思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Hardy Marvel 7'6'' (E/S 1967年製)

2015-09-24 17:23:01 | Hardy Palakona
9月の中旬、一時帰国の機会がありました。その際パラコナ他竹竿を預けてある実家から1967年製のHardy Marvel 7'6''をチュニスまで持ち帰りました。今年手に入れた1938年製のMarvel 7'6''と比べるためです。



二本のMarvelを繋いで並べ立てかけてみると、1938年製の方がグリップが長いことが目立ちます。



リングの数は1967年製が9個に対し、1938年製は8個。これは他の戦前の竿もリングの数が戦後のものより少ないので特段違和感はありません。尚、1938年製のMarvelの日本のトップの内、一本はフェルール側が1インチ短くなっております。トップが折れて短くなるケースは多いですが、フェルール側が短い理由は如何なるものなのでしょうか。尚、短いトップの雄フェルールはピンが打ってあり、もし修理されているとすればHardyが修理したものと想像致します。



さて、パラコナで良く言われていること、「戦前の竿は戦後の物に比べ細い」という点につき、測定器具が無いのであくまで五官で感じる範囲の話と聞き流して頂きたいのですが、バットの太さ、トップの太さに違いは感じられません。一点ミドルセクションが1938年製の方が細く感じられます。但し、重さの点では1938年製のミドルの方が1967年製の太く感じられるミドルより重いように感じます。ひょっとしたら1938年製のものにはスティールセンターでも入っているのでしょうか。



トップからバットまでのリングの間隔を比較してみますと:

1938年製:
1.-2.: 9.8cm
2.-3.: 12.2cm
3.-4.: 17.7cm
4.-5.: 21.2cm
5.-6.: 26.6cm (14.2cm/ferrule/12.4cm)
6.-7.: 38.0cm
7.-8.: 40.5cm (26.0cm/ferrule/14.5cm)

1.-8.: 166.0cm

1967年製:
1.-2.: 10.4cm
2.-3.: 12.0cm
3.-4.: 17.2cm
4.-5.: 21.3cm
5.-6.: 23.8cm (14.8cm/ferrule/9.0cm)
6.-7.: 26.5cm
7.-8.: 27.9cm
8.-9.: 29.0cm (12.6cm/ferrule/16.4cm)

1.-9.: 168.1cm

つまり、1967年製のMarvelにはミドルセクションにリングが一つ多く配置されております。アクションはどちらも胴調子でミドルセクションに負荷がかかるもの。短竿でティップアクションの竿はティップが折れ易くなりますが、Hardyは竿の耐久性を考えてこの短竿Marvelの調子を敢えて胴調子にしたものと推測致します。そのため、負荷の中心になるミドルセクションには固めの竹、或はスティールセンターを入れて補強し、1967年製の竿ではリングの数を増やした、というデザインにしているのではないでしょうか。


グリップは1967年製が19cm、1938年製が20cmと新しい方が短くなっております。また、グリップ自体も1967年製の方が1938年製の竿より細めの作りになっております。



1967年製のインスクリプションは60年代のパラコナの特徴である大きな字体で踊るような文字になっております。また、AFTM表示で4/5とも記載されております。



1967年製のMarvelにはフックキーパーが付きますが、1938年製のものにはありません。但し、竿よりも長いリーダーを使う場合、フックキーパーを使うのは感心しません。フライラインとリーダーの結び目がトップリングよりもリール側に来てしまい糸を出す際ティップを痛める可能性があるからです。従い、毛針はバットの次のリングに掛け、リールにリーダーを回し、フライラインが必ずトップより出るようにしております。





バットリングは1967年製も1938年製もメノウが入ったものですが、1967年製造の方は60年代後半のより製造コストが少なそうなタイプのものとなっております。





トップリングは、1967年製のものはプラスチッックラインの使用を前提にメノウ無しのもの、1938年製のものにはメノウが入っております。





フェルールですが、前回1938年製Marvelの際触れましたが、1938年製のものはピンが入り物理的にフェルールが抜けないようになっております。一方、1967年製のものはピンが打ち込まれておらず、接着剤で竹とフェルールを付けただけとなっております。製造コストを下げるには良いでしょうが、接着剤が劣化してしまうと、何時フェルールが抜けるか分からない事態にもなり得ます。



この二本のMarvel、1967年製の方がプラスチックライン前提のデザインのためでしょうか、同じ胴調子でも戦前のMarvelよりも少々もったりした感じです。それでもこの新しい方の竿も鱒をかけるとぐいっと胴まで曲がり引きを楽しめる竿であることは変わりません。
欧州も既に秋、折角北アフリカまで長旅をして来ても、新入りには来年まで出番が回ってこないでしょうね。
コメント
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