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トランプとアメリカ労働組合

2017-05-16 08:34:59 | 労働情報

 

No.452 (2017/5/12)

トランプ政権への対応に3つに分かれる米国労働組合

 トランプ大統領はレーガン大統領の時と同様に、中西部各州の白人労働者の支持を勝ち取って当選し、今や共和党の優勢を確実なものとすべく、労働者受けする政策を打ち出している。海外移転を計画する各企業への締め付け、10億ドルに及ぶインフラ公共投資、メキシコからの輸入に対する35%の関税、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しなどである。
 トランプ支持を打ち出す労働組合は多くはないが、トランプ大統領は労働組合ないし組合員に直接訴える政策を考えて、その支持を大工労組、石炭労組から自動車労組(UAW)にまで拡大させ、自動車雇用の増大を考える会合にはUAW会長を招いて意見を傾聴した。

 トランプ大統領は“アメリカ・ファースト”の政策が自動車などブルーカラー労働者に共感を呼んでいること、また幾つかの大労組の支持を集めることが民主党の基盤を大きく崩すことを察知しており、労働専門家は「トランプはブルーカラー大統領として働こうとしている。大半の組合員が各地でトランプを支持したことで、労組指導者はその意向に従ってトランプに向いている」と評する。
 トランプ大統領は就任直後に労組指導者数人を招いて会談したが、その際レイバラーズ労組オサリバン会長は「アメリカ労働者に新しい時代が来たと感じた」とニュースリリースした。北米建築労組マガーベイ会長は「キーストーン石油パイプラインの建設などは10万人以上の雇用を意味する。組合の関心事は組合員の増加であり、今までの政策には納得できるものがある」と述べたものの、建築労組の会議では、オバマケア撤廃と労働安全規則の公約に躊躇を見せる大統領に幹部が「抵抗しろ」と書いたサインボードを掲げることもあった。

 労組組織率がケネディ大統領時代の30%から10.7%に落ち込んだとはいえ、労働組合は政治的に未だ大きな力を秘めている。ヒラリーが長年の労働組合の防壁、ミシガン、ペンシルバニア、ウイスコンシン3州で敗北したことを多くの労使指導者が悔しがり、彼女と労組がもう少し協調していれば勝利できたと言う。ウイスコンシン州を落とした大きな理由には、スコット知事による団体交渉権制限など公務員労組への激しい攻撃で、2009年に15%の全体組織率が8%にまで落ちたことも挙げられる。
 他方、トランプ氏はケンタッキー州の鉱山労働者、ペンシルバニア州の鉄鋼労働者など民間労働者に焦点を当てた。ある労働専門家は「トランプはニクソンとレーガンも試みた少数労組との協力可能性に挑んで成功した。しかし、レーガン政権には労働組合に好意的な多くの幹部がいた半面、激しい敵意を持つものも多かった。トランプ政権には労組に好意的な人物が少ない」と指摘する。

 現在の労働組合をみると、トランプ大統領に対して3つの流れが見える。
 親トランプの流れが建築労組である。リベラル派はこれを批判するが、マガーベイ会長は「政治と協力するのは賢明な方法だ。民主であれ、共和であれ、組合員を増やせる方法をとる。選挙に負けて組合員を減らすようなことはしたくない」と語る。
 これに対し、反トランプ派はサービス労組(SEIU)、全国教育協会労組(NEA)、そして各自治体労組(AFSCME)であり、連邦政府の新規採用凍結や緊縮予算、オバマケア撤廃、新指名の教育長官にも反対する。
 中間に位置するのは賛否両論の自動車(UAW)、鉄鋼(USW)、機械工(IAM)などで、賛成点はTPP脱退、製造業雇用の国内回帰、北米自由貿易協定(NAFTA)見直しであり、UAWウイリアムズ会長も「トランプのメキシコ通商問題への対処を高く評価する。20年間叫び続けた問題だ。しかし彼の移民政策、オバマケア撤廃には反対する」と語る。

 この点について130年の伝統を持つクラーク大学のチェイソン教授は「幾つかの組合がファウストのような魂の売り渡し行為をしている。組合員を増やすという選択をする一方で、組織化を容易にする労働法改正や連邦最低賃金$15にはグッド・バイだ。毎日を傲慢な経営者と対峙する労組幹部はトランプ対処も心得ており、時としては言葉も和らげる。ツィッター批判を恐れているとも考えられる」と批判的である。

 他方、SEIUのヘンリー会長は「言われるほど労働運動は分断されていない」と述べ、「SEIUは環境保護問題でUSWと緊密に協力し、最高裁判事のゴーサッチ指名反対では多くの組合が協力し合った。労働の権利法問題でも同様の協力ができている。トランプ問題は40年間の反労組的動きの1段階であり、労働運動は労働条件改善を求める強い欲求の前に団結している。労組分断の動きに加担することはない」と語る。

 トランプ氏の強い圧力でメキシコ移転計画を半減させたインディアナ州キャリア空調会社のケースだが、USWローカルのジョーンズ委員長が「トランプ大統領は守ったとする雇用の数字を水増しした」と指摘して、トランプ氏から「労組が無能だからこうなる」とツィッター批判され、組合員からも批判の声が出された。
 そのジョーンズ委員長が「トランプが本当に労働者の味方なのかどうか。トランプが730名の雇用を守ったことには感謝している。しかしトランプは反労働組合だ。政権は大企業出身者で占められている。産業企業や通商問題についての公約は歓迎だが、次にどうするのか。TPP脱退も歓迎だが、実際には死文化している。企業と通商問題に関するトランプ・メッセージは正しい。ヒラリーは労働者にメッセージを送れなかった。そこでトランプに票が集まった。トランプ支持の人たちは彼にチャンスを与えろという。将来、トランプが本当に労働者に良い大統領だったと分かって、私が悪かったと言える日のあることを待ち望んでいる」と語る。

国際労働財団より

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