薩摩おごじょ

薩摩狂句勉強中です。

2012.6月薩摩狂句 自由吟 人

2012-06-30 07:20:37 | 日記
(人)
 パソコンと 一緒(いっど)き初期化 狙(ね)ろた婆(ばば)
        扇香 (5月18日掲載分)(パソコン)

(寸評)
この句も発想の斬新さが光っていると思います。
薩摩狂句は、というより薩摩狂句も時代の流れに逆らってばかりではいけないと考えています。
頑なに古いことばにしがみついてばかりいては、時代に取り残されて、やがては絶滅に追いやられてしまいます。
それでなくても薩摩狂句は今まさに存亡の危機に瀕していま
す。
新しい感覚が必要だと思っています。
何も新しい言葉を使えばよいというのではありません。現代の新語・流行語・若者ことばを毛嫌いせず、柔軟な発想や感覚を失わないようにしたいものだとかねがね思っています。

 さて、この句ですが、パソコンという言葉は一般化していますから、特に問題はありません。「初期化」という言葉に「抵抗」を感じる方がおられるかもしれません。「拒否反応」を示す人もあるでしょう。しかし、これは乗り越えなければならない「壁」だという認識をもつ必要があると私は思います。
 この句中の「初期化」という言葉が、この比喩表現が、いわばこの句の「生命線」なのです。この言葉の意味が分からないと、句意が分からないわけです。
 コンピュータ用語は素人にとっては非常に分かり難いものです。訳の分からない横文字ばかりで、何のことかさっぱり分かりません。しかし、そんなわけの分からない句は作るなと言って、そこで止まってしまっては、もう行き止まりでしょう。
 掲示板をご覧の方には「釈迦に説法」ですが、とかく新しいものに頭から拒絶反応を示しがちな古い頭脳に刺激を与えることは長生きの秘訣の一つかもしれません。もっとも、今のようご時世に長生きすることに魅力を感じる人はあまりいないかもしれませんが・・・。
 ともあれ、この句は薩摩狂句の新しい境地を切り開く作品といえましょう。

※今月の「蛇の足」

気が付いたことを、いつものようにランダムに書いてみます。ご質問やご意見などをお寄せください。お互いによい勉強材料になると思います。

1.「亭主」の読ませ方は、一般的にはつぎの通りです。「てし」「とと」「とのじょ」。地域差があることは度々申しあげていますが、ごく限られた地域で使われている場合は、一般化した言い方に変えたほうが理解されやすいのではないでしょうか。決してその地域の言葉を否定するわけではありません。「亭主」や「夫」を「と」と詠ませるのは無理があるようです。

2.無理な「造語」や無理な読ませ方は避けましょう。
例;「コンクリ路(ろ)」
 「雷雲(くも)」は先月も書きましたように、漢字に寄りかかりすぎた言い方と言ってよいでしょう。「くも」は「かみなりぐも」だけではありません。あくまでも「雷雲」は「かみなりぐも」と読ませるべきでしょう。

これも何時も申していますように、「発音と漢字を(出来るだけ)一致させる」ことが基本だと考えた方が良いと思います。
これも繰り返しになりますが、薩摩狂句は「耳で」聞いてもその句意が分かるように作ることが大切です。

3.「名を残し」→「名を残(の)けっ」。うっかりされたのでしょうが、鹿児島方言に直せるものは直しましょう。

4.「友(つれ)」→「連れ」または「友(どし)」。先ほどと同じく「音」と「漢字」を一致させるようにしましょう。

5.「不自由」は「せんぽ」という鹿児島方言があります。

6.「堪(のさん)」→「堪(のさ)ん」

7.「腰(こしゅ)ば振(ふ)」→「腰(こ)しゅば振(ふ)っ」

8.「草履(ぞい)を脱(ぬ)っ」→「草履(ぞ)ゆば脱(に)っ」の方が良いでしょう。

9.下五の終わり方;出来るだけ名詞止めか用言止め(「~しっ」など)の方が句に締りがあると言われています。「亭主(とと)ん如(ご)っ」も「っ」で終わっていますが、この場合は副詞の語尾ですから、中途半端な感じを与えてしまいます。薩摩狂句の場合は、きちんと「言い切る」形のほうが良いとされています。

10.教(ゆ)っかせっ→教(ゆっか)せっ

11.「ベンジャミンの~」を「ベンジャミん」という言い方は無理でしょう。この場合は共通語と同じ言い方が普通です。しかし、例えば「ジャックの」とか「オバマの」などという場合は「ジャックん」「オバマん」という言い方をします。全てに「ん」が使えるわけではないようです。所有格の言い方は個々に判断せざるをえないようです。

12.子孫顔(しそんずら)→子孫顔(しそんづら)

13.「相場(そば)ち言(ゆ)っ」よりも「相場(そうば)言(ちゅ)っ」の方が聞いたときに分かりやすいでしょう。

14.「亭主(てし)なパン」→「亭主(て)しな・・・」。送り仮名の基本を再確認しましょう。
 
                    文責 黒柱