思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

オーストリア流キャスティング(Gebetsroither Stil)

2013-05-06 08:42:05 | その他の話題/Other Topics
Charles Ritz(シャルル・リッツ)の"A Fly Fisher's Life"でオーストリアのGmundner Traun(グムンドナー・トラウン)とその川の管理人・案内人であったHans Gebetsroither(ハンス・ゲベーツロイター、1903年2月3日-1986年12月13日)の釣りは世界的に知られる様になりました。
彼の独特なキャスティング方法はオーストリア流といわれ、本日に至るまで中部欧州のドイツ語圏中心に多くの愛好者がいるようです。
そのキャスティングの教本に"Fliegenwerfen"(フリーゲンヴェアフェン:フライキャスティング)があり、私の蔵書の一つです。


タイトルの下にAnleitung und Lehrplan zum Gebetsroither-Stilとあるのは「ゲベーツロイター流投法の解説と段階的教授法」という意味です。


グムンデンのHotel Marienbrücke(マリーエンブリュッケ)にあるハンスの胸像。献辞には「この地でフライフィッシングのマイスターは釣りと鱒についての彼の最高の技を伝授した。我々はNeger Hans(ネーガー・ハンス/黒ん坊ハンス)を決して忘れない。彼の教え子・友人一同」とあります。ネーガー・ハンスはゲベーツロイターのあだ名。今ではネーガーは政治的観点から言ってはいけない言葉ですが、昔は気にされていなかった様です。


1986年、オーストリア釣魚連盟のフライキャスティング講習会で実演するゲベーツロイター。この年末には亡くなります。

このゲベーツロイター流の要点を短く纏めると:

①腕ではなく肩で投げる。
②(肩で投げるため)脇を閉めず、上腕を体の軸から45度程度開く。

③バックキャストでは竿先を直線的に動かすため肘を半月形に動かす。フォーワードでは肘は真っすぐ動かして良い。

④バックキャストで竿先が後ろに倒れすぎない様、インデックスフィンガーグリップ(重い長竿ではインデックス・サム・グリップも可)。


となります。これをやると、バックキャストでは、サイド気味に伸びるラインは竿先よりも下を飛んで行き、フォワードキャストでは竿先が立ちラインは竿先より上を飛んで行くという運動になります。これは楕円運動(Oval Movement)と呼ばれます。この際、手は胸から目までの間でのみ動き、肘は半月形の動きとなります。

この投法は如何に効率的に力を使い少ないフォールスキャストで毛針を魚に投げるかをハンスが追求した結果のものです。インデックスグリップ等、今では一般的でないやり方も要素の重要な一部になっておりますが、当然、彼の生きた時代のコンテキスト(当時の道具、投げ方、グリップ、釣り場環境)を理解した上で、その理論と今に至る実践を理解する必要があると思います。


トラウン川のRadl Mühle(ラードル・ミューレ)でゲベーツロイター流キャストをするHans Aigner氏の姿。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする