思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

The Book of the Hackle (その2)

2014-05-25 16:04:22 | ハックル/Hackles
今月は暫く欧州に行っておりました。ドイツはアスパラガスの季節。Sauce Hollandaiseと一緒に戴くと旬の味が口一杯に広がりました。
前回のハックルカラーの話ですが、off-colourを含め16色の中で、日本では特に注意が必要と思われるものを下記致します。


(Old English Game Cockのケープ。左からRusty Dun、Honey Dun、Badger)
4. Red
レッドというと「赤」と思われるかと思いますが、ブラウンと良く記載されているハックルを英国では伝統的にRedと呼んでいます。鶏では一番多い色で、ハックルもバーブが固い良質なものが一番多いようです。
8. Furnace
芯が黒でバーブがRedなもの。Coch y Bohddu、Greenwell等、芯:Black、バーブ中央:Red、バーブ先端:Blackというものも包括しFurnaceとして纏められております。
9. Cuckoo
Blackの横筋が入ったWhite。
10. Creel
Redの横筋が入ったWhite。
11. Grizzle
これは色ではなく、横筋が入ったハックルを指す言葉。Ginger Grizzle、Blue Dun Grizzle等。
12. Dun
これはスターリングのプライマリークイルの色と指定されておりますが、ちょっとピックかかった灰茶というような色です。カゲロウのダンの羽の色にぴったりの色です。
13. Blue Dun
ブルー・グレイ色でハックルには薄く茶色のトーンがかかるものが多い。薄いグレイから黒に近いものまでバラエティがある。
14. Rusty Dun
Blue Dunに錆色つまり赤みがかった金色が乗っているもの。Brassy Dunは黄色っぽい金色がBlue Dunに乗っているものと言われるが、実際にはRusty DunとBrassy Dunに大きな違いはなく別のカテゴリーにする必要が認められないため、全てRusty Dunに纏められている。
15. Honey Dun
Blue DunハックルのバーブがYellowからHoneyでRedに近いものもある。極めて稀なハックル。深いCopper Redのものは非常に美しいと評されるが、そのようなハックルを実際見れる人はまずいない。

このFrank Elder氏は1977年にお亡くなりになり、彼の死後出版されたのがThe Book of the Hackleですが、そのElder氏が育てたOld English Game Cockのケープを入手しましたので、この週末スターリングクイルのウィング付きフライを幾つか巻いてみました。


ダブルウィングで作れば繊細なスターリングでも簡単で丈夫なウィングとなります。





テイルに使うハックル。





ハックルはRusty Dunを使っております。



光の加減で見難いのですが、Rusty Dun、Honey Dun、Badgerを使って巻いた毛針です。


Frank Elder氏のハックルはこれまで稀にオークションで出る事があったのですが、娘さん・息子さんが受け継いだものが、暫く前からインターネットで注文出来るようになりました。娘のJaneさんによれば、日本人では私が一番最初に注文したようです。秘密にするより関心のある方々に知って頂く方が良いと思いますので、サイトを下記ご紹介させて頂きます。サイトに出ているBlue Dun、Honey Dun等はFrank Elder氏が記述したものと色が違うと思いますが、そこは各自のご判断で選ばれたら良いと思います。少なくとも私が選んだ123番のハックルは本物のHoney Dunでした。

http://www.frankelderhackles.com/index.htm
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The Book of the Hackle

2014-05-11 14:26:23 | ハックル/Hackles
ドライフライの命はコックハックル。今の方ですと、CDCとおっしゃるかも知れませんが、昔から今に至るまでの王道はコックハックル。では何故コックハックルなのでしょうか?
ハックルのみについて掘り下げて研究されている書は、フライフィッシングの膨大な書物の中でも殆どないようです。その中で、羽の構造、鶏の先祖であるジャングルコック、ドライフライにおけるハックルの意味、ハックルの色、ハックルの品質、ハックルの形、ヘンハックル、ハックルの商業的な供給の歴史、ドライフライ用のハックルを作り出す為の鶏の飼育・品種改良、ハックルケープの仕上げ、等、ハックルに関する事項を深くかつ網羅的に著した書が「The Book of the Hackle」です。1979年にScottish Academic Pressより出版されました。
著者はFrank Elder(フランク・エルダー)氏。元々商業的に手に入るハックルに飽き足らず、また、前にも触れたことのあるDr. Baigent(ベイジェント博士)が残した素晴らしい色合いのハックルを見たことから自分でOld English Game(英国の闘鶏用の鶏:英国では最高のドライフライ用ハックルとして伝統的に考えられている)の飼育を開始した方。

