雪月花 季節を感じて

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閑かなうつわ

2010年12月13日 | くらしの和
 
 漆工芸家の手塚俊明さんの作品展へ出かけました。

 初夏にはじめて工房を訪ねたときから気になっていた無地のお椀です。「木取り」「荒挽き」「仕上げ挽き」といった木地づくりから、漆を塗り重ねて仕上げるまでの、すべての工程を手塚さんはおひとりでなさいます。

 手塚さんは、漆工芸家で東京芸術大学名誉教授の磯矢阿伎良氏(1904~1987)に師事、現在はパートナーで同じく漆工芸家の戸枝恭子さんとともに創作活動をつづけています。奥多摩の美しい渓谷を望む工房は、ラジオやテレビなどのメディアを一切遮断した環境。ゆたかな緑につつまれ、そこに生息する動物たちの息づかいが聞こえます。

 閑寂なくらしと、作家ご自身の朴訥なお人柄が、そのまま凝り固まってお椀のかたちになったような、しずかなたたずまい。光と親和する色。まるいフォルム。あたたかな手ざわり。使いこむほどにより深く豊かな表情へと変化するという豊穣な時の経過を、これからゆっくりと味わいます。