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あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

瀬戸内シーカヤック日記: 『旅する櫂伝馬プロジェクト』 大崎上島一周、航海トライアル

2009年09月22日 | 旅するシーカヤック
2009年9月21日(月) 幌を下ろしたロードスターを走らせ、大崎上島へと向かう。 今日は、待ちに待った『旅する櫂伝馬』の航海トライアルの日。

祝島の神舞で櫂伝馬を漕いだブログを読んでくださった大崎上島出身のFさんから『櫂伝馬に興味があるのなら、ぜひ一度、日本の1/3の櫂伝馬が残っている大崎上島に櫂伝馬競漕を見に来て下さい』とのお誘いを受けて始まった交流。
いろいろとやりとりしているうちに、普段から瀬戸内をシーカヤックで旅している事を話し、『せっかくだから、櫂伝馬で瀬戸内を旅したいですねえ』と言った事がきっかけで、Fさんも乗り気になり、『旅する櫂伝馬プロジェクト』の構想具体化を進めて来た。
 
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最初のミーティングで決定した目的地の島までの距離は、約70km。 一泊二日で漕ぐとして、一日30km強を漕ぐ必要がある。 櫂伝馬は競漕には使われており、全力漕ぎで15分程度は13km/h程度のスピードが出せる事は分かっているが、長距離を漕いだことがほどんどないとのこと。
『シーカヤックなら実力が分かっていますが、櫂伝馬プロジェクトを実行するためには、櫂伝馬の航海性能をチェックする必要がありますねえ。 潮流や風の影響、巡航速度を確認する必要がありますよ。 大崎上島一周は30kmオーバーなので、テスト航海に丁度いいんじゃないですか』と提案し、今日の航海トライアルに至ったのだ。
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9時の出発に向け、櫂伝馬の艇庫から『いなずま』を海に出す。 驚くほど立派な艇庫。 まるで、サンダーバードの秘密基地のようだ。 電動ウインチでつり上げられた櫂伝馬を、海に降ろす。
 
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9時10分。 出発準備が完了し、出発!
先日調べた潮汐から、今日は半時計回りのコースをFさんに提言している。 少し沖合に出て、潮流に乗って漕ぎ進む。
片側7人、計14人の漕ぎ手と、リズムを取る太鼓、舵取りをする大櫂。 私は、太鼓側の3番櫂。 普段のシーカヤックツーリングでは使わないのだが、今日は様々な状況でのスピードを確認し、データを収集するため、GPSも持って来た。
 
中ノ浦を出発し、上げ潮に乗って鮴崎へ。 なんと時速は12-13km! でも、漕ぐのを止めてみると、それでも潮に乗って5km/h程度の速度で押されているので、実質は7-8km/h程度である。
じゃあ、ということで打ち込んで漕いで見ると、なんと時速15km/hを記録。 追い潮での櫂伝馬、早いなあ!

鮴崎を越えて舳先を西に向けると、ここからはしばらく向かい潮。 それも結構流れている。 GPSをチェックすると、7-9km/h。 うん、向かい潮でもなかなかいい感じである。
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垂水、白水を越えて、大串へ。 ここでしばらく上陸して、お昼ご飯。
『なかなかキツいのう』 『もう半分以上来ましたよ』 『いろんな状況でのスピードが分かりました。 こりゃあなかなかええ感じじゃないですか』

いろいろとお話を伺うと、地元の方々が知っている限り、これまで櫂伝馬で大崎上島を一周した人はいないとの事!
『こりゃあ、凄い事で! あんたら、歴史に残るわ!』と、伴走していただいている櫂伝馬の大先輩。 『ほうですか! じゃあ、今日は絶対やり遂げんといけんですね』と私。
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お昼ご飯を含めて30分弱で再び出発。 大崎上島の西岸を南下し、明石瀬戸へ。
漕ぎ続けて来た疲れと、向かい潮で、なかなかスピードが乗らない。 時速は、6-8km/h。
太鼓が気合いを入れ、みんなで声を出し、頑張って漕ぎ進む。 こりゃあ、ほんまにキツーイ!!!
 
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明石港で休憩し、清風荘の建つ岬を越えると、ゴールは目の前。 水軍の舟は気勢を上げ、ゴールを目指して打ち込み、漕ぎ進む。
午後1時半。 出発した桟橋に戻って来た。 『やったー、到着! 大崎上島を一周したどー!』
 
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みんなで喜びを分かち合い、頑張りを讃え合う。 最高の瞬間だ。
『トライアル航海は大成功でしたね。 いろんな状況でのスピードも確認できたし、天気次第だけど一日30kmくらいの航海なら大丈夫だと分かりました』 『来年、島へ行きましょう!』

大崎下島の櫂伝馬の歴史に、新たな1ページを加えた今日の航海。 そんな大事な時間を共有させていただくことができ、『瀬戸内海洋文化の復興、創造、そして継承』をテーマに海を漕ぎ続けている私にとっては、生涯忘れる事のできない一日となった!
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夕方からの打ち上げにも参加させていただいた。 櫂伝馬が大好きなメンバーと飲み話す楽しい時間。
地元の方から、漁業の抱える問題や、櫂伝馬の歴史、大崎上島にとっての今日の櫂伝馬一周の持つ意味などなどを伺う。

大崎上島の明石にかつて栄えていた槙皮舟の話、櫂を造るための原木の『蜜柑割り』の話、竹原の的場で聞いていた、昔は子供の遊び用に使っていたと言う『三枚舟』の話、大崎上島を訪れた宮本常一の話などなど、瀬戸内海洋文化に関わる貴重なお話が次から次へと飛び出してくる。

大崎上島。 瀬戸内海洋文化を語る上で欠かせない重要な島である事を再認識した。 『あるくみるきく』をテーマに、もっともっとこの島に深く関わって、貴重な話を発掘して行きたいと思う。
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さあて、今日の航海トライアルの成功で、来年の『旅する櫂伝馬プロジェクト』の実行がグッと現実的になってきた。
海上保安庁への連絡、目的地の島への連絡なども動き始めており、徐々に町を上げてのプロジェクトとして盛り上がりつつあるとのこと。 来年の初夏が楽しみだ!
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