エルダー氏はドライフライを羽化したばかりのダンのイミテーションと考えた場合、自然のダンは水面に浮くのではなく6つの脚で「乗っかって」いる事に着目し、ドライフライもそのハックルを使って、水面に乗っかるべきとします。詳細は是非本を読んで頂きたいのですが、いくらハックルにバーブが多くあろうとも、毛針に巻くと、実際水面に接して毛針を持ち上げているバーブは案外少ない事が解説されます。また、余りにハックルを厚く巻きすぎると、水面に接するバーブの数が増えすぎて水面下より見ると自然のダンの6本脚とはかけ離れ過ぎて魚に不信感を与えることを指摘します。
また、水面から高く上げられたハックルに太陽光が当たる事で透明感が増し、水面下の魚から見てますます本物のダンのように見える事も指摘されております。

こうした要因を踏まえ、エルダー氏はハックルの善し悪しを、色(Colour)、品質(Quality)、形(Shape)に分け追求しております。
さてその中でも、非常に混乱を来している色についてです。そもそも色を特定するのは、先人が巻いた毛針を作る際にどの色のハックルを選ぶかを明快にするためのものです。それが今の商業的広告効果もあり、ハックルサプライヤー毎に勝手に色々な名前をつけると、一体どのハックルがどのハックルに大凡対応するのかも判らなくなってきます。

そこで、伝統的な英国のハックル色分類を土台にエルダー氏は、大きな分類としてシングルカラー(Single colour)、バイカラー(Bi-colour)、バード(Barred)、ダン(Dun)と分け、その下に1. White、2. Cream、3. Ginger、4. Red、5. Black (以上、Single color)、6. Badger、7. Yellow Badger、8. Furnace (以上、Bi-color)、9. Cuckoo、10. Creel、11. Grizzle (以上、Barred)、12. Dun、13. Blue Dun、14. Rusty Dun、15. Honey Dun (以上、Dun)、16. Off-colours(これら区分に当てはまらないもの)との分類を提唱致しました。

先月の著名人が残した珍しいOEGハックルサンプルの例に私も手持ちのハックルを台紙に貼ってみました。上の写真はSingle Colourのハックルで、左からWhite、Cream、Ginger (3と4番目)、Red (5から7番目)、Black(8と9番目)です。OEGが中心ですが、Keough(一番左)、サワダのインディアンコック(7番目)もあります。

Bi-Colourは左から、Badger、Yellow Badger(2と3番目)、Furnaceです。2番目はサワダのインディアンコックで、他はOEGです。

BarredはCuckoo(1と2番目)、Creelです。

Dunは日本国内のお店で入手するのはほぼ不可能、如何に海外から見つけてくるかが問われるハックルですが、左から、Dun(1と2番目)、Blue Dun、Honey Dun(4から6番目)、Rusty Dunです。エルダー氏の分類番号とはHoney DunとRusty Dunの順番が違いますが、これはRusty Dunを入手出来たのが先週でその前に台紙貼りを行ってしまったから。

これは英国から先週入手したハックルの一部。Rusty DunとHoney Dun。アメリカのジェネティックハックルでは絶対出ない逸品です。ハックルの色の詳細説明は追って行って行きたいと思います。
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シルクラインの再生(最終回)

2014-05-10 22:16:44 | シルクライン/Silk Lines
一昨日10回目のコーティングが終了したシルクライン。本当は良くないのでしょうが、テストのため釣りに行ってきました。いつも通り養沢です。
竿はPhantom 9'の新入りの方です。コーティングの出来上がり具合で結構重量が増したような気がしたのでDT6を操れるPhantomを選んだ次第です。


家でミューシリンを塗り込む時間がなかったので、現地で初めて塗り込みます。尚、ミューシリンは塗り込めば塗り込む程良い訳ではなく、あくまで水をはじくのに必要なだけの少量を塗り込むもの。


