常熟にて

常熟で働く日本人。常熟生活を綴ります。

中国へ赴任する者へ 〔4〕

2015年08月06日 18時39分29秒 | 日記

 そして中国赴任の最終ステップ、本番の舞台を迎える。台詞も覚えた、共演者との呼吸も充分。主役としてあなたの演技を見せる時なのだ。ここへきて初めて、あなたは全人格をかけ、あなたのやり方で目標に向かって一直線に進むことができるのである。

 この段階で遠慮は禁物。私たちにとって中国での経営は、その本質は異文化間の大いなる衝突なのである。矛盾、対立が起こらないほうがおかしいといってよい。逆に言えば、この期に及んで、ただ民主的に中国人と仲良く仕事ができているというのは、中国的なものに大きく譲歩したフレンドリー上司、言い方を変えれば“頼りないリーダー”でしかない。適当に祭り上げられて終わりだ。中国人からも、日本からも。

 ある時はこれが俺のやり方である。納得づくでは日が暮れる、相手の納得なしに首に縄つけてでも下の者を引っ張らねばならない時もある。当然、それまでの信頼の貯金はどんどん目減りしていく。反論や陰口はいたるところから出てくる。状況によっては本社にも報告しがたい判断を自らの責任において下さねばならぬ時もある。

 自分の仕事をせよ。自分のビジョンを実現せよ。同時に、中国、中国人から目をそらしてはいけない。日本に背を向けて演技をせよと前回言った。これは日本に背けということではない。この時期、中国の組織のありようを最も理解し、その進む道を示せるのはあなたしかいないはずだ。日本に対しては後姿で演技をせよということである。その姿を正しく評価する者は必ず日本にはいる。

 元来、リーダーとはおそろしく孤独なものなのである。あなたの過去の優れた上司を思い出してはいかがだろうか。その上司と一緒に仕事をしている時、あなたは楽しかったか?むしろあなたにとっては目の上のたん瘤、時に悔し涙を流すほどの横暴な上司ではなかったか。実の親にしてしかり、真の指導者にしてしかり、本当の偉大さはその元を離れてのちわかるものである。彼には彼のビジョンがあり、その実現のために勝負をしていたのだということを後になって知るであろう。

 偉そうなことを書いた。実際には、徒手空拳で中国にやってきて、安全を確保することも、中国語をマスターすることも、中国人の懐に飛び込むことも、そして自ら主役となって組織を動かす舞台を演ずることも、実はどれ一つをとっても決して容易なことではない。私がそれをなしえたなどとは、とうてい言えない。その前提で、要は環境に流されず、路半ばで倒れることを恐れず、自分なりのビジョンをもって、この強大な国中国に臨んでいただきたい、ということである。

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