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本棚の本をずいぶん少なくすることができました。

コンピュータが仕事を奪う 単行本 – 2010/12/22 新井 紀子 (著)

2018-04-06 14:03:30 | ★★★★☆もう一回ぐらい読みたいかな
コンピュータが仕事を奪う 単行本 – 2010/12/22
新井 紀子 (著)



この本、おもしろい、AIがぶっちゃけどの程度まで行きそうか、ざっくり把握できる。
帰納でなんとかなる世界はAIに取って代わられるけど、AIに演繹は無理、なぜならそんな数学はまだないから、とすると今世の中で言われているようなシンギュラリティはそう簡単には来ない。
とはいえ、帰納だけでなんとかなってしまう一見知的なお仕事は世の中にいっぱいあるので、そのへんのホワイトカラーはやばそう。
以下、メモ。
・日本のソフトウェア開発の効率の悪さは発注側の問題、コンピュータが何が得意で何が不得意かわかっていない、さらに根深いのは何をコンピュータにさせたいのか論理的に表現できない
・数学的に存在するということと、計算してそれを手に入れられるということは全くの別物、経済学ではナッシュ均衡に到達することを前提にして話を進めるが、数学的にはナッシュ均衡はNP困難で存在しても多くの場合たどりつけない
・イノベーションの原点はパスカルが行ったように誰もが暗黙の裡に知っているけれども言語化されていない何かを言語化する作業、実際にイノベーションが起こるのは言語化されてから数十年数百年後、抽出された抽象概念が具体的な問題においてどのような意味を持つかがマッピングできたとき
・演繹をあきらめた情報科学者は、一を聞いて十を知るの十を知るのがゴールなら、一テラを聞いて十を知ればよいと作戦変更、それが機械学習
・指数爆発が起こるのでしらみつぶしは通常得策ではないが、探索範囲が限定されているならばしらみつぶしは禁じてではない、四色問題は実際そのように解かれた
・肉体労働が機械に置き換わったときは目に見える形で進んだが、知的労働は静かに進む、人間を100%置き換えるのは難しいが、10人でやっていた仕事を3人で可能にするソフトウェアはそんなに難しくない、その場合仕事は平等に労働者から奪われるのではなく機会によって代替可能な仕事しかできない労働者から奪われる
・人間には簡単で機械には難しい仕事、メカニカルタルク、いわゆるタグ付けとかは人間の仕事として残されるが、グローバルにクラウドソーシングされて、理論上は世界の最低賃金まで下がっていく
・微分方程式は理屈がつく規則的な未来、確率微分方程式は理屈が真に不規則な未来を予測する、その間に広大な規則性があるようでないようなどっちつかずの未来が広がっている
・人間はコンピュータが苦手で、しかもその能力によって労働の価値に差異が生まれるようなタイプの能力で戦わざるを得ない
・ホワイトカラーはコンピュータの本格的な登場によって上下に分断されていく、人間であれば多くの人ができるがコンピュータには難しい仕事と、コンピュータではどうしても実現できず人間の中でも一握りの人々しか行えない文脈理解・状況判断・モデルの構築・コミュニケーション能力等を駆使することで達成できる仕事に、前者は人間が機械の下働きをするということ
・非効率であるがゆえに人に残されている類の仕事は近い将来なくなる、市場はそんなものを見逃さない
・数学者が暗算が苦手なのは常識!
・理系文系ではなく、論理系暗記系、大学受験程度の数学含め理系は暗記でなんとかなる部分多い
・子供の成長段階において、帰納と演繹はどちらも大事だが、どちらでもできるとき帰納の方が楽だから帰納を使いがち
・ふつうはそうする、ふつうはそうだよねは典型的な帰納





【著者】
ロボットは東大に入れるか (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ) 単行本(ソフトカバー) – 2014/8/10
新井紀子 (著)
https://blog.goo.ne.jp/shinyability/e/3497827715a55f1ed282eb71ebf07448