それでスターリングのクイル、OEGのハックルを巻いたドライフライでの釣りをします。
今日は水が少なく、流れが弱い為、ニンフ、ウェットフライのような破壊力はありませんが、午前中それなりにドライフライに魚が出てくれました。
そういえば、肝心のシルクラインですが、結論を申し上げると投げた感じはDT5くらいで、10ヤード以上ラインが出ると竿に乗ってくる感じです。また別段固い事もなく、柔らかすぎる事もなくで、最初は亜麻仁油の残りでベタベタしてましたが、使って行くうちにKaizer Sik Lineのような感じになってきました。オリジナルのPhoenixとの決定的な違いは表面の滑らかさ。亜麻仁油のみのシルクラインはザラザラしております。だからといって投げ難いとは全然感じませんでした。

木の小屋さんで昼食です。

今日は、とある淵でブラウントラウトの大物がハニーダンハックルにスターリングのクイル、ピーコッククイルを巻いたOlive Dunに出たのですが、途中で逃げられ写真に残せませんでした。その淵でOlive Dunを2~3回流していたら、いきなり水底から大きな黄色の固まりが水面に飛び出し、びっくりした事もあり、一拍おいて合わせると竿をギュッと絞り込みました。狭い淵で右往左往して寄せようととしたその刹那、ちょっとテンションが緩んだのでしょう、鈎を外されてしまいました。贔屓目が入っているのは間違いないにしても40cmは優にあったように感じました。そのかわり、ブラウントラウトのオチビサンが別の瀬で出ましたのでその写真です。
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シルクラインの再生(その6)

2014-05-06 13:50:43 | シルクライン/Silk Lines
今年の連休は、釣り以外に色々付き合いがあり、結局都内で過ごす羽目になりました。従い、シルクラインのコーティング作業を行うには良く、今現在進行中で8回目のコーティングを施しております。
シルクライン再生日記になってしまっておりますが、今朝の7回目のコーティング終了の状況が下記です。

乾燥作業に入る前に余分な油は指で落としているので、一回毎にラインの表面に残る油はそう多い物ではないのですが、7回目ともなるとコーティングがかなり厚く成ってきます。
Phoenixのラインもシルクだけの時は結構細かったものが、今はKaizerの3番ライン(AFTM6~7番に相当)程に成長し、重量もかなり増している感じです。
Phoenixの新品はプラスチックラインと間違うくらい表面がすべすべですが、その厚化粧が無い分Phoenixの既製品よりはラインの径が細く、重量も少ないのかも知れません。
色は、シルクのみの際の白っぽい色から、今は飴色、或はアンバーに変化しております。
取りあえずハルフォードの著書の通り10回コーティングしようかと考えておりますが、使用するにはもう7回で必要十分な気が非常にしております。

最初に投入した三角形の段ボールですと、亜麻仁油が乾燥した時角に当たるラインが鋭角に固く成るので、6回目以降に投入した新兵器の乾燥型枠です。



本当にこんな写真では分からないのですが、相当亜麻仁油が浸透しコーティングが成長しているのが分かるライン表面です。尚、シルクラインの両端に付けたナイロン製のループも亜麻仁油でコーティングされ多分強くなっているのでしょう。

シルクラインの作業だけではなく、英国のハックル分類に従い、手持ちのハックルを紙に貼付けてみました。赤いシールはSingle Colour、青はBi-Colour、緑はBarred、オレンジはDunです。今無いハックルは、Yellow Badger(これはあるのですが、ちょっと品質に難があるため)とRusty Dunです。これも多分後一週間もすれば欧州から入手出来ている筈。楽しみです。
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シルクラインの再生(余談)

2014-05-05 22:00:36 | シルクライン/Silk Lines
インターネットでシルクラインのコーティング(誰が始めたのか、ほぼ全てでハーダニングと言われてますが、英語の文献でhardeningと名付けた例は今のところありません)を検索すると、亜麻仁油を使っている例が多いのですが、他にも各種の油、はたまたミューシリンを塗り込めばコーティングとしているものもあります。
温故知新でシルクラインのコーティング促進に成功した事から、ハルフォードの他の著書「The dry-fly man's handbook」を振り返ってみました。前回取り上げた「Dry-fly Fising in theory and practice」が著された1889年から24年後、1913年に発行された「handbook」でも、基本は亜麻仁油を真空容器を使い浸透させ、それを乾かす作業を12回まで繰り返すという方法。これは変わっておりません。油を付けたら鉄の棒を両端につけた木の枠に巻き付けて乾燥させる;それが華氏150度のオーブンか、自然乾燥か、はお好みとなります。今回シルクラインの乾燥作業をしていて理解したのですが、同じ部分が乾燥時枠の角に当たり続けるとそこが曲がったままコーティングが乾燥し後で癖を直すのが難しくなります。前回紹介時、木枠に1から10まで番号を振ってコーティング毎にラインの先端をずらしていくというのは、乾燥時鉄の棒にあたるシルクラインの部分を毎回ずらしていくためと得心が行きました。

