのだ。④「アイム・ハッピー・ジャスト・トゥ・ダンス・ウィズ・ユー」ではジョージのセピア色ヴォーカルとジョンの至芸ともいえるリズム・カッティングが絶妙なコンビネーションで心にグイグイ食い込んでくるし、⑥「テル・ミー・ホワイ」はオーヴァーダブによるジョンの一人多重唱によって、ただでさえ元気印のこの曲に更なるターボ・ブーストがかかり、凄まじいまでの加速感を生み出している。⑦「キャント・バイ・ミー・ラヴ」は4人が非常階段を駆け下り、屋外ではしゃぎまくるシーンにピッタリのロックンロールで、イントロなしでいきなりヴォーカルから入るというビートルズのお家芸が炸裂するカッコイイ疾走系ナンバーだ。
 そんなキャッチーでパワフルなロックンロール満載のA面にあってキラリと光る至高のバラッド2曲が③「イフ・アイ・フェル」と⑤「アンド・アイ・ラヴ・ハー」だ。③で聴けるジョンとポールのハーモニーはビートルズがただのロックンロール・バンドではないことを満天下に知らしめる素晴らしさだし、⑤のアコギが支配するサウンドにボンゴを組み合わせ、ラテン風アレンジで処理したポールの音楽的センスはもう凄いとしか言いようがない。まさに天才の仕事だと思う。
 B面は先述の⑧に始まり、一気呵成にたたみかける⑨「アイル・クライ・インステッド」、“ウォウオ ハァ~♪” と叫びまくる⑪「ホェン・アイ・ゲット・ホーム」、初期ビートルズのカッコ良さをギュッと凝縮したような⑫「ユー・キャント・ドゥー・ザット」、華やかな宴の余韻をドライなヴォーカルで絶妙に表現してアルバムのエンディングをビシッとキメた⑬「アイル・ビー・バック」と、もうジョン・レノン大爆発だ。又、そんなB面の中にあって⑩「シングス・ウィー・セッド・トゥデイ」というこれまた屈指の名曲1曲で存在感を示すポールも凄い。このような天才2人を擁したビートルズがポピュラー・ミュージックの歴史を完全に変えてしまったのも当然と言えば当然だろう。
 ここ何年間か、長尺で薄味の曲を70分近くダラダラと垂れ流して反省のかけらもないCDがめったやたらと多い。このアルバムは全13曲でわずか30分強と、すべて3分以内の曲で埋め尽くされている。音楽は濃い内容を短くキメるべし、という最高のお手本だと思う。

A Hard Days Night Trailer

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