面白いのは、ハルフォードの甥のモーズリー氏が、ホークスレー氏の意見を参照し、亜麻仁油でコーティングしたシルクラインに獣脂を塗り込むのは悪い化学反応が出て良くない。ミューシリンはそういう問題がなく安心して使えると記述するのに対するハルフォードの反論です。「Dry-fly Fishing」で亜麻仁油コーティングされたシルクラインに鹿の脂を塗り込むと説明するハルフォードは甥の意見を紹介しながらも、自分のやり方でこれまで何ら問題がなかった、例外はモーズリー氏にコーティングしてもらったシルクライン2本のみだったと反論しております。

そして、ハルフォードはJ.J.ハーディー氏にハーディーのシルクライン製法を紹介させます。ハーディーではシルクをまず煮立て奇麗にする事から始めます。その段階で重量が25%減少するそうです。奇麗になったシルク糸をバランスよく編み込んで行き、テーパー付きのラインを作ったら、それを真空容器を使ってボイルした油(亜麻仁油かと思われます)を含浸させ、それを取り出し乾燥させます。乾燥時にオーブンを使うとは書かれておりません。このコーティングを8回から9回行った後、表面を擦り滑らかにした後、特別なバーニッシュを施し、温度を暖かく保った部屋で乾燥させ完成です。尚、コーティングに使う油は古ければ古い程良いそうです。

拙宅でも、今7回目のコーティングが終わりましたが、亜麻仁油の酸化が進んだ様で、だんだん油臭くなってきました。特に炊飯器から出す時は匂いが部屋中に広がります。家内の機嫌も加速度的に悪く成っており、後3回のコーティングを許してもらえるか微妙な緊張感が漂う連休です。
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シルクラインの再生(その5)

2014-05-03 12:16:29 | シルクライン/Silk Lines
シルクラインのコーティングも4回目が終わりました。毎日出社前に炊飯器から取り出し、帰宅後に亜麻仁油に漬け込んで炊飯器で温めるを繰り返した成果です。

Kaizerの濃い臙脂色のシルクラインを愛用している私にとって、4回のコーティングで既にもう十分な出来映えに映ります。

コーティングをすっかり剥がしたシルクラインは伸縮性に富んでおりましたが、コーティング後は全く伸縮しません。

私の安価なカメラ、プラスチックのペラペラな拡大レンズでは判別不能と思いますが、編み込んだシルクには(多分)真空容器のお陰でしっかり亜麻仁油が浸透し、コーティングも回を追うにつれ徐々に厚くなってくる感じはあります。

また、ラインを丸めて、

真空容器を用意し、

どぶ漬けします。
今晩で5回目のコーティング。ハルフォードの製法の漸く半分になります。しかし、亜麻仁油の自然乾燥3週間というのに比べればとんでもなく早い仕上がりです。(一回3週間となると、10回で30週間。想像を絶します)
今回感じているのですが、そもそもPhoenix Lineは昨年の猛暑でコーティングが溶けたものです。亜麻仁油は66度で乾燥するのですから、当然Phoenixに含浸されかつ表面を覆うコーティングは亜麻仁油ではないのですが、何故亜麻仁油以外のものを使うのでしょうか。これは、Phonenixに限らず、Thebault、KaizerのGreen Lineも同様です。Phoenix、Thebaultは表面のすべすべ感に拘って厚塗りになっている=シルクラインの利点であるラインの細さを犠牲にしている、のでそういう事かとも思いますが、亜麻仁油で必要かつ十分ではと感じます。乾燥時間の問題でしたら、お手軽な炊飯器をお勧めしたいものです。
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